【読書感想文】ダライ・ラマに恋して
近日訪れる予定のチベット亡命政府がある街ダラムサラの予習のため購入。
ダライ・ラマ14世の法話も予定されているので(参加できるか謎)、ちゃんと話を理解できるように、そして何よりダライ・ラマの凄さを分かっておきたいと!
著者であるたかのてるこさんの本は「ガンジス河でバタフライ」以来2冊目です。この人の本はくだけた文章で、アホの僕でも読みやすいのが特徴。
そしておもしろく、かつ読み終わったらガンジス河の知識も知らん間に刷り込まれているという、楽しくて勉強になる本。
前作「ガンジス河でバタフライ」では、旅慣れしていないビビりな女の子がインドを独りで旅するという物語であったが、今作ではすでにそれらの旅を通じて人間として成長を遂げたたかのさんの姿があり、勝手に感慨深くなってしまいました。
改めてたかのさんの書く文章は本当に臨場感があって楽しい。
著者の感情の起伏や感受性の豊かさもそうですし、言葉のチョイスも親しみがあって心に響きやすい。情景や心情描写も細かくよく伝わってくる。
自分が行ったことのない場所でも、まるで自分もその場所に一緒に行って同じ体験をしているかのように感じさせてくれます。
そして旅先での経験がまたおもしろい。
旅自体は僕もよくしているのですが、やっぱ旅運ってあるんですよね。
一番大きいのは人との巡り合わせ。出会いは本当に旅を左右します。
ただ一つ言えることは「いい人にはいい出会いがある」ということ。
たかのさんの人間力があるからこそこのような人に恵まれた豊かなたびになるのだなとつぐつぐ思います。
文面から読み取れるたかのさんはまっすぐで、パワーがあって、何より飾らない姿を見せることができるのが本当に素敵です。
こういう人のところには、そりゃあ人は集まります。
さてさて本編は「ダライ・ラマに恋して」ということで、ダライ・ラマ14世に会いに行くまでの物語です。
現在ダライ・ラマ14世はチベット亡命政府があるインド・ダラムサラに滞在しています。なのでお話はダラムサラか、または故郷のチベットが中心になるかと思いきや、舞台の大部分を占めるのはインド最北端の州・ラダック。
僕もラダックには行ったことがあり、確かにチベット仏教のゴンパ(寺院)はたくさん見かけましたが、僕含め殆どの人のラダック旅行の目的はパンゴン湖という映画の舞台などに使われる超絶美しい湖や、バイク旅などです。
このパンゴン湖などは10月以降になるとマイナス20度とかになり訪れるのが難しくなるので、ラダック旅行は基本9月までといわれています。
しかしたかのさんが訪れたのはそれ以降。なので観光客などはほとんどおらず、街はガラガラだったそう。
そんなラダックでいろんなチベット人との出会いを重ねていくわけなのですが、最も印象に残ったのは前世の記憶を持つ少女・デルダンとの出会い。
チベット仏教では輪廻転生が信じられているのですが、実際に前世の記憶を持つ女の子は珍しいとのこと。しかもびっくりするぐらい記憶がはっきりしていて、めっちゃ当たっているんです。
前世の家族は同じラダックに住むイスラム一家で、自分は10歳の時に医者に間違った薬を飲まされて死亡したと。
そして本当にこの家族が存在し、実際にシャナースという10歳の娘を全く同じ経緯で亡くしているんです。
イスラム教では輪廻転生は信じられていないのですが、前世の家族も「これは奇跡だ」とこの子がシャナースであることを認めたのです。そしてデルダンを譲り受けたいと現世の家族に願い出るのですが、さすがに「気持ちはわかるけど、今はうちの子だから」と丁重に断っているのです。
そんなデルダンの前世と現世の家族がたかのさんを介して一斉に集まる場面があるのですが、これが涙なしには見られない・・・
特にデルダンが10年ぶりに前世のお母さんに髪を結いてもらうシーン。母心がわかる現世のお母さんがその姿に涙し、それを見ているたかのさんも涙し、前世のお母さんも、そしてデルダン本人も。
誰も悪くないのに・・・本当に胸が締め付けられます。みんな幸せになってほしい。。
もう正直このシーンでお腹いっぱいなのですが、最後にダライ・ラマとの出会いもあります。
約20分の面会なのですが、ダライ・ラマの発言一つ一つの尊さといったらありゃしない。完全に真理を悟っています。
ダライ・ラマは実際チベット仏教では「観音菩薩の生まれ変わり」とされているのですが、ホント限りなく仏・神に近い人間だと思います。
でもそれはチベット民族のトップだからという理由ではなく、これまで歩んできた人生、そして日頃の鍛錬がダライ・ラマという人間の人格を作り上げているのだと僕は解釈しております。
僕はさすがに今回はダライ・ラマと実際に対話するような時間などないとは思いますが、なんとか一目見てそのオーラを感じてきたいと思います!
すごく希望に満ち溢れてきました。
この本を読んだら絶対旅に出たくなります。それだけは保証する。
エエ本でした!!