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6.25 lyrical school@栄RAD HALL/テン年代アイドルシーンを主観的に思い返す〜2012 to 2022〜

ライフステージの変化に伴ってもうすっかりアイドルグループを追う気がなくなってきており、どれだけ楽曲派を気取っていたとしても疑似恋愛的な見方からは離れられなかったんだな、と自意識を問責したくなる。一方でとにかくここ最近の解散/活動休止の多さに疲れてしまったのもある。アイドルネッサンス、Maison book girl、sora tob sakana、ハマりかけたアイドルグループは次々といなくなった。


2010年代に訪れたアイドルブーム。白状すれば最初にももクロを聴き始めた頃はその明らかな物珍しさに興味を持つことがサブカルワナビーとしての姿勢だろうと思っていたのだが、その後はすっかり普通に好きになり、私立恵比寿中学に関しては生涯これ以上ないだろうというくらいにハマったアイドルグループとなった。地下から猛追した俊英、地方で起きる革命、感度の高い大人たちが目論むプロジェクト、様々なところからカウンターカルチャーとして生まれてくるアイドルたちはとてもユニークで、楽曲もクオリティが高いグループが多くて楽しめた。


しかしそれにしたって、バンドやシンガーと違って同じ形を保つ期間がとても短い。それこそライフステージの変化もあるしそこに否定的なわけではないのだが、心象としては寂しい、が勝る。わかっちゃいるけど寂しいのだ。Negiccoは全員結婚し活休状態、BiSはあっさりと解散してBiSHに化けBiSHももうすぐいなくなり、でんぱ組.incは半分以上が誰か知らないし、スターダストのグループだって同じ編成を長く保つことはない。その流動性も面白さの一つだろうが、この変化の多さに戸惑い続ける10年だった。自分は次々と推しを増やして生き長らえる、そんなドルオタではないのだなという確信を深めた。


lyrical schoolも7/24に現体制での活動を終えてしまう。このメンバーになった2017年から5年。流石になんというか、このままできっとうまくだろうと安心しきっていた折だった。2012年6月にtengal6からlyrical schoolに改名することを発表してから10年というこのタイミング、最も人気が拡大し始めていると思っていたのだがその内情は以下で明かされている通りでなんだか虚しくなってしまう。しかしラストツアーを敢行してくれるのは嬉しく、迷わずチケットを入手し最後の現リリスク目撃に向かった。


6月25日、参るほどに蒸し暑い栄の街を駆け抜けて辿り着いた栄RAD HALL。ソールドアウト、空調弱め、ものすごい湿度の中で15分遅れの開演時には待ち望んだ熱気が充満。キャッチーな「OK!」で掴み、新アルバムのタイトルトラック「L.S.」の目まぐるしい展開でリリスクとしての宣誓を決めてしまう。1人1人の見せ場を持たせるのはアイドルらしい自己紹介ソングとも言えるが、ゆらゆらと舞台を自由に動き回るステージングは完全にラップクルー。アイドルというよりラップクルーなのではなくアイドルでありラップクルー。間違いなくどちらもある。

「HOMETENOBIRU」のキュートなセルフボースト、不穏なバースとポップなフックがぶつかりあう「Bounce」、オリエンタルで妖艶だけど主題はフカヒレスープな「SHARK FIN SOUP」など、気鋭の作家陣が書き下ろした楽曲たちはどれもオントレンドでありつつリリスクを通すことで成立するものばかり。こうして1つ1つの楽曲を振り付けとはまた違う角度で動きと身体に馴染ませながら、堂々たるパフォーマンスに結びついていく。やはりアイドルシーンの中でも特別な成り立ちを感じさせる佇まいだ。

「YOUNG LOVE」以降は『L.S.』の終盤にあったシリアスかつセンチメンタルな歌モノを立て続けに披露。スローな歌運びと幻想的なトラックで歌われる「Find me!」、ギターロック的な疾走感も搭載した「The Light」などはこの曲で開花した新たな魅力だろう。現体制でもっと伸ばして欲しかった。ドライブ感溢れる「NIGHT FLIGHT」、新たなアンセムになったはずの「Wings」の涼やかな高揚感などこれを今の体制で聴けるのがあと数回だという惜しさで胸いっぱい。ラストツアーは複雑な気分になる。


