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ツケをする小学生

太っているだけで温和に見えるこの私にも
苦手な人間ってのがいる。
それは私自身がまだまだ未熟な人間であるからなのだが、
恥ずかしながら苦手な小学生もいる。
それがツケのなっくんだ。

ーーー
なっくんが弊店に初めて来たのは当時小学4年生。
よく店に来てくれていた同学年の小学生が連れて来た。
店内にある当時2個100円の中華なんナン
(現在120円、この商品についてはいずれご紹介します)の
ポスターを見て、

「俺やったら1個50円にするな」

ーーー
2度目の来店時。
「サイダーいくらですか?」
「200円」
「高っ!」

ーーー
3度目の来店時
「さつまいもプリン見せてもらえますか?」
「はい、こんな感じ」
「小さっ!」

ーーー
4度目の来店は同学年の女の子を連れてやって来た。
なっくんは100円のかき氷(小)を注文し食べていた。


女の子は何も注文せず、なっくんを見ている。
「すみません、僕の連れがお金を持って来てないんですけど、どうしたらいいですか?」

ーーー
5度目の来店もその彼女とやって来た。
彼女は中華なんナンのチーズを注文したが、なっくんは注文しなかった。


「すみません、3円ツケって出来ますか?」
「はあ? どういうこと?」
「この10円の飴ちゃんをかいたいんだけど、3円足りないんです」
「わかったよ。3円ツケな」

ーーー
それから1ヶ月経ったが、なっくんは店に来なかった。

もうこれで来なくなったら来なくなったで、
こちらとしてはもういいのだけれど、
小学生とはいえ、3円とはいえ、
ツケを払いに来ないのは許せねえな。

ーーー
それから数日後、なっくんは現れた。
かき氷かなんかを注文した。
「ツケの3円払ってからや!」
と言いたかったのだが、
店が月に1回あるかないかの忙しさで、
ついつい言いそびれていた。
言えたのは、なっくんの帰り際。
「3円いつ払うねん?」
「3円? ああ、あれかあ。来月!」

ーーー
翌日、なっくんは3円を持ってやって来た。返しに来たのだ。

ーーー
なっくんはまた彼女を連れてやってきた。
彼女はドライチーズを注文したが、なっくんは注文しなかった。
「7円しかないなあ。また3円ツケにしようかなあ」
という声が聞こえて来た。
彼女に相談している。
またツケを言って来たら絶対に断ってやる。

「すみません、7円で買えるものないですか?」
「ない!」
「はやっ!」

ーーー
ツケのなっくんは常連である。
なっくんは違う女の子も連れてくる。
3円ツケのなっくんはこの店が好きなんだろうか?
 
こんな子が増えたら、世界から戦争なんて無くなるのになあって思った。
えっ? 違うか。

(らおばん)

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古本喫茶店主らおばん
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