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絵しりとラーはかく語りき|日記
心から寛いでいる時にやりたくなること。それは「絵しりとり」だ。学生時代に頭おかしくなるくらいやっていたから、これはもう一種のクセみたいなものだ。
絵しりとラー(絵しりとりをやる人の意)には、レベルがある。見分けるポイントは2つ。
1つ目は「集中力」だ。集中力が無いほどレベルが高い可能性がある。大体授業中にやってるから。
2つ目は少し言いにくいのだが「学校の偏差値」だ。これは高くても低くてもいけない。ハイスペの絵しりとラーは、自称進学校の普通科クラスからよく輩出されている。
先日、夫と友人のオーガスタ&リリーの4人でのんびりしている時に絵しりとりがやりたくなった。誘ったら皆乗り気だ。私は生粋の絵しりとラーなので、(この中ではリリーが強そうだな)と心の中で思っていた。リリーが怒るかもしれないから、口には出さなかったけど。
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その時にいた場所がプールサイドだったので、プールの「ル」からスタート。
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リラックマ→マラカス→相撲とり→リャマ
ここまではウォーミングアップみたいなものだ。リラックマ怪しいけど。
次は「マ」から始まるもの。リリーが描いたのが下の2人組女の子。
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夫とオーガスタはどうしても分からずここでギブアップ。オーガスタは「ふたご」と思って一応「ゴリラ」の絵を描いたが、前の流れから繋がっていないのでアウトだ。
残酷なようだが、これは踏んできた場数の違いが生んだ結果だ。オーガスタは夢中になると周囲の音が聞こえなくなるほどの集中力を持っているし、夫は通っていた高校と大学の偏差値が格段に高い。社会的には素晴らしい彼らの才能も、絵しりとラーとしては不利な属性だ。
2人のパスは正確で優しかった。しかし、優しいパスが出来るからといって優しいパスがもらえると思ったら大間違いなのである。絵しりとりとは、全員が味方の競技ではあるが、同時に全員がライバルでもある。つまり、「全員を出し抜いてやる」という気概と「全て見抜いてやる」という覚悟が必要な世界なのだ。
話を戻す。夫とオーガスタの考えた「ふたご」という方向性は良い。あとはそこからもう一捻り出来るかだ。連想というスキルを使ってリリーの描いたふたごの絵を見て欲しい。
そう!これは、「マナカナ」だ!!!
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やるわねというリリーの顔。私たちは真のライバルになり得るかもしれない。私のターン。これでもくらえ、と描いたのはボール×5つ。中央のボールが大きく描かれていることから、周りの4つが残像だと推測することが出来ればもうお分かりだろう。このボールの軌道、「ナックルボール」しかない!
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ナックルボールを難なく受け取ったリリーは、「ルンバ」で返してきた。認識合わせを意図してか、このようなシンプルな返しでペースを戻してくるとはかなりの手練である。
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「バ」から始まる私のターン。普通の人なら「バッグ」と捉えるだろう。
しかし真の絵しりとラーは、シンプルな返しに対してシンプルで返さない。ライバルと認めたリリーなら私の意図を分かってくれると信じて描いた。そう、これはバッグではなく「バーキン」だ。
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リリーは見た瞬間にOKと即答した。戻された絵は、アフリカ大陸の中央だ。これはっ!奥義「ンジャメナ」!!!しりとり界におけるジョーカー的な存在だ。つまりリリーはあの絵をバッグではなく、「バーキン」と捉えてくれたということだ。正直こんなに熱い戦いが出来るとは思っていなかった。涙が溢れそうだった。こんなに近くに同志がいたなんて。
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感動の余韻に浸っている私は軽く「ナス」で返す。
リリーはVoみたいな絵のoの方を指してきた。しかし私にはすぐわかる。Vはインドを示していると仮定すると、oは「スリランカ」だ。
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そこから、カナダ → ダルマ(内輪ネタだけどスリランカ旅行中にお世話になった現地の方)→ マチュピチュと続く。
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そして、最後のスペース。ラストにリリーが描いたのは、謎の人物。
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私の手が止まる。何だこれは。どう見ても歌いながら踊っている人だ。
考えながら同じように動いてみる。
肘を曲げて上、下、上、下。わか、ちこ、わかちこ!うわぁ、これ「ユッティ」じゃん。
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最高の戦いを繰り広げた私とリリーはガッチリと固い握手を交わした。友よ…。
夫とオーガスタは信じられないという顔で私たちを見ていた。
授業を聞かずに絵しりとりをやっている学生諸君、私とリリーは最高の夢の舞台に立ったぞ。私たちはここで君たちが来るのを待つ。
仮に(別にそんな舞台立ちたくないな〜)と思うのであれば、悪いことは言わないので授業の方をきちんと受けておくのが吉だ。