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<体験記>デザートイベント:respiracion 高光パティシエ×La Clairière 野田パティシエール

能登半島地震のチャリティーイベントとして開催された金沢のスペイン料理のお店、respiracionの高光パティシエと、東京のフレンチ La Clairièreの野田パティシエールのコラボレーションデザートコースにお邪魔して参りました!

今のお二人だからこそ表現出来た、組み上げられた、最高のデザートとペアリングを体験させて頂いた奇跡のような時間でした。この為に金沢に行くことを決めて本当に良かったです。
ノンアルコールペアリングは全てrespiracionの高光さんが初めてご担当。

このようなお料理の体験記を書く時にはいつも注意事項として書くのですが、これはあくまで私が感じた味わいや香りであり、作り手さんが意図したものとは異なることが往々にしてあると思います。私の舌や鼻が持つ経験値や感度は、作り手さんと同じものではないからです(なんなら私はかなり鈍感💦)。
それでも私がこのコラボイベントの中で感じた素敵な感覚を伝えたくて筆を取っておりますので、温かく見守って頂けますと幸いです。

Walnut/胡桃

胡桃のオイルとマシュマロ。
石川県の白山や門前の胡桃を使った野田さんの一皿から。

ペアリング:胡桃の木に釘を出して取り出したシロップを使ったもの。ほんの僅かやさしい甘みにふわっと胡桃の香りが広がります。

胡桃の木のシロップ

お皿:香りを楽しむ一皿。鬼胡桃の皮の中には搾油機で丁寧に絞られた搾りたての胡桃のオイル。

マシュマロが想像以上の柔らかさでビックリ
この搾油機で搾ってくださったそうです

右手には手に取るそばから溶けそうなほど柔らかなマシュマロ。胡桃からマシュマロの穴に入れてパクリ。

とろりとした胡桃のオイルをたっぷり

胡桃のオイルはさらりとしていて、それでいて口腔内のみならず鼻腔にも広がる胡桃の香ばしくナッティな香りが楽しめ、シンプルに素材とその素材が育まれた環境をストレートに感じる一皿。
すっと身体に染み込む常温のお皿であり、また香りへの感度を高めるこのお皿からのスタートは本当に素敵。期待が高まります。

Impact shrimp/甘海老、Wild leaf/葉山椒 野ふき

高光さんから二皿。高光さんの代名詞ともなりつつある甘海老のフィナンシェと、今回初登場の山菜のミニクレープ。こちらも少し温かくも常温に近い温度で。

ペアリング:芽を出して乾燥させた六条大麦を焙煎し、取った麦汁にに黒文字とスパイスを合わせ、微炭酸にしたもの。ノンアルコールビールのような感じだけれどホップの苦味はないので私好みで嬉しい。

ノンアルコールビール風で美味しい

<Impact shrimp/甘海老>

甘海老のビスクを煮詰めたものをフィナンシェに焼き込んだもの。手元に届いた瞬間から甘海老の揚げた殻のような芳ばしい香りがします。
上の泡は林檎と黒糖?とメモしてますが少し自信なし。このおかげで食後感はそこまでえびえびすることもなく、スッキリ。
器は藤田和さんのもので、ガラスに漆で甘海老の生息する海が描かれています。respiracionさんの「甘海老」もこの器なので少しニヤリ。
そして当然、甘海老にはこのノンアルコールビール的なノンアルコールが合うんだよなぁ。

Impact shrimp/甘海老

<Wild leaf/葉山椒 野ふき>

もう一品は山菜のパウダーを練り込んだテトラポット型のクレープの中に野蕗のコンポート、ブッラータチーズ、山羊のヨーグルトクリーム、上には葉山椒を。
蕗のシャキッとした食感にチーズのコクとヨーグルトクリームの酸味がぴたっと合って爽やかで鼻に春の香りが抜けていく一口。そしてこれも当然ノンアルコールビール的なノンアルコールが合うので本当にずるい組み合わせ(好き)。

Wild leaf/葉山椒 野ふき

Laurier/ローリエ

高光さんは前回頂いた野生クレソンのアイスのイメージが強く、メニュー名を見てなんとなく高光さんかな?と思いきや、野田さんのお皿でした。ここから温度を下げてゆきます。