ここで一旦仕切り直しとなり、第2部は「ユメミテル」から始まりアッパーなパーティーチューン多め。切ないのは確かにそうなのだけど、やっぱりワクワク感が勝る曲ばかり。とはいえむしろそういう曲が炙り出す寂しさもあるわけで感情がぐちゃぐちゃになってくる。しかしグループのディーヴァであり7月以降もリリスクに残るminanの歌声がたおやかに心揺らす「LALALA」を聴いているとminanがいることで続いていくリリスクのこれからも信じれる気がする。彼女が残すリリスクの可能性、如何に。

そして4人の勇姿をもっと焼き付けたくなる。久しぶりにサビに振り付けがついた「Pakara!」はyuuのダンスの鋭利さに見惚れる。元々ダンサーであった彼女の本領発揮、またそれをいい意味でゆるく崩す<山頂まで一直線>のキメに骨抜きにされる。そしてライブ定番の「DANCE WITH YOU」の爆発力!この曲は<心変わりの相手はhimeに決めなよ>というワンフレーズを放つhimeにやられる。前半はサングラスを外さずにクールにキメていたが後半では抜群のラップスキルに眼力も加わり無敵であった。

「LOVE TOGETHER RAP」のキュートな弾けっぷりはリリスクで最もアイドルシップを体現してきたhinakoの独壇場と言えるだろう。彼女がワームホールとしてアイドルシーンと接続してきたからこそリリスクはしっかりアイドルとして評価されてきたのだと思う。一転「LAST DANCE」で目を奪われるのはドロップでyuuとともにストリートすぎるダンスを披露するrisanoで、彼女のキャラのアイドルシーンとのギャップもまたリリスクをフィメールラッパー集団としての異なる評価軸に持っていったように思う。

ここでこの日最古の楽曲「FRESH!!」が歌われた。前体制の楽曲で、今よりもっとアイドルラップというギャップを売りにしていた頃の曲であり<ラップをするのは楽しいです!>という掛け声で始まるのもどこかそのイメージの乖離を楽しんでいるように思えていた。リリース当時リリスクにあまりハマらなかったのはそのワンジャンルに絞ってギャップをアピールする感じがちょっと狙いすぎだったからなのだが、今となっては“ラップをするのが楽しい*という思いが芯から届けられる言葉として胸を打った。


そんな風に経験値がそのままポジティブなフィーリングに繋がるという健康的なスタンスで邁進してきたリリスクが「バス停で」で歌う<一寸先は案外なんもない>というリリックの勇敢さには打ち震えた。5人が横並びでステージを踏みしめながら歌うサビの眩しすぎるエネルギー。ハイライトだった。その流れでもうクライマックスに運んでいいものを長めの他愛もないお喋りというかMCで一旦緩めていくのもまた良い。名古屋の話をしていたのにすぐにアメリカの話に行ってしまうrisanoが面白すぎた。

残り2曲を告げ、「Bring the noise」が歌われる。ラップスキルやカッコ良さ、というよりもたまらない多幸感が押し寄せるこの曲だが、リリックの全てが今この瞬間を惜しんでいるように聴こえてくる。<泣いちゃいそうになるんだ/PerfectすぎるBaby>なのだ。そしてエンドソングは「LAST SCENE」。これはアイドルが別れを告げる1曲としてあまりにも完璧だろう。<どんでん返しより愛とかピース>を求めるのはリリスクの着実な歩みが言語化されたものだろう。文句なしのラストトラックであると思う。

やはりスペシャルなアイドルグループであると思う。容赦ないスキルの応酬と、それをチャーミングに魅せていくアウトプット力。このどう観ても圧倒的でエキサイティングなステージはこの5人のキャラと声、ルックとテクニックの奇跡のバランスによって成立していたのだと思う。テン年代、突出してきたアイドルは刹那性も込みで輝いていたように思うがリリスクの放っていた光はどこか永遠にこの時間が続けば、、と思わせる力強く温かなものだったように思う。そんな願いは叶わなかったが、もしかするとまた次に現れるリリスクが同じように、いやそれ以上の何かをくれるかもしれない。形は変わっても魂は潰えぬ。これもまたアイドルの特別さか、、、

<setlist>
1.OK!
2.L.S.
3.HOMETENOBIRU
4.Bounce
5.SHARK FIN SOUP
6.YOUNG LOVE
7.Find me!
8.The Light
9.NIGHT FLIGHT
10.Wings
11.ユメミテル
12.LALALA
13.Pakara!
14.DANCE WITH YOU
15.LOVE TOGETHER RAP
16.LAST DANCE
17.FRESH!!!
18.バス停で
19.Bring the noise
20.LAST SCENE


最後に載せるのは初めてリリスクを観た、博多どんたくミナトライブでの撮影可写真。この日が無ければきっと今に辿り着いてなかったと思う。


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