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これは心臓のドラマだ~2021.04.03 私立恵比寿中学「Best at the moment series 6VOICES」@福岡サンパレス

私立恵比寿中学、久しぶりの全国ツアーが開催。年始に新メンバーオーディションが決定し、このツアーは現在の6人体制でのラストツアーになることも事前にアナウンス済。6人になってからは3年だが、そもそもこのメンバーに至る基盤としては2014年からの8人体制があり、この時期にエビ中にハマり倒した身としては一つの時代が終わる、という気分。そんな感慨を胸に観たこのライブ。メンバー6人それぞれがメインの立ち位置になる楽曲を3曲ずつ披露するという、あまりにも集大成的な構成を持った重大な公演だった。

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1番手は出席番号12番・中山莉子。パンチのある突発的なキャラクターが魅力の最年少、この公演のオープナーに相応しい。「オメカシ・フィーバー」の賑やかさの中で抜群にキレたダンスを舞い、「制服“報連相”ファンク」でもインパクトある歌唱を投げる。トリッキーなナンバーを軽々乗りこなすし、りったんの爆発力は6人体制でより威力を増したように思う。「放課後ゲタ箱~」での規格外の暴れ方もとても頼もしかった。新体制では最年少じゃなくなる可能性も多いにあるし、先輩として何を放つか楽しみでならない。


4~6曲目は出席番号11番・小林歌穂が中心の楽曲。「感情電車」は彼女のたおやかな歌声が眩しく漂い続ける名曲だ。続く「SHAKE!SHAKE」ではアッパーな曲調の中で柔らかなハイトーンが光る。そもそもの声質もあるのだろうが、歌声の包容力という点でぽーちゃんのボーカルはエビ中楽曲を温かく仕上げるのにあまりにも重要。それでいて、コミカルに癒しももたらすのだから、これからもずっと自然体こそ美しくあるはず。「EBINOMIOCS」では英語Voを口パクでパワフルに披露。この役はやはり彼女であって欲しいなぁ。


7~9曲目は出席番号10番・柏木ひなたがメインボーカルを取る。「手をつなごう」のアカペラにまず震える。ずっと凄いが、ここ数年は更に磨きがかった逞しく流麗な歌声。「I'll be here」は、他の楽曲と比べても異質な1番サビまで全てひなたが担当。絶対的な信頼を置かれる、エビ中楽曲の中核を成すボーカリストだが「紅の詩」では表情豊かな演舞も魅力的で、そのアイドルステータスは敵なしだ。楽しいキャラクターでありつつ、ブレずに美学を保ち続けた彼女が居たからこそエビ中を推し続けられている。感謝が溢れる。


10~12曲目は出席番号7番・星名美怜が主役を張る。そうでなくても、他の追随を許さぬキラキラオーラを(ここ数年は私立大学の世界を通過したイケイケな空気も)纏うパフォーマンス面の花形だ。なぜか2サビで一人だけ中心にいる「未確認中学生X」など、過去曲にもその存在感は潜在。「PANDORA」ではラウドロックをガーリーに泳ぎ、「藍色のMonday」ではテクノポップをアイドルらしく体現。騒動のイメージもあったけどここ数年はそれすらカラーに。後輩たちにどんな影響をもたらすか、やっぱワクワクしちゃうよ。


13~15曲を担当する安本彩花は現在、病気療養中。こういう状況であっても、6VOICESと名付け、紛れもなく彼女がメンバーであることを刻み付けるライブだったのも印象深いし、エビ中を信頼できる点だ。彼女がラップパートを全て担う「熟女になっても」の高揚感、シンプルだから力強いギターロック「君のままで」、そして剥き出しの叫びが突き刺さる「ジャンプ」。様々な引き出しで楽曲世界と一体化するボーカリストで、やはり居てもらわなくては、と思う。無理せず、優しく楽しい彩ちゃんのままで、いつか。


16~18曲目はエビ中、ただ1人のオリジナルメンバーである真山りかがメイン。スタンドマイクによる歌唱が印象的な「愛のレンタル」ではどこかやさぐれた、大人っぽい歌声を披露。初期曲「禁断のカルマ」でクールで艶やかに幻想的な世界を締めくくる。「春の嵐」では凛としたボーカルで神秘的な音像に輪郭を与える。完成と洗練を繰り返すような、抜群にパワフルな歌声と小さな体躯をキビキビ動かすキャッチーさはエビ中そのもののよう。エビ中の生き字引きとして、新メンバーをその歴史の延長へと導いて欲しい。


ここまで18曲、MCを一切挟まずに100分間。これは尋常ではないバイタリティだと思う。前回の結成10周年ツアーもほぼMCナシだったが、中盤の楽曲の中でMCを設けていた。3曲が終わるごとに次の主役を告げるVTRが流れる数十秒でフォーメーションを整えていく、これが6人のエビ中の到達点であり、これ程のレベルのグループに新メンバーがどう対峙していくのか、その点には正直不安がある。全く違うグループへと変革されていく、という覚悟を改めて想った。新メンバーを軽い起爆剤的に捉えていた自分を恥じた。


久しぶりの飛行機搭乗にまつわるゆるいエピソードトークで和んだ後は、ラストスパート。日替わりであるこのセクションにはセンチメンタルな2曲が選ばれた。美しいボーカルの折り重なりはエビ中史上最高傑作だと思われる「星の数え方」、これもまた6人だから出来た楽曲だったように思う。また、「まっすぐ」は8人体制のラストシングル。不在の3人の立ち位置をそのままにしたフォーメーション、やはり泣けて仕方なかった。ここまで、どれほどの困難があったか。その長い旅路とそこに居ない松野莉奈を思って俯いた。


最後に披露されたのは「これからも大事にしていきたい曲」という触れ込みで披露された「イエローライト」。<最高だって笑うため/わたしは足踏みしたりするんだ>という言葉は安本へのメッセージでもあり、新メンバーを迎えるこれからのエビ中の心を解きほぐす歌詞だとも感じた。黄信号を意味する題は焦りというよりも、落ち着いて足元を見つめ直すような優しい声かけのように思う。全力でかっ飛ばしてきたこの数年の延長上にこれから新メンバーとともに描く未来があるのだと強く思える、愛おしいエールソングだった。


新曲にこれからの決意表明が滲む一方で最後のMCで柏木が語った、6人のエビ中に懸けた思い、2018年1月の6人お披露目公演を越えることが出来なかったという悔しさを剥き出しで吐露する場面は立ち尽くしながら観てしまった。複雑な思いを胸にしながらも、エビ中がエビ中であり続けるために新たな一歩を踏み出す。「ジャンプ」における<これは心臓のドラマだ>という一節がこだまする。人と人が集まり、エンターテイメントを創出することの痛みと幸福が今のエビ中には同居している。ずっと、見届けなければならない。

<setlist>
1.オメカシ・フィーバー
2.制服“報連相”ファンク
3.放課後ゲタ箱ロックンロールMX
4.感情電車
5.SHAKE!SHAKE!
6.EBINOMICS
7.手をつなごう
8.I’ll be here
9.紅の詩
10.未確認中学生X
11.藍色のMonday
12.PANDORA
13.熟女になっても feat.SUSHIBOYS
14.君のままで
15.ジャンプ
16.愛のレンタル
17.禁断のカルマ
18.春の嵐
-MC-
19.星の数え方
20.まっすぐ
21.イエローライト(新曲)

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