マークの大冒険 百年戦争編 | シャルル7世との密会
ジャンヌ・ダルクとリッシュモン率いるフランス軍は、その目覚ましい快進撃によりパテーの戦いで大勝利を収めた。その後も彼らは連戦を重ね、ついにランスへの道も開かれる。ジャンヌ・ダルク一行はランスまで進み、王太子シャルルはランス・ノートルダム大聖堂で念願の戴冠式を果たした。そんな喜ばしい出来事から、ほどなくしてのことだった。
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「これからは外交で穏便にことを済ませたい。それなのにジャンヌは攻撃一択で、こちらの立場が全く分かっていない。戴冠式までは良かったが、これ以上の勝手は正直迷惑だ。彼女の身勝手な行動で、これまで地道に積み上げてきた交渉が全て白紙になる危険性もある」
シャルル7世は、部屋の中を行ったり来たりしながら、落ち着かない感じで言った。
「そうだね。北部とボルドーの完全奪還が理想だが、互いにちょうどいい落としどころ見つけた妥協案が得策かもしれない。向こうも、きっとそれを望んでいる。結局、イングランドもフランスも元を辿れば、家族なのだから」
マークは落ち着きないシャルル7世を目で追いながら言った。
「ああ、だから兵も物資も充分に与えず、ジャンヌをパリに向かわせるつもりだ。そこで心折れてくれたらいいが。心苦しいが、それが彼女のためでもあると思う。現実を知って、できれば故郷に帰ってもらいたい。そこで相談なんだが、キミをジャンヌの見張り役として派遣したい。協力してくれるかい?もちろん、報酬は約束する」
「ああ、もちろんだ。引き受けよう」
「マーク、頼んだ。ジャンヌの暴走を止めてくれ」
「分かった。どんな方法であれ、一日でも早くこの戦争を終わらせよう。たとえ弱腰の外交政策と言われても、国民の命がひとつでも救えるなら、それが王の定めなんじゃないか?王の責務は国民を守り、国を継続させることにある」
「そうだ。ジャンヌにも、それを理解して欲しい。相手の立場になって考えてほしいんだ。だというのに、神のお告げの一点張りで、私の話に耳を傾けようとしない」
「お告げねぇ。でも実際の彼女は、自分が見たいものを見ているだけだよ」
「ああ、全くの同感だ。マーク、前金として報酬を少し先に渡しておこう」
シャルル7世はそう言って、マークの手のひらに数枚の金貨を差し出した。
「キミが言っていた状態の良い金貨を選んだ」
「助かるぜ。打たれた当時は、こんなにも綺麗だったんだな。最高鑑定も狙えるかもしれない。これできっと救われる人がたくさんいる」
「なら良かった。それで、キミはこの戦いが終わったら、どうするつもりなんだ?」
「国に帰るさ。やるべきことがある」
「そうか。でも、もし気が変わったら、その時は歓迎しよう。キミのポジションは用意している。実は今、常備軍の新設に向けて動いている。常備軍こそ、強さの秘訣。外交で戦争はなるべく避けても、抑止力としての軍は必要だ」
「かつてのローマ帝国の強さの秘訣は、常備軍にあった。臨時徴収じゃ、集まる兵士のレベルもそれなりってことさ。常設の職業軍人は、命令もよく利くし、訓練されていて戦闘力も高い。とはいえ、ローマは常備軍の維持費がネックになって、最期は崩れていったから、その扱いは容易くはない」
「分かった。それは考慮しておこう。礼を言う。我々は常備軍を新設した上で、武器や装備の統一化も図りたいと思っている。砲台をもっと生産して、砲隊を新設したい。そして、砲台の形状や弾の大きさを揃える。城壁の突破に砲台は欠かせないからね。砲台については、ビューロー兄弟に任せている。彼らなら、必ず私の期待に応えてくれるだろう。だが、その実現には税制改革が必要だ。国民から税金を今以上に取るには、彼らを納得させるだけの理由がいる。そしてそれには、三部会を開く必要がある。一筋縄では行かないが、常備軍の新設と税制改革こそがフランスが生き延びる道」
「間違いないね」
「オルレアンの奪還とパテーでの奇襲攻撃に対するキミの臨機応変な対応を私たちは高く評価している。だからキミさえ良ければ、軍師としてぜひ迎え入れたいと思っている」
「それは嬉しい誘いだね。帰れなくなった時は、マジでお願いするかもしれない。まあ、ボクは性格的に戦いには向いてないけどね」
To Be Continued...
Shelk 🦋