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#46 野鴨
キェルケゴール「野鴨の哲学」
デンマーク郊外のジーランドという湖に一人の善良な老人が住んでいました。
老人は毎年遠くから飛んでくる野鴨たちにおいしい餌を与えて餌付けをしました。
するとだんだん鴨たちは考え始めるのです。
こんなに景色がいい湖で、こんなにおいしい餌がたくさんあるのに、何も苦労してまで次の湖に飛び立つことはないじゃないか。
いっそのこと、この湖に住みついてしまえば毎日が楽しく、健康に恵まれているじゃないか、と。
それで鴨たちはジーランドの湖に住みつくようになって、飛ぶことを忘れてしまうわけです。
しばらくはそれでもよかったんです。
確かに毎日が楽しくておいしい餌にも恵まれていましたからね。
ところがある日、出来事が起きます。
毎日餌を用意してくれていた老人が老衰で死んでしまったのです。
明日からは食べるものがない。
そこで野鴨たちは餌を求めて次の湖に飛び立とうとします。
しかし、数千キロも飛べるはずの羽ばたきの力がまったくなくなってしまって、飛ぶどころか駆けることもできない。
やがて近くにあった高い山から雪解けの激流が湖に流れ込んできました。
他の鳥たちは丘の上に駆けあがったり飛び立ったりして激流を避けましたが、醜く太ってしまった野鴨たちはなすすべもなく激流に押し流されてしまうのです。
本来数千キロを飛ぶことのできる野鴨でも、環境に安住することにより本来の生命力を失い、
環境の変化にも対応できなくなってしまった。
私たちは飼いならされてはいないだろうか?
チャレンジをしなければ、批判されることはない。ある意味でとても平穏な状態である。その状態を維持しようとしてはいないか?もしかすると、そんな日常を送っていることにすら気づいていない可能性がある。
人生100年時代。移り変わりが激しい現代において、一番怖いことは、環境に順応できないことではないか?
「強い者、賢い者が生き残るのではない。
変化できる者が生き残るのだ。」
ダーウィンの言葉です。
いざという時に飛び立てる。
いつまでも野鴨でありたい。