2021年4月に観たライブ(サニーデイ・サービス/ROTH BART BARON/尾崎世界観/小山田壮平)
4.4<サニーデイ・サービス TOUR 2020>振替公演@福岡DRUM LOGOS
昨年の傑作アルバム『いいね!』を引っ提げてのツアーがほぼまるっと1年間延期。オールスタンディングがメインの会場に敷き詰められたパイプ椅子、今回は完全なる着席鑑賞。サニーデイなんでまぁゆったりじっくり観れる感じか、なんて思ってたのは大きな誤算だった。当然、グッドメロディと美しい日本語が煌めくような歌を優しく聴かせる場面も多いのだけど、座って観てられないくらいにとんでもないロックンロールを浴びせられる夜だった。
そのとんでもなさを感じたのは中盤。「春の嵐」からの3曲。『いいね!』屈指の疾走感を誇る「春の嵐」を荒っぽく叩きつけた後、孤独の夜と静かな朝を静かに温める「コンビニのコーヒー」。これ原曲はそんな風じゃないのだけど、ライブだっと腹の底から絞り上げるように歌うのだから興奮度高め。更に、終盤のセッションでもはや原型などのないノイズショーへと展開される「セツナ」を続けざまに繰り出すのだからもう拍手が鳴り止まない。ただ、ひたすらに鳴らしたいままに轟音を塗りたくる、恍惚の時間だった。
新ドラマー・大工原幹雄は今のサニーデイのエンジン、これは間違いない。雷みたいな音がしたよ、太鼓から。田中貴(Ba)のなだらかなベースプレイは堪らなく心地よく、座って観ながらもゆらゆら体を揺らしてくれる。そして曽我部恵一(Vo/Gt)の剥き出しなその姿にはいつも惚れ惚れする。着の身着のまま、歌いたいままに作品を作り、人前で歌い、生活し、また歌う。この営みがどれくらいの人を勇気づけてるだろうか。ずっと歌い続けて欲しいな。
4.6 ROTH BART BARON「TOUR 2020-2021”極彩色の祝祭“」@福岡voodoo lounge
2020年を刻み付けた傑作『極彩色の祝祭』のライブツアー。ステージ上に並べられた楽器の数々にまず驚く。7人編成のロットに惚れきってからというものの、この機材を眺めながら一体どんな音が飛び出してくるのか、わくわくしてしまう。アルバム同様「Voice(s)」から幕を開け、『極彩色の祝祭』がライブ仕様に花開いていく。冒頭4曲において1曲たりとも同じ楽器の組み合わせだけで成された曲はなくその豊かなグルーヴにくらくらし続けてしまう。
猛烈な躍動感が押し寄せる「春の嵐」から、パーカッシブなセッションで限界まで肉体をうねらせる「TAICO SONG」、ミニマルな編成で繊細な響きを与える「焔」と「ヨVE」など、曲調も構成楽器にも無限に可能性を広げながら進行していくこのライブ。見たことのない形状だったり、三船雅也(Vo/Gt)の体躯と比するとあまりにも小さいサイズにギターだったり、目にも楽しい音像たちはまるで別次元から現れたかのような不可思議な質感が伴う。
これまでロットを観たのは大雨のミュージックシティ天神だったり、少し寒い秋空の野外だったり、真冬のライブハウスだったり、とにかく冷たい気候がセットに紐づいていて。その神秘的で張りつめた空気感を際立たせていた記憶もあるのだけど、今回は春風が少し温かな4月の公演。『極彩色の祝祭』はこんな時代であっても己の物語を刻み、生き進むことを鼓舞する1枚であり、この芽吹きの季節にライブで観ることはとてつもなく意義深かった。1年前と同じく、「生き延びて逢いましょう」と言ってくれたこと、忘れない。
4.23 「尾崎世界観の日 全国ツアー」@福岡ももちパレス
