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アンティークコインの世界 | スラブの読み方 NGC Ancients ネガティヴコメントとは
今回は表題の通り、NGC Ancientsのネガティブコメントについて紹介していく。英語表記であることやコインの専門用語であることも相まって、その言葉の意図が正直よく分からないと感じたことは古代コイン収集家であれば誰もが一度は経験しているのではないだろうか。そこで、今回はNGC Ancientsに見られるネガティヴコメントを解説したい。ネガティブコメントとはその言葉通り、グレーディングされたコインに対しての否定的な要素、すなわち欠点を示したものである。以下、筆者のコレクションから例をひとつあげたい。
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こちらはプトレマイオス朝エジプトで発行されたテトラドラクマ銀貨のNGC Ancientsの鑑定品である。Ch XFというのが米国式のコインの等級である。ChはChoiceの略表記で、1段階高い等級寄りである個体につけられる。本貨の場合はAU(準未使用品)寄りのXF(極美品)であることを意味している。AUの上にはMS(未使用品)という等級があり、最も状態の優れた個体にはこのMS評価が与えられる。XFの下にはVF(美品)、F(並品)、G(劣品)などの等級がある。Strikeは図像の打刻評価、Surfaceは表面の状態評価を示している。5段階評価で、Strikeは図像の打ちが中央にしっかりと打たれているかを評価しており、Surfaceは表面の摩滅具合や腐食等のダメージを評価している。これらの評価項目の下部に記されているのが、ネガティヴコメントである。
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本貨の場合は「overstruck」と記されている。これは既存のコインの上から図像を打ち込んだ個体につけられる。打ちが満足のいく仕上がりでない場合にもう一度打ち直したケースと、摩滅した古いコインを再利用して新たに打ち込むケースがある。
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赤で囲った部分に前の図像の痕跡が僅かながら確認できる。こうした痕跡はコインの評価を下げるものであり、ネガティヴコメントとして明記される。上記、具体的な例を紹介したので、以下ではネガティヴコメントの一覧を記載する。
bankers mark
当時の発行者が素材の確認や流通用の印として文字や模様をつけたもの。
crushed
潰されているもの。
clipped
エッジが工具で切り取られている。エッジを少しだけ切り取り、切り取ったコインは額面通り使用し、かき集めた破片で新たなコインやインゴットを造る犯罪が横行していた。
countermark
コインの識別記号。他国の貨幣を自国で流通させる際につけた模様。逆に流通が終わったことを示すため、廃貨につける場合もある。シンプルにMarksとも表記される。
deposits
銅などの付着物がついてる。銅貨と共に発見された個体によく起こる。
die shift
打刻ずれ。
double struck
二重打刻。
edge bend
エッジが湾曲している。
edge crimp
何らかの圧力でエッジにシワができている。
edge cut
エッジが切られている。
edge damage
エッジに傷がある。
edge filing
エッジが削られている。
edge mark
エッジに文字や模様など意図的な印がつけられた個体に対して与えられるコメント。流通用の目印ないし収集家が自分のコレクションであることを示すための印。
ex-jewerly
以前、宝飾品に使用されていた痕跡がある。
flan flaw
製造時の地金の欠陥。割れや凹みがある。
graffito
文字や模様等の落書きがある。具体的な意図は不明だが、収集家が自分のコレクションであることを示すためつけていた例がある。
lamination
表面の一部が剥がれていたり、分離している。
silvering
銀メッキ加工されている。
smoothing
傷を隠すために表面を人為的に滑らかにしている。
scratches
深めの短い引っ掻き傷がある。
scuff
範囲は広いが浅い擦り傷がある。
stress crack
ひび割れがある。
overstruck
既存のコインの上から図像を打ち込んでいる。打ちが満足のいく仕上がりでない場合にもう一度打ち直したケースと、摩滅した古いコインに新たに打ち込んだケースがある。
test cut
偽造品と疑われ、素材確認のために切られている。
wavy flan
地金が湾曲している。
wrinkled
シワがある。
以上、今回はNGC Ancientsのネガティヴコメントをテーマに取り扱った。スラブの読み方に対して抱えていた疑問や悩みが少しでも解消されたなら幸いである。また、購入を検討しているものやオークションで狙っているものがある際など、収集活動の参考となれば本望に尽きる。
Shelk 🦋