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何も感じないという魔法|スリランカ滞在記
目を覚ますと、見慣れない異国の部屋。
一瞬ここがどこか分からなくなる。
私は今、スリランカにいる。到着して初めて迎えた朝。
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カーテンを開ける。昨日は見えなかったコロンボの街並みが目に飛び込んでくる。
本日は快晴なり。
カラッと晴れているという表現がピッタリだろうか。
日差しが強く気温も高いはずなのに、肌はサラサラと乾いている。
眠っている夫を起こすためにベッドに潜り込む。薄着の身体にすべるリネンのシーツが気持ち良い。
そんな二度寝の誘惑にもてあそばれながら、日本を発つ時の空港でのとある会話を思い出していた。
航空会社のチケットカウンターにて手続きの列に並んでいると、近くにスリランカ人とおぼしき男性たちが談笑している。
ふと目があったので私は軽く会釈をしたのだが、コミュ力の高きリリーは「お兄さんたちもコロンボ行くの?」と話しかけた。
彼らは「僕らは行かない。友達の見送りなんだ。」と、列の前の方に並んでいるお友達を指差す。「君らと同じ便だと思うから、困ったことがあったら聞くといいよ」と。
お友達もこちらに気がついて、会釈をしてくれた。優しき人たちだ。
見送りの彼は、出稼ぎで日本の自動車部品工場に勤めているらしい。
リリーがオススメの観光スポットやレストランを尋ねると、彼は嬉しそうにマップアプリを開きながら説明してくれる。素敵なコミュニケーションが出来ていいな〜と私は思う。
私もそんな風に会話してみたい、と何か質問を考えるもののとっさに出てこない。
やっとのことで捻り出した言葉が、
「スリランカって暑い…?」
口に出してから、思わず(浅っっっ!!!!)と心の中でツッコんだ。そりゃ暑いだろうよ、赤道付近なんだから。もっと気の利いた質問あっただろ。
しかし、意外なことに彼の返答がこうだった。
「暑くも寒くもない。何も感じない。」
なにも感じない。えっ、何も感じないってどういうこと?混乱して沈黙してしまった。
リリーのようには上手く話せない私。もどかしい。
それにしてもなにも感じないって、何かはあるだろ。天界なの??
めちゃくちゃ気になって仕方がないが、ここで自分たちの順番が呼ばれてしまった。
お礼を言って別れる。まさかスリランカ人に見送られて日本を発つとは思わなかった。
そして今。
私はスリランカで初めての朝を迎えている。
驚くことに、彼の言う通り本当に暑くも寒くもない。
快適なので深い睡眠をとることが出来て身体が軽い。最高だ。
彼の言ったもう1つの言葉「何も感じない」が頭をよぎり、その時ふと思った。
彼の言った「何も感じない」というのは、仏教国スリランカで育った価値観から生まれた言葉だったのかも、と。つまり彼は「心が乱れない良い気候だ」と伝えたかったのではないだろうか。
仏教を極めし者は、何事にも心乱されない境地へ辿り着くという。それこそが「何も感じない」
スリランカの気候を説明する際に、彼の中で母国の常識とつながっていたのではないか。
ま、私の勝手な妄想なのだけど〜〜〜〜!!!
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朝食はホテル内のレストラン。海と線路の見えるいい席。改めて、スリランカの料理はとても口に合うことを実感する。
朝からカレーもいけちゃう。美味しいから。
特に夢中になったのは、伝統料理のハーバルスープ。ココナッツミルクの濃厚さ&強めの塩味&ハーブの爽やかさ、革命的に美味しかった。ハーモニーすぎて2回もおかわりした。
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スリランカはかつてセイロン島と呼ばれていた国だ。セイロンティーのセイロン。
北海道よりも小さな国土で世界4位のシェアを誇る紅茶の産地。
日本に輸入されている紅茶の半分はスリランカ産なのだそうだ。
本場の紅茶をしみじみと味わいながら海を眺めていたら、1台のトゥクトゥクが停車しておじさんが降りてきた。
なんとなく目で追っていると、彼はズボンのチャックを下ろし海に向かっておしっこをし始めた。
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立ちションを見ながらのティータイムになってしまったが不快感はまったく無く、むしろ(開放感ハンパないやろな〜〜)なんて思う。
スリランカ滞在中の私は、こんなことでは心乱されないよ✌️
これも広い意味では「何も感じない」の境地だ。
スリランカの魔法を感じた、最高の朝だった。