歩けよ、乙女。
ウォーキングを始めたのは、健康の為という切実な理由があったからだ。数ヶ月まえ、長年の友人と久し振りに会った際、少し歩いただけで息切れして座り込むという失態をしでかしてしまった。知らないうちに体力が地に落ちていたのだ。これはマズイ。マズイがいきなりスポーツジムに通い始めるのも怖い(笑)。引きこもり気味で社会性が極めて低い人間が、無理なく体を鍛えるには、歩くのが最も手っ取り早かったというわけ。
ここに住んで10年以上経つが、実際に歩いてみると、今まで知らなった場所がたくさんあることに気づく。細い路地に入って、そこに暮らす人達の静かな息遣いを感じたり…(怪しい人と思われないよう、歩みは止めないが)。年季の入った看板を味わい深く掲げている喫茶店や洋食店を思いがけず発見し、心のメモ帳にしっかり記録する作業も楽しい。
前と後ろに幼いお子さんを乗っけて颯爽と自転車に乗る、パワフルなお母さん方をたくさん見かける。こうした自転車の乗り方が危険だという意見も分かるが、私は日々頑張っておられるお母さん方にエールをおくりたい。
ビルが建ち並ぶ街中を歩いていると、意外に鬱蒼とした森があちこち点在していることに気付く。身近に緑を目にするだけで、緊張感がホッと緩むようだ。
お年を召した方々が元気に談笑されている横を、大股で歩くスーツ姿の男性陣。ゆっくり歩く私の横を走り抜けていく、お急ぎの様子の若い女性。皆さん、どこかに属していて、どこかに向かっていく場所があるのだ。1人であてもなく歩いていると、周りで流れる時間に取り残されたようにも感じる。
尤も、ウォーキングも40分を超えると、家に帰り着くまでにかかる時間やら歩数やらが頭を占めることになるので(笑)、ロッキーのテーマソングでも思い出した方がいいとは思う。
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