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【アップサイクル話vol.6】スピード乾燥でおいしいパウダーに!かくれフードロスの救世主

こんにちは!シェアシマ広報担当です。
食品ロスが叫ばれる中、実は私たちが普段目にしない「かくれフードロス」が膨大な量に上ることをご存知でしょうか?

この問題に真っ向から取り組むのが、ASTRA FOOD PLANの加納さんです。同社が開発した「過熱蒸煎機」は、わずか5〜10秒で食品を乾燥・殺菌し、新たな「おいしい」を生み出す技術。かくれフードロスを解決する革新的な技術とその背景には、どのような挑戦があったのでしょうか。

ASTRA FOOD PLAN 株式会社代表取締役社長 加納 千裕氏
埼玉県出身。幼少期から食に関心を持ち、女子栄養大学卒業後、食品業界でのキャリアを積む。榮太樓總本鋪や塚田農場プラスでの商品企画や開発を担当し、リブランディングも経験。2020年に過熱水蒸気技術を活用したASTRA FOOD PLANを設立し、代表取締役社長に就任。唎酒師資格を持ち、日本酒会を主宰するほか、バイオリン演奏も行う。

食品残渣をパウダー化!かくれフードロス解決の最前線

ー御社のアップサイクルな取り組みについて教えていただけますか?

加納: 当社では「過熱蒸煎機」という乾燥・殺菌装置を開発しています。この装置は、わずか5〜10秒で食材を乾燥でき、殺菌も可能で、量産性にも優れています。食品残渣や規格外農作物を粉末化することに非常に適しているんです。例えば、ビール製造時に出る麦芽カスや、外食チェーンで野菜の加工時に廃棄される端材をいわゆる「かくれフードロス」と呼びますが、これらをパウダーに変えることで、新たな価値を生み出しています。

小池: 非常に画期的ですよね。私たちシェアシマは、未利用原料の有効活用として、長野市静岡県と共に取り組んでいますが、このかくれフードロス問題の解決は、消費者や食品企業にとっても新しい視点を与えると思います。食品製造過程で出る端材や外食チェーンでの廃棄物問題は、普段あまり目に見えない部分ですから、こうしたアプローチがもっと広がるといいですね。

加納: そうなんです。例えば、ビールが売れ残ると消費者はそれをフードロスと捉えるかもしれませんが、実際にはその製造過程で麦芽カスが大量に出ることはあまり知られていません。このようなかくれた廃棄物をパウダーに変え、再利用することができれば、企業の廃棄コストを削減しつつフードロス削減にも貢献できます。

父の技術が教えてくれた可能性、かくれフードロス挑戦の原点

ーかくれフードロスに着目されたきっかけは何だったのでしょうか?

加納: 実は、この機械は最初からフードロス解決を目指して作られたものではありません。もともと私の父が「過熱水蒸気」という技術を長年研究しておりまして、400度前後の高温スチームを当てることで短時間で食品を加熱し、栄養・風味を保ったピューレに加工していました。しかし事業が頓挫してしまったため、その技術を基に、食品をパウダー状に加工する乾燥・殺菌装置「過熱蒸煎機」を開発しました。パウダーであれば、栄養価を保ちつつも常温で長期保存ができます。

こうして開発した「過熱蒸煎機」の活路を模索する中で、短時間で大量に乾燥ができること、風味や栄養価が残ること、他の乾燥機ではできない殺菌機能があることから、「もしかすると、この機械を活かす方法は食品残渣なのではないか?」という仮説が私の頭の中に思い浮かびました。実際に食品メーカーにヒアリングをしたところ、多くの企業がかくれフードロスに悩んでいることが分かりました。

小池: 食品業界において、乾燥する技術は、エアドライやフリーズドライがまだまだ一般的ですね。そこへ新たに過熱蒸煎機という技術が加わることは非常に興味深いです。この技術で新たな食品素材ができる事で、各メーカーが新しい素材を開発したり、食品残渣を有効活用できれば、食品ロス削減の新たな手法と商品開発の可能性も広がると考えます。