ペアリング:ウドを砂糖と発酵させたシロップに凍頂烏龍茶、パイナップル。さっぱり美味しい。4月下旬にしてはかなり暖かい日だったのでこの飲み口は嬉しい。

ウドと凍頂烏龍茶

お皿:能登の高農園さんのフレッシュローリエのアイス。下には自家製のベルジュの水出しハーブティーとパイナップル。アイスの上には綺麗な緑の肉桂のクリーム。

フレッシュローリエのアイス

これが本当に美味しかった…!頭の中に森の風景がパッと広がるようなやさしいローリエの香りがなめらかな舌触りとミルク感と共にやってきて。肉桂のクリームと合わせると香りが変わって面白いし、下のハーブティーと合わせるとこれまた香りが変わる。アイスの下には果肉がころころ。りんごっぽい食感がいた気がするけどりんごだったのかな。

Cedro/白山杉

続いて高光さんからは杉を使った一皿。このお皿に感動して、このお皿が好き過ぎて、心の中でこの稀有な才能がもうすぐ日本を離れることに涙しました。

ペアリング:能登ひらみゆき農園さんのブルーベリーにカモミール。トマトの発酵させたものに優しくアニスの香り。ちょっとお皿の衝撃が強すぎてあまり覚えてない…(ごめんなさい)

真っ赤なドリンクと真緑のお皿
素敵なコントラストです

標高の高いところにある杉と高農園さんの杉を合わせたもの。ソースは昆布茶を水で作って杉のオイルで乳化させたもの。そこにキウイ、黒糖のチュイール、杉の新芽、下には抹茶のクリームとミルクのブラマンジェ。

杉のお皿

先ほどのローリエとは明らかに異なる青々しい香りとキウイのぐっと冷たいシャーベットのような食感と酸味。そこにぷちっと杉の新芽の食感と柔らかな酸味がいい。そんな上の層だけでも成立する味わいにも関わらず、下から掬うとミルクの柔らかさに抹茶の青さと香りが入ってきて綺麗に開いた後に余韻を残しながら黒糖のチュイールのザクザク感とコクのある味わいで収束してゆく。
何がすごいってこれがちゃんと「とっても美味しい」こと。レストランでも出してみられたそうですが、それでも全く違和感のない、ちゃんとデザートとして成立している凄まじいバランス感。

針葉樹とキウイ、どこかで似たニュアンスを頂いたことがあるな…と思ったのですが、昨年のサロンデュショコラで頂いた、sea vegetableさん(石坂シェフ)の松の新芽とキウイですね。

参考:すじ青のりのチョコレートケーキ

あの時はそこに更にチョコレートとすじ青のりが合わさっている奇天烈さでその新しい味わいに感動。でもその時は「新しい味わい」に触れた感動であって、美味しかったけれど「とっても美味しい!」ではなくて。
この杉のお皿はもう一度向き合って食べてみたいと思う、そんな複雑で深みがあるのにサラッとしているお皿でした。完全な主観ですがとても高光さんらしい感じがしました。

Hassaku/さつき八朔

ペアリング:衝撃的な一皿の後はストレートに牧之原の緑茶に山椒の香りをうっすら移したドリンクから。

牧之原の緑茶

お皿:筒状の飴のなかには蔵光農園さんのさくら八朔に蜂蜜とお味噌。高農園さんのエディブルフラワー。

パウダーアイスをかける前の美しい造形
美しすぎるエディブルフラワーとパウダーアイス
野田パティシエールが目の前で液体窒素を加えて作ってくださいます
完成!エディブルフラワーとパウダーアイス

個人的に野田さんにしか作れない、野田さんらしい、女性らしい一皿で「ああ、素敵だなぁ」と。美味しいさくら八朔はストレートにそのまま、美しくかつ美味しいエディブルフラワーは目の前で液体窒素をかけてアイスに仕立て、それぞれのお皿に加えてゆくデモンストレーションにお皿がパッと華やかに。

ひんやりした食感に爽やかな八朔の酸味がきゅんとして、そこに蜂蜜や味噌の旨みや香りが後から追いかけてくるそんな味わいや余韻が変わるデザートでした。好き。

Wild chervil/ワイルドチャービル・白胡麻

ここから最後に向けて少し温度が上がり、土っぽいお皿が出てきます。こういう構成いいなぁ。

ペアリング:台湾の紅韻紅茶に、菊芋の乾燥チップスとマカダミアナッツローストを加えたもの。
菊芋の香りって強く出がちだと思うのですが、ふわりと土っぽさを残すのみの味わいに仕上げられており、すごいな、と。

紅茶に菊芋

お皿:ワイルドチャービル(セルフィーユの根)の香り、そしてそのお花を使ったデザート。前のお皿もエディブルフラワーたっぷりで華やかだったのでそこからの繋がりも感じます。

