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【インド映画】ガンジスに還る(2016)

監督:シュバシシュ・ブティアニ
出演:アディル・フセイン、ラリット・ベヘルなど
上映時間:102分

第73回ヴェネチア国際映画祭上映作品「ガンジスに還る」、U-NEXTにて鑑賞しました。英題・印題は「Hotel Salvation/ Mukhti Bhawan」で「解脱の家」という意味。

自らの死期が近いことを悟った老人ダヤ(ラリット・ベヘル)はヒンドゥー教の聖地バラナシで終焉を迎えることを望み、息子のラジーヴ(アディル・フセイン)の付き添いの元バラナシへ向かう。ダヤはバラナシにて「解脱の家」に入り死期を待つことに。ダヤは15日までしか滞在できないはずの「解脱の家」で18年間滞在し続けているヴィムラという女性と仲良くなる。彼女は夫に先立たれずっとここで死が訪れるのを待っているのだ。

息子のラジーヴは付き添いできたのはいいものの、バラナシに来ることで職場の上司に嫌味を言われ、「解脱の家」でも仕事に追われ続けていている。ラジーヴは内心早く帰りたいと思っているし、ダヤは仕事に明け暮れるラジーヴに嫌気がさす。しかしあるときダヤが体調を崩し寝込むと、ダヤはこれまで良好な関係を築けなかったことをラジーヴに謝り、二人の仲は緩和される。

ラジーヴはここが山だと見込んで妻や娘をバラナシへ呼ぶ。しかし彼女らが到着するころにはダヤの体調は回復する。彼女らは再び家に帰り、ダヤは「解脱の家」に来てから15日が経った。ラジーヴはこれで家に帰れると思いきや、管理人は「別に居続けていいよ」と言う。彼らはもうしばらく「解脱の家」にて死期を待ち続けることに・・・

バラナシを愛し、これまで計7回もバラナシに足を運んでいる僕にとっては、非常に感慨深い作品になっています。何度もこの目で見たガンジスで死を待つ人たちのストーリーがしっかり描かれています。なぜヒンドゥー教徒はガンジスに還りたがるのか、その理由が見えてくる作品です。

この映画の主人公はどちらかというと息子のラジーヴ。職場や家族関係など悩みをたくさん抱えたままバラナシへ向かい、少しずつ考え方が変わっていきます。彼のように悩みを抱える人、忙殺されている人を包み込むのもまたバラナシ、ガンジス河の魅力なんですよね~

バラナシ自体の魅力も画面を通してしっかりと描かれています。ガンジス川のボート、アールティ(祈祷)、雑多な路地裏、沐浴、火葬場・・・本当に深い場所です。僕のインド人の友達がバラナシについて「最も騒がしくて、最も平和な場所」と言っていましたが、まさに言いえて妙。この相反する二つの要素が共存する不思議な場所なんです。

先述の「バラナシで死期を迎える理由」というのは僕はラストシーンに見えました。なんというか、悲壮感がないんですよね。寧ろここで死ぬことができたことを祝うような幸福感があるんです。自分の死を考えたときにもひとつ参考になるような、そんなシーンです。

あと「解脱の家」の15日ルールのテキトー加減はまさにインドという感じで笑っちゃいました。「登録上は名前変えておくから問題ないよ~」って職員の言うことじゃない(笑)。このいい加減さが僕には性に合っているのですが。

「ガンジスに還る」はバラナシで死期を迎える人たちのストーリーを見せてくれる映画。なぜガンジスに還るのか、その理由も垣間見えてきます。そして見ている方も「自分も死期が近づいたらガンジス河へ・・・」と思わせます・・・それは僕だけか?

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