マークの大冒険 フランス革命編 | もうひとつのフランス史 退屈な仮面舞踏会
西暦18世紀末、ブルボン朝フランス王国_______。
豪勢な建物の中で、華やかに着飾った人々が賑わいを見せている。フランス貴族の間でも流行っている仮面舞踏会である。
人々は仮面をかけて変装し、踊り、飲み、談笑している。顔が隠れていることもあって、参加者は普段より少し大胆になることができる。そして、相手の顔が見えないというミステリアスさからスリリングな楽しみを享受することができるのだ。
そんな人々の様子をダンスホールの壁に寄りかかって眺めるルイ16世とマーク。二人はいかにも退屈そうな表情で、はしゃぐ王妃マリー=アントワネットと彼女の取り巻きを遠目から見ていた。
「マリー=アントワネットが好きだからついてきたが、僕はこういう場所は好きじゃない。落ち着かなくて、なんだか苦手だ。騒がしくて、頭が痛くなる」
ルイ16世は、神妙な顔つきでそうぼやいた。
「同感だ。ボクら根暗には、ちとキツイ場所だ」
マークが腕を組みながら頷いた。
「何が楽しいんだろうな、あんなに。本当に理解できないんだ。僕にとっては、ちっとも面白くない。狩りや錠前造りの方がよっぽど有意義だと思うが」
「ああ、ボクにも理解できん。読書と研究活動の方がよっぽど有意義だ」
「あれは誰だ?マリー=アントワネットと親しげに話している男は」
ルイ16世は目を少し細めた顔で、王妃と共に楽しげに話す男性を注視する。
「スウェーデン貴族のアクセル・フェルセンさ。ボクら根暗とは正反対の側にいる天性の陽キャさ」
「陽キャ?」
「明るくポジティブで、女子ウケのいい奴のことさ。おまけに顔もハンサムだしな」
「そうか」
「いいのかい?彼を止めなくて。王妃に親しげに話しかけていて、キミも夫として少しは複雑なんじゃないか?」
「いいさ、彼女が楽しいならそれでいい」
「キミは本当にお人好しだな。あれはきっと王妃を狙っているぞ。あの目は女を狙う狩人の目だ」
「そうか?」
「ルイ、キミは疎いな。そうに決まっている。王妃は美しい。誰だって男ならお近づきになりたいものさ。それもフランス王妃となれば尚更のこと」
「なら、それもまた運命。運命なら受け入れるさ。小さい頃からそうだった。僕は何ひとつ自由が利かない。だから運命として全てを受け入れる。それが王として生きる僕の処世術さ」
「おいおい、大国フランスの王の台詞か?まあ、だがとてもキミらしいな。キミは事実上、このヨーロッパ、いやこの世界の一位二位を争うほどの地位に立っているというのに」
「所詮、仕組まれた身分だ。望んだわけじゃない」
「ボクはキミの地位や富が羨ましいがね」
「僕はキミの自由や旅が羨ましい」
「なるほど」
「結局、ないものねだりってわけさ、マーク、僕たちは」
「そうだな、他人の芝生は青く見えるのかもしれない」
「それにしても、今気付いたが、ひどいなマーク。キミの格好は。なんなんだその仮面は?まるで空き巣みたいだぞ」
「へへ、なかなかイカしてるだろ、パリで買ったんだ」
「僕はパリは好かん。あの喧騒は堪ったもんじゃない」
「そうか?いろいろあってなかなかいいものだぞ。そうだ、今度お忍びでパリの街に出掛けないか?ボクが面白い場所に案内しよう。何事も食わず嫌いはよくないぜ。社会経験だと思って。よし、決まりだ。近々、キミを連れてパリの街を案内しよう」
To Be Continued...
Shelk 🦋