ワイルドチャービル

目玉焼きのようなチャーミングな見た目。黄色い部分はマンゴーのアイス。そこにワイルドチャービルの根っこの香りを移したソース、ワイルドチャービルのお花、国産の胡麻のブラマンジェ、松の実のクリームを。

綺麗に飾られたお花が素敵なお皿

別の器では温かな蕗の薹の餡が入った胡麻団子が供され、胡麻団子を齧ってデザートを食べて、としてみてください、とのこと。
口の中の温度変化と香りの変化を胡麻団子で付けるというのも面白いし、この甘くない胡麻団子がまた美味しい。
デザートだけだとワイルドチャービルの土感にマンゴーの軽やかな酸味と甘さが立つし、胡麻団子と頂くと胡麻の香りがぐっと立つ。右手にスプーン、左手に胡麻団子、というお行儀悪いスタイルで頂きました。面白いなぁ。美味しいなぁ。

目玉焼きみたいで可愛い

Guisante/スフレ スナップエンドウ

いよいよ最後のデザートはお二人の共同で。スフレは野田さん、スナップエンドウは高光さんがご担当。

ペアリング:玉露に水を含ませ、約2分抽出した玉露(福岡にある古木(在来種)の茶葉)。とろりとしていてお茶の旨みがぎゅっと感じられる贅沢な2滴。茶葉の入った形状の美しい器はなんと高光さんのお父様の作品とのこと。

左手が高光さんのお父様の作品。
右手のレースガラスもとっても美しい器でした。

ふわふわで綺麗に焼かれたスフレはさすが野田さん。彼女の生地と焼きは素晴らしく、過去のデザートコースでもアップルパイ等素晴らしい焼き物をいくつか頂いております。

ふわふわ感が伝わりにくい写真で申し訳ない…

添えられたものはレモンマートルの香りを移しながら、炭で炙られたスナップエンドウ、奥にはブッラータチーズ。
ここまでも全然食べ疲れしないお皿ばかりだったのですが、最後がスフレサレとは。好き。
スナップエンドウは単体でも炭の香りがして本当に美味しいのですが、そこに爽やかなブッラータチーズ、ふわふわのスフレ。ほっと美味しい一皿です。

ここで最後に向けてrespiracionさんといえば、のたっぷりハーブの美しいハーブティーが。


残ったお茶殻と合わせて高光さんといえば、のクレソンアイス。今日はないと思っていたので嬉しい想定外です。何度頂いても美味しい。

お茶菓子

ハーブティーと共に4種類の小菓子が出てきました。

お皿と下の紙がrespiracionさんなので
全体的にrespiracionさん感が強め

野田さんからは

◯石川県の酒粕のクリームとキャラメルを使ったエクレア

◯小松の本田農園さんの苺にフランスのリオレを乗せた苺大福風

高光さんからは

◯さつまいもの皮をプレスした生地にほおずきと八朔のジャム(パートドフリュイと思われます)、上には仏手柑とアップルミントを乗せて

◯丁寧に火入れした新玉ねぎにりんごを挟んだタルトタタン風

まとめ

お皿:野田さんの「最高に最幸な美味しいを届ける!」という心意気の込められたデザートは言わずもながとてつもなく美味しく、野田さんらしい柔らかさとしなやかが光るお皿でした。
ただ今回はさすが城というべきか、野田さんの柔らかさがあったからこそ鋭く光ったというか、高光さんの「やりたいこと」×「美味しさ」を存分に感じるお皿とペアリングがとても印象的で、もうすぐ日本で頂けなくなるのかぁ…と思うと途中で込み上げてくるものがありました。でも逆に今回デザートコースを頂いて、ああこれは日本の中だけでは勿体ない才能だな、とも。

ペアリング:高光さんの繊細な味わいのペアリングはまさに「ペアリング」という感じでとても好きでした。単体でも美味しいのですが、お皿と組み合わせるとぐっと深みが増して唯一無二の組み合わせとなり、味わいが変わるのが本当に面白くて。あとそれぞれの味が濃くないので最後まで全く飲み疲れしないのも感動でした(単体で美味しいものが続くと最後しんどくなりがちなのに…)。これが「ペアリング初挑戦」というのが信じられない。

あまりに感動したのでSNSには収まらず、noteに書きましたが、ここまでで約5,000文字らしい。書き過ぎ。
いやー、本当に行けて良かったし、行って良かった。頭に書きましたが、誇張なく奇跡の時間に居合わせたような心持ちです。
お邪魔させて頂き、ありがとうございました。ごちそうさまでした!

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