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西加奈子「Iアイ」世界の人々を思いやってもいい


西加奈子「Iアイ」を読んだのは又吉直樹
の影響だが、50頁くらいまではさほど引き込まれることもなく、不思議な小説だなぁと。
でも最後の50頁くらいは気が急いた。

同時多発テロ、東日本大震災、シリア内戦等々実際に世界で起こった悲劇、大惨事が語られる。そういう地獄のような世界に生きている人々のことを、豊かなこちら側でぬくぬくと生きている人間が憂う、思いやる。それって欺瞞
じゃないかと登場人物たちは思う、悩む。
西は、欺瞞だみたいに思わなくていいと言ってる。辛い人々のことを思いやっていいんだと。

かつての自分もいまの自分も、そんな心理を経験している。
ベトナム戦争が続いてるのにおれは受験勉強なんかしてる。阪神淡路大震災で人々が苦しんでるのにおれは平々凡々なサラリーマン生活を 
送ってる。ウクライナで人々が虐殺されてるのにおれは遊び惚けてる。
そんなふうに後ろめたく思わなくていいんだ。

文庫本巻末の又吉との対談で西は言っている。
今の自分の幸せを願う気持ちと、この世界の誰かを思いやる気持ちは矛盾しない。
それが言いたくて西はこの物語を書き、自分の半生を重ねながら私はこれを読んだ。
私は登場した彼らから学び、ちょっと解放され、自由になったかもしれない。

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