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ハイバイをAmazon Primeで観た(ヒッキー・カンクーントルネード/ヒッキー・ソトニデテミターノ/おとこたち/投げられやすい石)

岩井秀人率いるハイバイの過去公演がAmazon Primeの日本映画NETで9/30まで配信中。山口でのハイバイ公演を断念したので、その公演日に配信中の作品から4本の感想を。いつか現場で見てみたい劇団、現時点でベストワン。

ヒッキー・カンクーントルネード

2003年に初演された第一回作品で2010年に上演された6度目の再演版。岩井秀人が実際に引きこもりだった時代の経験を基に作った作品で、ここから全てが始まったのか、となるジ・オリジンを感じた。世界と対峙することの恐さと警戒心が岩井自身の身体の通して再構築されていて、演劇的な滑稽さの奥にしっかりとリアリティが見える様が凄く良かった。なぜ引きこもるのが悪いのか、引きこもらなくなるのが良いことなのか、という根本的な問いとも向き合った作劇だった。個人的には「子供はわかってあげない」の"な"こと坂口辰平さんの若き日を観れて嬉しかった。ハイバイの団員だったのか。



ヒッキー・ソトニデテミターノ

2012年に書かれた「カンク―ントルネード」の続編。観れるのは2018年の再演で、こちらも岩井秀人自身が自分を投影したキャラクターを演じる。作品内での経過時間も相まって、更に多角的/多面的に社会問題としての引きこもりを描くことに挑んだ作品。笑える場面も多いけどヒリヒリしてる。自分の仕事と切り離せない側面のある施設のことが描かれるので、この怖さというのは常に意識しておかなきゃいけないと強く思う。しかし黒木香織(チャン・リーメイ)というキャラクターのズレ方はよく撃ち抜いてるというか、一歩間違えばああいう力技しか出せなくなる福祉の人ってのはいるのだよな、、



おとこたち

2014年初演作品の2016年再演版。4人の男の24歳から82歳までの人生を描く作品。これは去年の「いきなり本読み!」で扱われていてものすごく観たかった作品。この中に出てくる、「玉」と新興宗教のくだりが衝撃的だったけど、それ以上に等しく訪れる"老い”への視座が虚しく寂しかった。あと"子供の手品"のくだりは実演映像として観ると辛みが倍増する。2時間で60年近い時間経過を描きながら、その立ち行かなさこそを抱きしめながら生きるほかない。ラストに差し掛かって明かされる1つの構造上の事実が物凄く刺さった。そしてCHAGE and ASKAの「太陽と埃の中で」はリフレインし続ける。


投げられやすい石

2006年初演作品の2011年再演版。ここまで3作が実体験や実話をベースにしているのに対して完全創作のよる作品。美大生時代に天才と持て囃された佐藤、彼と数年後に変わり果てた姿で再開する友人・山田を軸とする話。”才能がある"という言葉は呪いにも変わる、その最果てまでを描いた苦しい作品だが観てる側は笑うしかない、笑って観るしかやってられなくなるのだ。そしてハイバイ作品には頻出の"カラオケ"が最大級に重要なシーンを担う作品でもある。歌を歌うというフォーム1つとっても、意味が多層的すぎるのだ。そして4作に共通する出演者、平原テツの最大級の不気味さも目撃できる。


日本映画NETではその他にも去年noteに感想を書いた「て」と「夫婦」も配信されており、この4作と並べて観るとすごく完結作としての意味合いが色濃くなったように思う。森山未來、前野健太とのユニットで子供たちの作った物語を作品化する「なむはむだはむ」のドキュメント作品も面白かった。


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