クリープハイプのギターボーカル尾崎世界観の弾き語りライブを今年はツアーとして開催。開演後すぐに「世にも奇妙な物語」のテーマ曲(ガラモンソング)が流れて、船出門出なるギターとドラムによるインストバンド(正体は小川幸慈と小泉拓)が登場したのにはびっくりしたけど、これも恒例のゲスト枠として踏襲されたもの。こういうこだわりが行き届いているのが彼らしい。
クリープハイプも年に1度はだいたい観てたバンドなので、彼の歌声を聴くとあぁ帰ってきたなぁ、、という気分になった。そして彼の歌声を剥き出しの状態で聴く機会は地方では貴重だ。バンドの楽曲はどれもぐっとテンポを落とし、言葉を噛み締めるように歌う。最新曲「四季」はリズムの切り替えもしっかり再現して多彩な歌声を響かせていたし、音源では打ち込みが印象的な「5%」や「キケンナアソビ」は様相をガラリと変えたアプローチ。かなりリラックスした空間だったけど、ぼーっとは聴けない鋭さがあった。
存在すら忘れかけていた尾崎世界観 責任編集の雑誌「SHABEL」の特典CDからの「喋る」「風邪をひく日」や、YUKIに提供した「百日紅」、SMAPに提供した「ハロー」など、穏やかな楽曲たちが終盤を埋め幸福な心地に。ラストは急遽披露された新曲に驚き(何といってもがっつりラップ詞、"ナイトオンザプラネット"なんて固有名詞も飛び出す新鮮な歌)、「イノチミジカシコイセヨオトメ」の絶唱でエンド。声の掠れ際、声の去り際まで堪能できる繊細な時間。序盤に拍手の間合いを少し置かせてくれた意味がよく分かった。
4.28 小山田壮平バンドツアー2021”THE TRAVELING LIFE”@ Zepp Fukuoka
昨年の1stアルバム『THE TRAVELING LIFE』を引っ提げての全国ツアー、地元凱旋公演。4人編成で廻っていたが残り2公演を前にギタリスト濱野夏椰が腕の不調で離脱。小山田壮平(Vo/Gt)、藤原寛(Ba)、久富奈良(Dr)の3人編成で迎えたツアーファイナル。何年振りかに見る、3ピースバンドの中で歌う小山田壮平。始まるまでは、2013年に無くなったandymoriのZepp Fukuoka公演を取り戻せるのでは?という思いもちょっとはあった。けど始まると違った。
最初3曲はandymoriの初期曲と解散前の楽曲で占め、流石に懐かしい気持ちもこみ上げたのだけど、ソロの曲を待ち望む気持ちが大きくなっていた。「HIGH WAY」や「OH MY GOD」、「雨の散歩道」など伸びやかなメロディが光る楽曲ばかり。「Kapacino」のような性急なナンバーもあるが、そこにもどこか丸みを帯びた優しさが。「恋はマーブルの海へ」では急ごしらえだというブルースハープアレンジとともに、晴れやかな歌を聴かせていた。色褪せない瑞々しさと、成熟した表現力。彼は今こそ語られるべき域にいる。
音源では豊かなアンサンブルで表現していた楽曲たちを今回はシンプルなサウンドでガツンと聴かせており、あらゆる時代の小山田壮平が同居しているような不思議な時間だった。更に未発表曲「彼女のジャズマスター」ではノイジーな疾走感で叫びまくり、「旅に出るならどこまでも」ではプログレッシブな展開をさらりとぶつけてみせる。andymoriという枠組みを取っ払った先に弾き語りやソロでの音源があったはずだが、偶然にも今回再び3ピースという形式に再会することとなって思うのが、"経て"きたことの強さは凄まじいということだった。andymoriの青々しさはもうないが、それを忘れさせる驚きが詰まった編成。それでもまぁやっぱさすがに「投げKISSをあげるよ」はアレンジ変えなさすぎて微笑んじゃった。たまに思い出させてくれよね
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