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男女賃金格差是正のため「一般職の箱」を壊そう

こんちは!副業社労士まさゆきです。

世界経済フォーラムは6月12日、男女平等の実現度合いを示す「ジェンダーギャップ指数」を発表しました。日本は146ヶ国中118位、G7最下位です。賃金格差では女性は男性の78.7%、OECD平均の2倍近い格差です。私は、格差是正のため「一般職の箱」を壊すことを提案します。

【一般職・総合職の男女比率が賃金格差に与える影響】
日本には、一般職と総合職に分けて採用する「コース別雇用管理制度」を実施している企業が37.9%あります(労務行政研究所「人事関連制度の改定状況アンケート」2016年11月14~28日実施)。
総合職は、企業の幹部候補として営業、企画、開発、人事、総務や経理などの業務を行い、判断や責任が伴います。女性採用比率は低く22.2%にとどまります(「平成26年度コース別雇用管理制度の実施・指導状況」厚労省)。
一般職は総合職のサポートとして事務、管理、電話対応等定型業務を行います。女性比率が高く82.1%です(同上調査)。
厚労省「令和5年賃金事情等総合調査」によると35歳一般職/総合職の賃金格差は72.4%です。
賃金格差と「一般職/総合職の男女比」から計算すると、男女賃金格差△21.3%の内、コース別雇用管理制度の影響は△10%です。

【一般職の歴史】
一般職は昭和の働く女性「お茶くみが仕事、結婚相手を見付けて寿退社」今では考えられない女性差別から始まっています。
男女雇用機会均等法(1986年)で女性差別に繋がる「管理職・管理職候補の男性」と「サポート業務の女性」の区別が廃止され「男女別なく採用の総合職」と「女性のみの一般職」の区分となりました。
1997年の法改正により、「女性のみの一般職」も差別として禁止され、また、定型業務のIT化で一般職の業務量が減少・派遣社員への代替も進み、一般職廃止の動きが広がりました。
2000年代後半、働き方の多様化に対応するため一般職復活の動きが現れます。男女別なく採用する建前ですが、現在も一般職採用は大半が女性です。

【一般職・総合職の名称が男女格差に与える心理的影響】
「賃金格差や差別の歴史を考えればコース別雇用管理制度は廃止すべき」いえ、「一般職の箱」の居心地を女性が望む面があります。
「総合職はキャリアアップしたい人、一般職はプライベートを大事にしたい人」ならば「プライベート重視、責任なくそこそこの給与がある」働き方を望む人には「一般職の箱」は会社公認と感じられ居心地がいい。会社もそこそこの給与で満足してくれれば問題ありませんでした。

【環境変化が「一般職の箱」を壊す】
「一般職の箱」に3つの環境変化が起きています。
《環境変化》1は人手不足。女性戦力化が不可欠な今、現状維持を望む一般職は会社に不都合です。
《環境変化》2は残業規制強化です。プライベートのため一般職を選択する動機に「過度な残業を求められない」があります。残業規制が進めば総合職とプライベートの両立が可能になります。
《環境変化》3は定年延長です。長期間働く間に社員の事情も変わります。例えば、子育て時間確保のため一般職だった人が、子育て終了後「総合職で給与が欲しい」と心境が変化しても、今の制度では柔軟に対応できません。

《環境変化》1を解決するには「一般職の箱」を壊し、マインドを変えてもらうしかありません。
《環境変化》2と3は、「一般職の箱」を壊すか、総合職への転換を容易にするか、です。今の職務転換制度は①本人上司推薦②課題論文③面接と手続きが面倒で柔軟性がありません。人事弾力性を高めるため「一般職の箱」は壊すしかない。

【「一般職の箱」コース別雇用制度廃止案】
①別々の一般職/総合職賃金テーブルを統合する②採用時の職能グレードは配属される職務に則る③職能グレード降級も可能にする、ことが必要と考えます。

①賃金テーブルを統合しても、一般職は職能グレードの下位、旧総合職は上位に分布し住み分けられ問題ありません。②採用時に配属される職務の職能グレードを明確にする必要があり、ジョブ型雇用に近いやり方となります。

③コース別雇用制度廃止で、一般職は昇級しやすくなります。他方、職務グレード降級は個人の能力でグレードが固定されほぼ無い、現状は弾力的人事制度とは言えません。能力不足を降格する後ろ向きの降格でなく、社員の事情変化に対応した働き方を用意する、前向きな降級がイメージです。「昇給も降級も」人事弾力性のポイントです。
人事弾力性を高めるポイントは「職能=職務(職場での地位)遂行のために仕事で発揮すべき能力」と定義することです。仕事で発揮する能力のみを評価し、職能グレードも昇降させます。

コース別雇用制度を止める動きが出ています。2017年に明治安田生命や豊田通商、2020年に三井住友銀行などの大企業で一般職が廃止されました。「一般職の箱」が男女賃金格差を生む原因で女性活用の妨げになるという理由です。

ではまた次回

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