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#19 働き方は生き方、生き方は働き方と一度考えてみる

生きていくためには「仕事」が必要ですね。会社勤めのみならず、専業主婦・主夫を選ぶのも「仕事の選択」。仕事に生きがいを求める人とそうではない人がいるとは思いますが、多くの人が、毎日の生活時間のかなりの部分を仕事に使うことは共通していると思います。今日はそんな仕事としあわせの関係を考えます。
 メンバー2人が実際に対話した記録を記事として毎週水曜日に投稿、導入部分は2人によるトークでお届けします。再生ボタンを押して放送をお聴きいただけると光栄です✨


〜 以下の記事は、上の stand.fm 放送の続きです 〜

これまでしてきた仕事たち


美織さんは、最初の仕事は鉄道関係でしたね。鉄道関係となると、時間や仕事内容が厳密に決まっていて、それに従って黙々と仕事をこなしていくというイメージがありますが、実際はどうでしたか?

その通りです。とにかく航空や鉄道といった業界に憧れがあったので、当時は、「その仕事で自分が何を得られるか」は深く考えず、ただただ湧き上がる好奇心だけで飛び込みました。素直に楽しかったです。ただ、ビジネスで利用されるお客様を毎日見ているうちに、少しずつ、「今の自分にはないスキルを身につけたい」と思うようになりました。その意味では、問題意識の始まりを最初の仕事から得たと言えると思います。

なるほど。運輸関連と言えば、日本では航空機の客室乗務員の社会的ステータスが高いのが世界の中では独特ですね。それ以外にも、「医者です」「弁護士です」「アナウンサーです」と、実際やっている仕事は人によってかなり違うわけですが、職業名で「すごい」「カッコいい」と認識していることが多いと思います。欧米ではむしろ、自分でビジネスを立ち上げる人が一番「カッコいい」イメージがありますね。

確かにそうですね。「その人が何をしているか」というよりも、「その職業がどんな職業か」で人気が決まる感じですね。私は、鉄道関係の仕事にしばらく携わって、「憧れの世界には触れることができた」と一旦仕切り直しました。2年で退職してその後デンマークへ渡り、自分の中で何をしたいかを棚卸しして今の出版業界の仕事に就けてよかったと思います。透さんは最初に英語の先生だった時は、どんな感じでしたか?

大学、大学院時代は学習塾で英語と数学を教えていて、とにかく「何かを教える、生徒と一緒に勉強する」ことが楽しくて仕方がなかったです。仲間の大学院生の中には、本当は研究職に就きたいけれど、博士課程に進学するお金がないから、とか研究職のポストがないから、と言った理由で教師になる人もいましたね。
 僕は逆で、大学院の研究は早く終えて、教室へ行きたかったです。なので、教師になってからは、我を忘れて没頭しました。教材研究は、毎日夜中まで楽しくやっていましたね。あの頃は、睡眠時間も1日4時間くらいでした。

10年後、20年後にツケが来る?


そこまで打ち込めるのはすごいことですね。でも、以前ゲストに鈴木彩音さんをお迎えした時にも話に出たように、体調を崩されてしまって、それが教師を辞める一つの原因になったんですよね。

そうでした。「無理をすると10年後、20年後にツケが来る」と言いますが、本当にそうだったと思います。生活習慣病は細菌やウイルスの感染ではなく、毎日の過ごし方でなる病気ですよね。毎日ギリギリまで自分を追い込んで頑張って、そのストレスから解放された時に解放感を味わって、こう書くととてもよく聞こえるのですが、身体には確実に健康負債を残していきますね。
 その点、今いるオランダの人は、決して必要以上に頑張らず、健康負債を溜めないライフスタイルで生きているように見えます。長い目で見れば、やりたいことの成果がより上がるのかもしれない、と最近感じています。

それはそうかもしれませんね。でも、どうしても色んなことを「若い時しかできない」とか、「今できる体力と時間があるのに、身体に余裕を持たせるために後回しにはしたくない」と思うのもまた、自然な感情ですよね。夕方6時頃に仕事を終えて、12時に寝るとして、その6時間をゆったりすごすか、何かさらなる成長のために使うか、と考えると、10年、20年先のことを考えてのんびりするのは、なんとなくやっぱりもったいない気持ちです。

たしかにそうですね。でも、個人レベルではなく国レベルでみると、そんな風に、「成長したい」と思って長時間働いたり、あるいは仕事に関連する資格の勉強をしたりしているような日本のGDP が、夕方5時以降はあまり仕事をしないドイツに抜かれましたよね。日本は労働生産性でもG7最下位です。結局は「夕方以降の時間をさらなる成長のために」が身を結んでいないとも考えられますね。実際にはたくさん要因があるので安易に結びつけることはできませんが、まずマクロな観点(=働く時間)で見ることも大切だと思います。

それは、事実として受け止めなければいけないですね。「将来のために成長したい」って思って、20代、30代でそうやって身体に多少負担をかけても頑張って、それで結局40代、50代になった時に「いや、その成果は特にありませんよ」となったのでは、仕事や社会に「搾取されている」という感覚になってしまいますものね。ところで、透さんの同年代のご友人とかの認識は、どんな感じですか?

