服に関しては、まだそっとしておいてください
友達がある日突然、ふと私の恰好を見て「前から思ってたんだけど、Shibaって今日の服装、どこがいいと思ってんの?」と言ってきた。
そのあとに「ごめん、責めてるわけではないんだけど、うーん、私だったら、もっと違う服選ぶかも。」という言葉も付録でついてきた。
私はその言葉を聞いて少し、いやだいぶ落ち込んだ。
私の今後のためを思って言ってくれたのだろうから感謝しなければならないのか。
ただ、ありがたい、と思うまでにはもう少し時間が掛かりそうなのだ。
朝のことを思い返してみる。その子とは夏の終わり際に海沿いに行く約束だった。
「海だから青系のスカートだとイメージに合うな」
「昼は気温が高いし上はTシャツにしよう」
「この子と遊ぶといつもたくさん歩くからスニーカーで」
「なんとなくキャップかぶるとバランスいいかも、かぶろう」
「スカート柄物だから上はシンプルめでバランスとろう」
こんな具合で相手と過ごす一日を組み立てながらメイクとセットでコーディネートも組み立てる。
たくさん写真撮ろう、電車混んでるかな、寄り道したいところを提案してみよう、相手はどういうコーデで来るかな、晴れるといいな、楽しみだな。
ワクワク、時にドキドキしながら天気予報を見つつ全身鏡に向き合う時間は私にとっては精神統一の大事な時間だし、誰かと遊ぶ前に欠かせないルーティンで。
作業のように行っているように見えるが、かけがえのない大切な私だけの時間だし、好きなのだ。
その時間を全否定された気持ちになってしまった。
なんで服のことをとやかく言うのだろう。
印象をよりよくできる伸びしろがあるという心優しい指摘なのか、改善してもらわないと自分が隣で歩くのが恥ずかしいという意思表示なのか。
そう考える私は、ひねくれすぎなのか。
人の数だけファッションがある、それでいいと思ってしまう。
私のファッションはまだまだ発展途上なのだ。
小さい頃から、元デザイナーということもありファッションに対するこだわりが強い母の影響で、服を選ばせてもらえる機会が無かった。
可愛い服を見つけて「あれ欲しい!」『安っぽいからやめなさい』
着たい服を着たら『何それ、脱ぎなさい。こっちのほうが似合うわ』の一点張り。
抗うのをやめて諦めて育ってしまった。
そんなこんなでファッションに諦めて大学生になり週6で着ていた制服とはさよなら。上京、一人暮らし。
着たい服を着ているつもりだった。
実家から持ってきた服も多かったので大半が母親セレクトである。
だいぶ買い足したが、母親セレクトの服のほうが値段が高いものが多いので着ないともったいない気がして、着ていた。
「ねぇ、Shibaの服、今日も微妙よね。」ほぼ毎日交わされる当時つるんでいた子との会話だった。
はじめは傷つきつつ、会話を流していたのだが。
どうやら、母親セレクトの服は独特な感性なんだろうな。
3年経過したが今更そう思う。
当時つるんでいた子が「買い物付き合ってあげるよ」と言ってくれたため10000円くらいで上下コーディネートしてもらった。
確かにサークルの友達からは好印象だったし、珍しくチヤホヤされて浮かれ気分になっていた。脚のラインが見えるコーディネート。
ありがたかった。けど。
全身鏡に映る自分は、身体は私だけどコーディネートを考えたのは友達で。
友達の感性が自分の感性を否定して上書きしてくること、個性を出せるはずの「ファッション」という領域に入り込んでくることが嫌で、苦しかった。
親にその服装を見られた。
「何、その服。ダサいわね、すごく恥ずかしい。」
一蹴されて終わった。
やっぱファッションに答えなんてないじゃん、着たい服を着ればいいじゃん。と開き直り一人で様々な商業施設やアウトレットを巡った。
ときめく服に出会えた時は喜びも大きいし、その服を着て外に出かけると一日がうまくいく気がしてきてしまうから服は不思議だ。
ただ、服に対する話になると「批判されるのでは」と身構えてしまうようになったのだ。
そんな最中、冒頭のとおり再び服の指摘を受けてしまった。ちょうど商業施設にいたため服屋で秋服を見ることにした。
秋服は可愛くてすごく好きでワクワクした。
が、なかなか何軒回ってもピンとくるものがないのだ。
友達にも付き合ってもらっているのに。申し訳ないな、と思ったあたりで私が自信なさげな顔をしていたからだろうか。
友達は「試着しないと何もはじまらんよ、てか私なら友達と服屋着たら試着しないとなんか、申し訳ないとか思っちゃうけどな~~」と呟いた。
結局気を遣いながら某格安アパレルショップでワンピースを購入。
秋にぴったりのワインレッドの色味でまあまあ気に入っているけれど。
「また、服のこと教えてあげるよ、友達だからね!」と彼女は言うけれど。
服に向き合う、ファッションに向き合うことは等身大の自分と向き合うこととイコールだと思う。
私がときめくものを私のペースで着たい。と思うのは強欲だろうか。
ただ、それから1週間がたった今、本格的に「いかに楽に過ごせるか」から「テンション高く過ごせるか」に服を選ぶ判断基準をシフトした。
先日可愛いテイストのアパレルショップに入って店員さんとどんな服が似合いそうか一緒に考えた。
ときめいたし全身鏡の自分はいつもと少し違っていて、何でもできるんじゃないかと思えた。
ただ、散財だけには気をつけようと思った。
その楽しさを気付かせてくれた友達には感謝だ。
自分の部屋がときめくような服でいっぱいになって、身にまとった時に「Shibaの服、めっちゃいい!!」って言われる日が来ますように。
楽しみながら、頑張ります。