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【洋画】バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)(2014)

監督:アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ
出演:マイケル・キートン、ザック・ガリフィアナキス、エドワード・ノートン、エマ・ストーンなど
上映時間:1時間59分

「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」鑑賞しました。昨日観た「アメリカン・ヒストリーX」のエドワード・ノートンの演技に感銘を受け、彼の別の作品を見たいと思い鑑賞に至りました。アカデミー賞で4タイトルを受賞。にしても長いタイトル。

主人公のリーガン(マイケル・キートン)は過去にバードマンという大ヒット映画の主演を務めた俳優。しかしそのあとの作品は鳴かず飛ばずで、世間からは一発屋扱いを受けている。60歳になった彼は俳優としての存在意義を見出すために、ブロードウェイ進出を決意。俳優を志すきっかけとなったレイモンド・カーヴァーの「愛について語るときに我々の語ること」を舞台向けに脚色し、自ら監督・主演を務めることに。

公開3日前のプレビュー公演直前、出演者のひとりが負傷して急遽代役を探すことに。選ばれたのは類稀な演技力を持つブロードウェイ俳優のマイク(エドワード・ノートン)。彼の演技力はピカイチだが性格に難があり、ベッドシーンで発情して勃起する姿を観客に晒すなど、3回中2回のプレビューを台無しにする。しかも「ニューヨークタイムズ」のインタビューで虚言ばかりの彼の記事が一面を飾り、カムバックを目論むリーガンにとって目の上のたんこぶになる。

舞台のアシスタントとして働くリーガンの娘サム(エマ・ストーン)は、薬物依存症から回復したばかり。プレビュー期間中に彼女はマイクに惹かれ、二人は舞台裏で激しく互いを求めあう。

人間の闇に迫るいい作品です。特にリーガンの持つ闇は俳優が持ってしまいやすいものだなーと。自分の存在をアピールするために演じようとするのはありがちな間違い。観客が観たいのは「劇」であって、自分はそれを構成するパーツに過ぎないのですね。それを娘のサムにバッサリ言われるシーンは悲しさと同時に若干の爽快感もあります。しかも彼女は観客の求めていることは「観劇後の食事」とまで言っています。辛辣です(笑)

家庭環境が崩壊していくのも納得。前妻には「あなたは褒められることが愛されることだと思っている」と言われますが、これもバードマンの成功によって高まった地位を守りたい心から、自らの名声を高める言葉が心地よくて仕方ないのでしょう。人間って脆いです。

リーガンを演じるマイケル・キートンは存じ上げなかったのですが、素晴らしい演技。他の役者も然りですが、演技の中の演技(作中の演技)というのは二重構造で難しいもの。彼はその中でも決めるところはバッチリ決め、役の素である滑稽な部分もおもしろく哀愁たっぷりに演じ切る。俳優としてのキャリアを感じる演技です。

エドワード・ノートンはまたもや癖の強いキャラクターを演じています。演技メソッドにおいて病的なまでのリアリティ主義者で演技中に本物の酒を飲もうとしたり、ガチで発情したり、トチ狂っています(笑)。その中でも「才能あるブロードウェイ俳優」という高いハードルを迫力ある演技で超えていくのは素晴らしい!

現実と空想が入り混じる演出もとても興味深い。物語の後半になるほどこの演出が効いてきます。観る手に委ねる結末も好きです。リーガンはどうなったのでしょうか。

「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」は一発屋に終わった俳優が再起をかけてブロードウェイ公演に挑む物語。人間の闇の部分がよく出ていておもしろい。ちなみに作中のバードマンは完全にバットマンです(笑)

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