ネガティブな話題になってしまいますが、美織さんが今言ったことに近いかもしれません。というのも、日本では子どもがいる人は、「子どもに大学を卒業させてあげたい」と思う人が多く、日本の大学は学費がかかりますよね。当たり前と思われそうですが、ドイツや北欧は大学の学費はほぼかからないので、日本の事情とは異なります。
 40代というのはちょうど、マイホームの購入と子どもの大学進学でお金がかかる時期で、「住宅ローンと子どもの学費で精一杯、自分の興味・関心なんて考える余裕はない」という人が大勢だと思います。若い頃に「素敵な将来」を夢見て頑張っても、その頑張りは十分に報われていない人が多いと思います。

透さんが今言った、「大学の学費を親が負担する構造」というのは、日本の幸福度が低く留まっている理由の一つかもしれませんね。アメリカは学生本人が学費ローンを組むことが多く、卒業後働き始めた時に最初から多額の借金を抱えていることが問題になっています。親の代わりに本人に負担がいく構図ですね。大学の学費が無料な北欧は人口がそもそも少ないので、日本がすぐに真似をできるわけでもなさそうです。

僕は今、大学研究員の立場ですが、日本で言うならば博士課程大学院生です。やりたい研究をさせてもらって、学費は全くかからず、お給料を十分頂いているというのは本当に恵まれ過ぎていて、日本国内で苦労しながら研究している人たちに申し訳なく思います。でも世界的に見れば、博士課程での研究は今の僕の状況がスタンダードだということもあるので、「学問=お金がかかる」という図式は、長い目で見れば改善されなければならないですね。

職場内、そして社会への影響


今は話を個人の中に限って、将来にどう影響が出るかという観点で話しましたが、同時代的に見るとどうでしょうか? 私の今の職場は恵まれていて、比較的個人のやり方が尊重されている雰囲気で、いわゆる「上司が帰るまで残っていなきゃいけない」的な雰囲気は薄いです。でもまだまだそういう雰囲気が残っている職場も多い気がしますね。

そうですね。さっきの話と関連していて、「自分は仕事に人生を捧げたいから、遅くまで頑張る」という人がいたとして、それってその人だけの問題ではないんですよね。その人を見ている同僚や後輩がいる。もしその人が高評価を得ていた場合、「あんな風に仕事をするのがいいんだ」という印象を与えてしまって、会社全体がそちらに進んでしまう。個人の選択は、実は個人の選択以上になってしまっているんですよね。

なるほど。「私はこうしたい」が、他の人に影響して、「この職場ではこうするのがいいこと」に拡大解釈されてしまうということですね。やはりここは少し離れたところから観察して、日本の生産性が低く、労働時間の割にGDPが伸びていないこと、ワークライフバランスがやはり悪いことを受け入れる必要がありそうですね。それほど遠い未来ではなく、透さんはこれからしばらくの間の生活で、どんな働き方を目指しますか?

Act locally、自分たちが目指す働き方


いい質問ですね。僕はやっぱり日本人の発想から抜けられないので、多くのオランダ人のように、夕方以降をゆるゆると過ごしているのは「もったいない」と感じてしまいます。でも、せっかくヨーロッパにいるので、ヨーロッパ人の働き方を、一度きちんと身につけたいという思いがあります。
 僕はスポーツや芸術にとても興味があるので、朝起きたら走る、朝9時から夕方5時までは仕事に集中、夕方から寝るまでは自分の好きな、「しあわせ探求庁」の活動に小説を書くこと、楽器を演奏することに集中する、という生活を送りたいと思います。美織さんはどうですか?

私もその点では透さんに似たようなライフスタイルを目指そうと思っています。仕事は、就業時間内に集中して頑張って、その後はプライベートな時間を大切にしながら、次に「社会に何かしら問題提起できる」と信じている「しあわせ探求庁」の活動に取り組みたいと思っています。仕事やしあわせ探求庁、プライベートや生活全てにしっかり力を入れて、味わいたいなと思います。先のことは分かりませんが、それぞれやりたいことを頑張っている状態が、今の私にとっては理想ですね。

珍しく意見が一致しましたね。たまに聞く、「仕事の能率を上げるために休む」とか「年に数回旅行するのを楽しみに、辛い仕事を乗り切る」という感覚ではなく、毎日の生活の中に仕事とライフワークを共存させて、日々が充実している状態を目指したいですね。
 アップル創業者のスティーブ・ジョブズの言葉、「今日が人生最後の日でも、あなたは今からしようとしていることをしますか?」ですが、今話したような毎日が送れていれば、この質問を聞いてもドキドキせずにいられそうです。

私も、以前は週末にだけやっていた「しあわせ探求庁」の活動を、平日にも時間を見つけてやるようになりました。 あとは、上京してからなかなか読めていなかった本も、最近は寝る前に数分だけでも読んでいます。「やりたいことには日々触れる」っていうのはいいですね。

そうですね、僕も例えば「週末にまとめて時間を取って小説を書く」とかではなく、毎日30分取り組むとか、そういう「日々の充実」を目指してやっていこうかなと思っています。

「仕事」の話題は、またお互いが次の人生のステージに上がった時に、改めて対話してみたいですね。

「 今ここで、しあわせを繋ぐ意味がある」〜 しあわせ探求庁でした✨
 また来週水曜日にお会いしましょう!
(2024年8月21日)

しあわせ探求庁|Shiawase Agency
  日本支部:成江 美織
  (miori @しあわせの探究
オランダ支部:佐々木 透
  (ささきとおる🇳🇱50歳からの海外博士挑戦
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