![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/50745575/rectangle_large_type_2_7695a179d113f68a3953f827930c8d6f.jpg?width=1200)
2021.04.24 リーガルリリー 「the World Tour」@福岡DRUM Be-1
1年前、コロナ禍で最初に吹っ飛んだのが春の全国ツアーだった。あれから1年、危うい局面であったがなんとか開催できた本公演。ライブハウスで観るのは2年ぶり、カネコアヤノとの対バン以来だし、福岡では初のワンマンライブだ。開演に間に合わなそうで天神を猛ダッシュした末に、30分開演時間を見間違えてきたことに気付いてライブ前にへろへろになってしまったけれどそんなの関係なくなっちゃう程に、期待を上回る素晴らしいライブだった。
SEのHexstatic&ギターベイダー「Perfect Bird」がかかり、3人がセッティング。ライブは、レコ発が中止となった昨年のメジャー1stアルバム『bedtime story』の1曲目「ベッドタウン」から幕を開ける。静と動を一気にスイッチングした後、アルバム通り「GOLD TRAIN」へとパス。1年越しのレコ発のような気分だ。1年間聴き続けた音源が肉体化していく様を目撃できるという、現場ライブに行く意味をこの上なく実感する瞬間だった。
音源の時点で気づいていたが『bedtime story』の楽曲たちはBPM面でも曲調の面でもライブ構成に多彩さを与える。「林檎の花束」の軽快な四つ打ちがギアをあげる様は、これまで観た彼女たちのライブにはなかったオープンさがあった。そして曲の繋ぎ方にも拘りが見えた。古くから愛されてきた「ぶらんこ」がシリアスに場を引き締め、間髪入れずに「スターノイズ」のエッジーなカッティングが鳴り響く。ラウドな質感を保ったまま最新曲「地獄」で破壊衝動をぶつける、、、心が浄化されるかのような爆音の畳み掛けだ。
オルタナティブなギターと大きなビートで誕生を描く「1997」以降は、たかはしほのか(Vo/Gt)のライフストーリーをなぞっていく。ナイジェリアの風とホタルイカの素干しが彼女の生きてきた街へと繋がっていく「東京」を神秘的な疾走感で届けた後、打ち鳴らされるビートで予告される代表曲「リッケンバッカー」。音楽との邂逅を描く1曲をこの並びで聴くと更に物語が広がったように思えてくる。この一連が"どこへも行けなさ"を綴る「トランジスタラジオ」で括られ、2021年の世界を示唆する構成で見せたのも見事だった。
たかはしの横揺れが印象的な「まわるよ」が軽快な小休止をくれた後、MCへ。いつも思うが、ライブ中の骨太な演奏に反してMCのまったり感にクラクラしてしまう。カネコアヤノ対バンの打ち上げで、たかはしが開発したゴマまみれ豚骨ラーメンをアヤノ氏がドン引きしていた話など、さっきまでの強烈な時間がどこか遠くへ飛んでいくかのような心地になってしまう。ところが演奏に入ってしまえば先ほどまでの空間へと引きずりこんでしまう。セカオワのカバーですら、ワンマンライブの本編に自然に溶け込ませるのだ。
メジャーデビューシングル「ハナヒカリ」が涼やかに鳴らされた後、ラスト2曲はじっくりと聴かせる。「高速道路」は真っ青な照明に沈んだステージの中、切々とした声が零れ落ちていく。轟音の海に漂った後、「全て、正しいと思います」とたかはしが語る。僕らの道、彼女たちの道、その交差がこの瞬間であり、その選択を正しいと伝える。この状況下でかなり慎重に発された言葉だろう。プライベートな想いを世界へとそのまま結びつける歌詞を多く綴る彼女ゆえ、『the world』をコロナ禍に残したのも並々ならぬ思いなはず。静かに滾り、粛々と演奏に込める。その姿の先にあった強い言葉だ。
本編ラストはインディーズ最初のリリース作のボーナストラックに入っていた「蛍狩り」。ポエトリーリーディングをまじえ、僅かな光を追い求め続けるような祈りの1曲。熱いメッセージを謳うわけではないが、確かに今この瞬間に刻みたい曲ばかりだ、と思った。アンコールでは、爆発的な演奏で魅せる「はしるこども」で駆け抜けきってエンド。どこまでも純粋に音楽と同化し、光のように目前を過ぎ去った100分間。分断さえも綺麗にコーティングし、躊躇いなく偽りを続ける世界の中でこんなにも紛れもなく音楽であるものを目撃するとその眩しさに目がくらみそうになる。また出会いたい光だ。
<setlist>
1.ベッドタウン
2.GOLD TRAIN
3.the tokyo tower
4.林檎の花束
5.ぶらんこ
6.スターノイズ
7.地獄
8.1997
9.東京
10.リッケンバッカー
11.トランジスタラジオ
12.天国
13.まわるよ
14.天使と悪魔
15.ハナヒカリ
16.高速道路
17.蛍狩り(さようなら)
18.はしるこども
#音楽 #ロック #邦楽 #ライブ #ライブ日記 #イベントレポ #コラム #エッセイ #音楽コラム #バンド #リーガルリリー