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メスガキわからせ界の重鎮『井川治憲』(エロ小説)

「すみません、1つお尋ねしたいのですが……ざぁこでいらっしゃいますか?」
ワシの名前は井川治憲。メスガキにわからせることをめっちゃ生業にしているプロのおじさんじゃ。
……といってもワシは御歳84、パンクに和暦で言うと昭和13年生まれじゃので、プロのおじいさん(プロのおじいちゃん)と言った方が「おや?」ってならなかろう。そうなるとやはり、ワシから見たメスガキといえば自ずと4、50のババアになっちまう。故に違法性が認められないところがワシの心の処方箋なのじゃ。
今日も元気よく、メスガキ探しのため夜の天神地下街をテクテクしているのじゃが……。
「大変恐縮ですが、ざぁこでいらっしゃいますか?」
またこれじゃ。4、50のクソババアともなると変にお行儀がよくてかなわん。ワシのブレーンはプレーンな「ざぁこ」をデマンドしてるのじゃ。オーマイガーじゃ。
「ざぁこでございますか?」
「ざぁこでいらっしゃいますでしょうか?」
「御ざぁこにあられますか?」
ざぁこの後ろになんかつけられると調子狂うわ!
ワシは4、50代のババア群を完全スルーしながらモリモリ歩く。
ワシ、もう帰って韓国のパン屋さんのドラマでもみるかのう……そう思った矢先、ワシの木みたいにシワシワで加齢臭のする体に稲妻が落ちるような衝撃が走った。
「……じぃこ……じぃこ。」
目ん玉が飛び出るくらい驚いたワシがその声に振り返ると、そこには40代くらいで縄文人顔のめっちゃ高身長なクソババアが立っていた。
……いまなんと言った?
「じぃこ。」
じぃこ……?ざぁこじゃなくて?
「じぃこ……監督」
監督?じぃこ……あ、ジーコ監督か、なんか聞いたことある、ジーコ監督、えっと、なんじゃったか、なんかの監督じゃ。
ワシは一か八かで話題を展開しにかかった。
「おいそこのババアのメスガキ、ジーコ監督といったか?」
「いったわよ。」
「ワシもジーコ監督好きなんじゃ、ジーコ監督の、あのほら、怖い映画、ジーコ監督が撮った怖い映画いいよね。」
するとメスガキのババアは奥歯をキシキシいわせながら笑いだした。
「キシキシ……ジーコさんはサッカー監督さんよ?」
しまった!2択を外した!!
2択を外すと恥ずかしくなるパターンがあるが、今がそのパターンじゃ!
追い込まれたワシは、悪口を言ってなんとか巻き返そうとした。
「お前、キシキシ笑う笑い方気持ち悪いのう。」
よし、これでトントンじゃ。
しかしそれでもメスガキはラグジュアリーな笑みをブイブイいわせる。そして……やりやがった!
「キシキシ……ジーコも分からないなんて……脳の海馬ざぁこ!」
プ、プレーンなざぁこじゃーーー!!!
「ざぁこ、ざこ海馬。」
うっひょーーーーーー!!!
不意をつくニュアンスのざぁこにワシの心臓の鼓動は早まる!
そして遅まる。なんだ不整脈か。病院行かなきゃ。
「おじいさんのお家、いかせてよ。どうせ風呂なしワンルームでしょ?」
このメスガキ、順調に挑発してきよる!
