チームに合わせたちょうどいい定期リサーチのかたち
この記事は UX Research Advent Calendar 2021の16日目です。
こんにちは、freee株式会社でデザイナーをしているkouです。freeeでは人事労務プロダクトのデザイン・リサーチを担当しています。
このnoteでは私のチームで実施している定期リサーチとそのメリットについて書いていきたいと思います。
定期リサーチを始めた経緯
私が所属しているデザインチームは6名のデザイナーで構成されています。それぞれのデザイナーは特定のモジュールにアサインされ、プロダクトマネージャー(PM)とペアになってプロジェクトを進めていきます。チーム内には専任のリサーチャーがいるわけではなく、モジュールごとのインタビューやユーザビリティテストなどのリサーチは担当のPMとデザイナーが一緒にリサーチしていました。
ユーザビリティテストの計画は施策の仕様検討やデザインの時に一緒に決めることが多く、デザインのスケジュールがタイトな場合、テストを組むのが難しい状況がありました。そのため社外のユーザビリティテスト実施できない場合もちらほら。
施策の検討が始まってから計画をするとどうしてもリクルーティングや準備に時間がかかってしまう。施策検討が始まってからリサーチを計画するのではなく、リサーチする予定を事前に設けてしまったほうがいいのではないか、そう考えて選んだのがデザインチームが実施する定期リサーチという形です。
1ヶ月周期で回すリサーチ
定期リサーチと聞くと、メルペイさんなどで実施されている毎週のリサーチをイメージする方が多いかもしれません。
freeeにはデザインリサーチチームはあるものの、ユーザビリティテストはデザイナーが担当しています。人事労務プロダクトのユーザービリティテストを専任で担当するメンバーはおらず、それぞれのデザイナーはモジュールを担当していたため、週次で実施することは難しいと考えました。
そこで私のチームではデザインチーム主導による1ヶ月に1回の頻度でリサーチする形をとりました。デザインチームで協力し合いながらリサーチを実施していく。1回では4〜5セッションのリサーチを実施します。モックアップを対象としたユーザビリティテストが中心で、必要に応じてインタビューを入れたり調整しています。計画から実査・分析までのスケジュールは4週間。スケジュールをもっとタイトに組むこともできますが、ほかのデザイン業務と並行してすすめるため余裕を持った計画にしています。
1ヶ月定期リサーチのメリット
定期リサーチを始めて約半年ほど経ちました。継続して感じたメリットは以下の3つです。
開発サイクルに依存せずリサーチできる
負荷が分散される
知識や経験を共有できる
1. 開発スケジュールに依存せずリサーチできる
想定していた通り、定期リサーチという形で毎月リサーチを事前に計画することで、施策の検討と並行してユーザビリティテストを実施する事ができるようになりました。さらに開発の予定は少し先だが、プロトタイプができたので先行してテストするという新しい動きも出てきました。
ゼロからテストの計画を行うと準備やリクルーティングに時間がかかり実施のハードルが上がりますが、実施するのが決まっている定期リサーチだと無理なくテストできる。リサーチを並行で走らせることで、開発スケジュールに関係なくテストを実施でき、余裕が生まれました。
2. 負荷が分散される
リサーチを行うためには、リサーチ全体のマネジメントや計画、リクルーティング、モデレート、プロトタイプ制作、発話記録など様々な作業が必要です。以前はPMとデザイナーがペアになってそれらをこなしてました。定期リサーチではチームでリサーチを回しているめ、それら役割をデザイナー間で分担しています。以前よりも一人あたりの負荷が分散されて、通常の業務と並行しながら実施できています。
またfreeeにはリクルーティング周りを専任で担当してくれるオペレーション担当のメンバーがいます。インタビューのアポイントやスケジュール登録などをしてくれています。ユーザーとのコミュニケーションには細心の注意が必要です。その部分を担当してくれるメンバーがいることで、デザイナーはインタビューの準備やプロトタイプ制作に注力できています。オペレーション担当のメンバーには感謝してもしきれません。
1ヶ月の周期でデザイナーチームが協力し合いながらすすめることで、忙しすぎず持続可能な形でリサーチができています。
3. チーム内で知見を共有できる
これまではPMとペアでリサーチを実施していたため、デザイナーが他のメンバーのリサーチに関するサポートがあまりできていませんでした。リサーチの実施経験の少ないデザイナーもいて、リサーチを実施すること自体に不安を感じていました。
定期リサーチはデザインチームが主導しているため、チーム全体で経験の少ないメンバーに対してリサーチの方法や手順をサポートしています。徐々にリサーチの経験を積むことができ、リサーチのノウハウをチーム内で共有できるようになりました。リサーチの知識や経験の共有だけでなく、リサーチに同席することで自身が担当していない機能やユーザーの課題を知る良い機会にもなっています。
副次的な効果として、定期リサーチを経験したことで他のプロジェクトでもリサーチを実施してくれたメンバーがいました。一度リサーチを経験すると実施プロセスに実感がわき、ほかのところでも実施できるという自信がついたようです。
チームにあったリサーチの形を模索する
freeeのデザインチームでは1ヶ月周期の定期リサーチを実施することで、負荷を分散させながら開発サイクルには依存しない形でユーザビリティテストを実施できています。チーム内でリサーチの知識も共有でき、他プロジェクトでのリサーチもつながっています。
リサーチは最初の一歩を踏み出すときのハードルが高いものだと思います。この取り組みによってリサーチがより身近な手段としてチームに定着できたと感じています。同じチームのデザイナーnagomuが実施した感想をnoteで書いてくれています。ぜひこちらもご覧ください。
明日のUX Research Advent Calendar 2021の17日目はi09sakaiさんが書いてくださるようです。お楽しみに!