ーかくれフードロス問題について、具体的に教えてください。

加納: 例えば、漬物工場では一日5トンもの白菜の芯が廃棄されており、それに年間で数億円の処理コストがかかっていることが分かりました。ほかにも、大手外食チェーン・吉野家さんでも大量の玉ねぎ残渣が出ている現状がわかりました。こうした食品残渣をパウダーにできれば、廃棄コストを削減しつつ、新たな収益源に転換できます。吉野家さんとは「過熱蒸煎機」を活用することで、アップサイクルするプロジェクトを稼働しています。

小池: 食品メーカーの廃棄物は深刻な問題ですよね。弊社もその課題解決に取り組んではおりますが、特に白菜の芯など、私たちが普段あまり意識しない部分にも、まだまだ食べられる品質のものが多いですしね。それが捨てられているという現実を変えるために、こうした技術が役立つのは素晴らしいことだと思います。

タマネギぐるりこ®誕生秘話:外食チェーンと挑む食材アップサイクル

ー吉野家さんとのプロジェクトについて教えてください。

加納: 食品の製造工程で発生する玉ねぎ残渣をパウダー状にした「タマネギぐるりこ®」を開発しました。最初は業務用として企業向けに販売していましたが、最近では一般消費者向けにECサイトでの販売もスタートしました。アップサイクルフード市場をもっと拡大していくために、消費者にこの価値をもっと伝えたいと思っています。

小池: 「タマネギぐるりこ®」はシェアシマでも注目している商品です。消費者がアップサイクルという概念を理解し、それが美味しさや健康にも結びつくことを知ることで、食品メーカーが生産する商品の価値はさらに広がっていくと思います。私たちもシェアシマのプラットフォームを通じて、より多くの食品メーカーや消費者にその魅力を伝えていきたいと考えています。(シェアシマ商品ページ

ーなにか苦労や課題はありましたか?

加納: 資金調達は常に大きな課題でした。特に、私たちが開発した「過熱蒸煎機」は一台あたり1000万円以上するため、なかなか簡単に売れるものではありません。また、銀行からの融資を受けるには、過去の実績や市場規模が求められますが、新しい技術や事業の場合、売上や実績がまだないため融資を得るのが難しかったです。ただ、メディアに取り上げられたり、ビジネスコンテストで受賞実績を積んだり、またクラウドファンディングなどを通じて少しずつ知名度を上げていくことで、次第に周囲の理解が得られるようになりました。

小池: シェアシマでも、新しい事業を立ち上げた際に同じような課題がありました。特に、革新的な取り組みや未知の市場に挑戦する場合、資金が一番の壁になりますよね。ちなみに加納さんと初めてご一緒したのは、クラウドファンディング「CAMPFIRE」が主催するビジネスコンテストでしたね。その後、展示会の場でお会いして今に至りますね。

加納: 懐かしいです。確か2022年じゃないですか。その頃は「過熱蒸煎機」も特許がまだ取れていない頃でした。

食品業界の変革をリード!アップサイクル市場を拓く

ー今後の市場展開について、どのようにお考えですか?

加納: 「食べ物を無駄にしない」という考えに基づき、アップサイクル市場を拡大していきたいです。今後、業界全体でフードロスの問題に取り組む事業者との横連携を強化していきたいです。また、一般消費者向けのブランド作りにも注力し、まずは魅力的な商品を提供することで、新たな市場を作り、食品業界全体を巻き込む動きを促進します。シェアシマさんとも協業させていただき、新たなアイデアや商品を生み出す機会を創出したいです。

小池: 4,500名超のネットワークを活かして、私たちシェアシマは食品業界に新たな価値を創造していく使命があると感じています。同じ志を持つ人々とつながることで、相互に助け合い、影響を広げていける可能性があります。御社の数あるパウダーも、シェアシマ会員と何かしらコラボできると思い構想中です。価値観を共有できる事業者との協業を通じて、アップサイクルの市場を共に育てていけることを楽しみにしています。


今回は、食材をスピード乾燥・殺菌することで、新たな「おいしい」を生み出すチャレンジをしているASTRA FOOD PLAN 加納さんにお話を伺いました。「食材を無駄にしない」という同じ志を持つ企業として、今後共創の未来が実現することを願います!