「失礼な!ちゃんとシャワーついてるし、ロフトもあるーーー!!」
ワシは天神地下街中に響く大きな大きな声で答えた。喉がちぎれそうじゃ。
しかし困った展開じゃ。ワシは自宅でわからせた経験が無い。なんせお母さん以外の女の人をお家に上げたことさえないのじゃ。
「失礼な!ちゃんとシャワーついてるし、ロフトもあるーーー!!」
七隈線の方からやまびこが返ってきた。
「お家じゃなくて、宿泊施設でわかるプランはどうじゃ?」
恐る恐る聞いた。近頃うち清掃不足だし、鼻ムズムズしちまったらわかるもんもわからんじゃろうから、と、一応自分の脳みそを飼育して。
「えー!お家に1票〜」
「いやいや!宿泊施設に1票!」
「いやん!お家に1票〜!」
「頼む!宿泊施設に1票!」
これじゃ水掛け論じゃ。小一時間怒鳴りあった末、折衷案として、近くのショッピングモールの1階のスーパーで何か買ってフードコートで座って食べることになった。
ババアは美味しそうなアイスを買って、ワシは小さい牛乳を買った。これで居座りゃ安上がりじゃ。店員さんに怒られたら嫌じゃのう。
フードコートに座ると正面から天かすと出汁の香りが漂ってきた。
「あ、ワシやっぱり丸亀製麺食べるわ。この間ユーチューブの短い動画でオススメの注文みたいなのが、食べ終わったあとにおにぎり入れてシメみたいにするやつ、安くでボリューミーに食べる食べ方やりたいと思っとったんじゃ。明太子のうどんじゃ確か。水のコップ2つ貰ってくるから水飲めるぞ。」
ワシは猪突猛進で丸亀製麺に向かったので、にゅーんって赤い帯がでてくる仕切りのポールを2、3本倒してしまった。
ワシはハキハキ注文を済ませると席に戻る。
メスガキはガリガリ君をもう食べ終えていた。早いのう。水溜りボンドのトミーかよ。
「水溜りボンドのトミーかよ。」
ワシはそのまま言った。
「私そんなに襟足長くないわよ。」
そういうとクソババアはガリガリ君の棒をめっちゃエロい唇の間からにゅって妖艶に取り出した。
そのガリガリ棒に書いてあった文字は……!
『わかった』
……わかった!?ま、まさか!
「おい、メスガキ……わ、わかっちまったのかい?」
「……うん。」
ちくしょう!こいつ、ワシがわからせる前にわかりよった!ワシ、わからせるの楽しみにしておったのに!
……この時点ではワシにはまだプリプリする余裕があった。
しかし、メスガキの顔を見るとなんかワシがうかうかしていられるアレではなかった。
メスガキは洞窟のような瞳をへの字にしてこちらを見ている。
「……わかっちゃったわ。」
なんだ……変な雰囲気だしおって!
「はは!じゃあ更にその上のをわからせてやるわい!」
ワシの声はフードコートにビーンって反響した。
「いいえ、もう全部。わかってる率大きいわよ。」
「……。」
嫌な気分じゃ。
「みんなわかってるのに、わかってる率が小さいマイムをしてるの。」
なんだか、心がすーっと親しい黒のぐるぐるに吸い込まれる。
「……おじさんもわかってるでしょ?」
「ワシはおじさんじゃない!おじいさん(おじいちゃん)じゃ!!」
勢いよく立ち上がると、ぶつけてしまった。明太釜たまの位置エネルギーが運動エネルギーに替わり、多い音をたてて床にこぼれる。寂しいフードコートの床がブリンブリンになる。
「……ほら!このワシどうじゃ!手が当たってこぼしちゃったんじゃ!」
メスガキは落ちたどんぶりを見て、への字だった瞳をハの字にさせた。
「いつもこぼしちゃうんじゃ!そんなワシどうじゃ!」
メスガキは無言で床に落ちたうどんを片付け始めた。
「……ワシはわからせにきたんじゃ!!!」
ワシは涙が溢れてきた。ワシ水分少ないから脱水になっちゃう。
「今までの……どのメスガキよりも、お前はクソババアじゃ。」
ワシは乱暴に鮭おにぎりに食らいつく。口の中がじんわり温かいのを感じた。
しばらくすると、ババアはおもむろに手元の『わかった』ガリガリ棒をくるりと翻す。
裏面には……『あたり』
「わたし、ガリガリ君当てたの初めて。キシキシ。」
「ワシはなんどもある。」
「そうよね。私これ替えてくるけど、ガリガリ君食べる?」
「……。」
ワシは答えなかったが、メスガキは立ち上がると全力疾走でスーパーの方へと向かっていった。
ワシはこのメスガキと付き合おうと思った。
メスガキも同じことを思った。


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