母となり母を思う
久しぶりに実家の母から電話がきた。
どんな夢かは知らないが、昨夜私の夢を見たとか。それで無性に会いたくなったらしい。
私も先日、娘の夢を見た。昨年の春から都内で、慣れないオンライン授業の大学生活を送っている。
娘が死んでしまい泣きついて名前を呼び続けている夢で、非常に寝覚めが悪かったので、起きて直ぐにLINEをした。
彼女の方が冷静で、昼過ぎになっても既読がつかず、夕方になってやっと返信がきて、
「そのような夢は良い夢であり、夢で一度死んだ人は、生まれ変わって新しいスタートをきる予兆であり、何かが変わる前兆であるから心配するな」と。まったく娘はそっけない。家では私の手伝いをすることのなかった娘だが自立したい思いは人一倍強く、少々世話をやきすぎる私を面倒くさがってもいたので、彼女にとっての一人暮らしは、どうやらコロナ禍においても快適で楽しいもののようだ。
それだけでも安心する。
母から電話がきた時、
「仕事が忙しいから実家にそんなに顔を出せない。そんなことで電話をしてこないでよ。」
と母を笑ったが、得てして私も同じようなことをしていたものだと胸が痛んだ。
忙しい。とにかく、忙しい。
いつだったか、母が知り合いから、お宅の娘さんはいい看護師さんになって、娘さんがいるから安心でしょう?というようなことを言われていた時、母は決まって
「娘なんて、看護師だろうが何だろうが、いたってあてにはならないものですよ。」
と返していたが、本当にそうだ。
母が検査入院をした時も、心配だから付き添って欲しいと言われたが、仕事が休めず結局行けなかった。
普段そっけない返事しかしない娘だが、夏頃真夜中に部屋にゴキブリが現れたと大騒ぎしてSOSを発信してきたことがあった。ゴキブリという生き物は初見だったので無理もないが、私自身は一人でパシンッ!と出来ちゃう人なので、後にこの時のことを
「まったく、都合のいい時ばかり親を頼って。」
と母にこぼしたら、
「あんただって同じようなもんだよ。都合のいい時ばっかでしょ。」
と言われてしまった。
なるほど。だとすると私の娘もなるべくしてなったのだと気付く。
会っていなくても何か楽しく元気にやってるのだろうと妙な繋がり意識と安心感があるが、穏やかに、本当に穏やかに時が過ぎていって、気づいたら会えなくなっていたってこともあるのかもしれないと考え出したら、2週間前に聞いた
「昨日あんたの夢を見てさぁ…会いたいよ~」
という母の言葉と声が忘れられない。
また都合のいい時にばっかりと言われるかもしれないが、世の中が落ち着いたら女だけ3世代でどこかに行けたらいいのにな。