【インド映画】Once Upon a Time in Mumbaai(2010)
監督:ミラン・ルトリヤー
出演:アジャイ・デーヴガン、イムラーン・ハーシュミー、カンガナー・ラーナーウト、プラーチー・デーサーイー、ランディープ・フッダーなど
上映時間:135分
ムンバイのアンダーワールドを扱った映画「Once Upon a Time in Mumbaai」二度目の鑑賞。以前はまだムンバイのアンダーワールドのことについて全く知りませんでしたが、今回はある程度理解が進んだうえでの鑑賞。ただし主人公のモデルであるハージー・マスターンはこの映画で初めて知りました。タイトルは完全にハリウッドの「Unce Upon a Time in…」シリーズをもじったものです。そっちは見たことないんですけど(笑)
1993年ボンベイ(現ムンバイ)で連続爆破テロが起きる。その中アグネル警視監(ランディープ・フッダー)はテロが起きたのは自分の責任だと自殺未遂を起こす。事件は18年前に彼がテロの中心人物となるショエーブ・カーン(イムラーン・ハーシュミー)の台頭を防げなかったことに起因する。
物語はさらにさかのぼる。子供のころに船でムンバイに流れ着いたスルターン・ミルザー(アジャイ・デーヴガン)は、いつしかボンベイの密輸業を取り仕切るマフィアへと成りあがった。彼は政府が規制する一般商品を専門に密輸しており、麻薬や酒などボンベイの人たちの害になるものは決して密輸しない。貧しい人たちには施しを忘れず、彼は貧困層の中でもヒーロー的存在である。
映画好きのスルターンは女優のリハーナー(カンガナー・ラーナーウト)に一目ぼれ。撮影現場に赴き彼女とデートの約束をこぎつけ親密な仲になる。やがて二人は付き合い始め、スルターンは彼女の映画に出資するようになる。
一方ボンベイのアンダーワールドの一掃を使命としているアグネルは、スルターンとリハーナーの関係性に目をつけリハーナーの撮影を妨害しスルターンを刺激する。しかしスルターンは彼を収賄事件に陥れ反撃する。
アグネル警視監にはカーンという部下がおり、彼の息子ショエーブ(イムラーン・ハーシュミー)は昔から反抗的で軽犯罪を繰り返していて、悩みの種だった。ある日カーンは息子のことを警察とも裏でつながりのあるスルターンに相談する。ショエーブはスルターンの下で働くこととなり、次第に頭角を現していく。
90年代のインドマフィア界という日本では知りえない情報を取り扱った作品。まずはスルターンのモデルであるハージー・マスターンという人物ですが、1960~80年代のボンベイのアンダーワールドを仕切っていたタミル州出身の男。密輸をメインで行いながらのちに映画界や不動産にも進出し、のちには女優のシャージェハーン・ベーガムと結婚する。映画製作サイドはハージー・マスターンをモデルにしたことを否定しているものの、スルターンは彼そのものです。
もう一人の主人公ショエーブ・カーンは前述の93年連続爆破テロなど数々のテロを指揮してきたダーウード・イブラヒムがモデル。現在も国際指名手配されている大物犯罪者で、彼を題材にしたインド映画は「Company」や「Black Day」など他にも多数。
スルターンはマフィアのボスと悪人ながらも、自己の利益よりもボンベイと貧困層を優先的に考える正義感の強い男。哲学のあるマフィアといえば、家族愛を説く「ゴッドファーザー」のドン・コルレオーネが想起されます。彼ほどとは言いませんが、スルターンもかなりカッコいいキャラクターに仕上がっています。
特に最初のシーンは彼のキャラクターをわかりやすくドラマチックに表しています。人間性を表すエピソードとしてはいいんですが、ちょっとクサい。「インド映画だな~」と思いました(笑)
対照的なキャラクターがショエーブ。自己の利益のためにボンベイを破滅の道に追いやります。人間としては終わっていますが、マフィアとしてはこちらの方があるべき姿なのかも。実際に最後に生き残るのは彼ですし。
スルターン役のアジャイ・デーヴガンは男臭いマフィア役がバッチリはまっています。彼はどの映画でもこの手の武骨なキャラクターですが、インド映画では需要が高いんですねー。決してイケメンではないのですが、クライムモノや、逆にコメディでも活躍します。
ショエーブを演じているのは「インドの連続キス魔」ことイムラーン・ハーシュミー。ダーウードとしては少し迫力に欠ける印象。これは演技力の問題ではなく、持ち合わせたキャラクターの問題で。特にアジャイ・デーヴガンと比べると厳つさの不足が否めません。
スルターンの愛人を演じているカンガナはやっぱいいですね~。美しさの中に気象の粗さというか、ツンケンした性格が垣間見えるのがたまらん。実際の性格もかなりクセがあり、共演者とトラブルを起こしたり、SNSで過激な発言を繰り返すこともしょっちゅうですが。僕は好きです!
「Once Upon a Time in Mumbaai」は60~80年代に暗躍した正義感の強いマフィアのボス、ハージー・マスターンにスポットライトを当てた作品。武骨なキャラクターをアジャイ・デーヴガンが見事に演じ切っています。