2020.06.20⇒2021.09.25 teto 47都道府県ツアー「日ノ出行脚」@福岡DRUM Be-1
2020年、数々のツアーが延期の末に中止となり、タイトルを仕切り直して新日程が組まれる中でtetoはこのツアータイトルを残したままでワンマンシリーズを敢行してくれた。元々は2019年にリリースされた2ndアルバム『超現実至上主義宣言』のツアーだったが2年経ち、この夏には3rdアルバム『愛と例話』を発表。つまり今回、1年3カ月越しにアルバム2作分を網羅する大ボリュームのツアーとして帰ってきたのだ。開演直前に駆け込み、1番後ろの列に立つと「暖かい都会から」が爆音で弾けた瞬間だった。2曲目「メアリー、無理しないで」までハンドマイクでステージを縦横無尽に駆け抜けた小池貞利(Vo/Gt)、当然のようにフルスロットルでこちらも気持ち上がっていく。
「Pain Pain Pain」まで剛速球を飛ばし続けた後、一息いれるようにMCを。ソーシャルディスタンスを確保した特殊な環境ではあるものの福岡でライブできる喜び、そして7月のメンバー脱退を経てサポートとともに作り上げている"今のteto”を見せることができる嬉しさを語り、1分も満たない喋りからすぐに「光とロマン」へと繋げていく。生活感情の延長にある溢れ出しそうな想いや、日常にとどめておくことのできない突き抜けた想いが歌になるtetoの音楽はこういうミドルテンポな楽曲でも強い記名性を持つ。「そして夏を取り戻そう!」と始まった「夏百物語」も、やはりこのご時世にしか生まれない愛しく無邪気な願いが詰まっている。彼らは今を刻むバンドなのだ。
ロックンロールの無敵感を背負って転がりまくる「とめられない」は素晴らしかった。とにかく、サポートメンバーがガッチリとtetoのグルーヴに食い込んでいるのが圧巻だった。ドラムのyuccoは2のメンバーとして観たことがあったがtetoのエネルギッシュなパフォーマンスのエンジンとしても最高だった。ギタリストはヤングオオハラよりヨウヘイギマ。華やかでありながらストイックなフレージングも完璧で、今のtetoの凄みを実感する1曲であった。そして、終わりゆく夏の追憶を歌うブロックへと突入。たっぷりと余韻を継ぎ足しした「蜩」の緩急、感傷をこんこんと募らせていく「溶けた銃口」のノスタルジー、聴かせるtetoの魅力もたっぷり味わうことができた。
「手紙持ってきた!」と叫んで始まった「遊泳地」は大きく包み込むような温かさが滲んでいた。<Everything in my world is with you>という言葉は一対一のものとして確かに響いていた。そして季節的にもぴったりな名曲「9月になること」が飛び込んでくる。原曲と比べて、終盤は大きく変貌を遂げている。どっしりとしたビートと幻想的な残響が耳に残る<雨上がり蒸し返す空気 セミの鳴き声>のスロウさから、最後のサビを超特急で駆け抜けるあの数分間、"曲が化ける"ことの意味を真に思い知るような時間だった。切実な祈りが胸を刺す「夢見心地で」を届けるまで8曲、一言もMCはなかった。曲終わりにうなだれるyuccoと息も絶え絶えになった3人の姿は壮絶であった。
忘れたくない思い出を込めたフォーキーな「燕」の純朴な恋心が漂う中で始まったのは更に小池の過去を遡り歌う「コーンポタージュ」だ。2ndアルバムの中でのマイフェイバリットソング。聴けて本当に嬉しかった。もしかしすると、他のミュージシャンなら歌にすることもないような、友達の家ではしゃいだ思い出について、至上のメロディに載せて思い直していくような優しい1曲。<真っさらなものを見れるまで怒られるギリギリで歌おう>というラインはコロナ禍を経て大きく意味を変えた。<「これくらいは大丈夫?」>と首をかしげながら歌う小池を見て、僕もマスクの下で口だけを動かした。その行為の寂しさ、それでも心が動く嬉しさでウルウルしてしまった。
初期の1曲「あのトワイライト」が軽快に熱を上げた後、「あと3曲!」と残りを伝えた後に「invisible」が。小池とともにtetoの名を背負うことになったベースやまさきりくの、骨太なベースラインが曲を勢いづけていく。昨年のコロナ禍に届いた、超越的な愛を謳ったこの1曲は否応なしに興奮をもたらしていく。思えば「愛と例話」とはタイトル通り、愛についての様々な物語を歌った短編集のような1作だった。ライブは常に振り切れていて、その作品性とは距離があるように思えるもののこの何も残さず全てを届けようとするバンドの姿は愛そのものではないか。当代きってのラブソングバンドと言い切っても間違いないのではないか。汗だくじゃなきゃ伝わらないものがある。
クライマックス。サビをゆったりと歌い始まったのはライブでの最高潮を生み出す曲にまで成長した「拝啓」だ。美しいコーラス、つんのめったリズム、常に爆発を続けるような激しい音の塊をぶつけられる。これで揉みくちゃになれるのだとしたら、何て幸せなんだろう!と思うほかない1曲だ。またいつか、この曲で大暴れできる日を思って泣き出しそうになってしまった。そして本編の最後を飾るのは「LIFE」。<君に気に入られるようにとなんとなく始めたバンドは 今でも楽しくやれててさ たまには遊びにおいでよ>と晴れやかに呼びかける1曲は、今まさに希望の言葉として聞こえる。「最高を更新した」と語った小池、その断言に嘘はないとはっきり分かる90分だった。
アンコールまで納得な時間のかけ方で待った後、小池のサウナ話を挟んで「光るまち」の弾き語り。そして多幸感溢れる「手」と、必殺のファストナンバー「高層ビルと人工衛星」でどしゃめしゃに破壊し尽くしてフィニッシュ。暴風のように駆け抜けたライブであった。思えば2018年2月。国試を終えた翌日、福岡に住むことが決まって初めて観たのがtetoとa flood of circleの対バンであった。そして福岡を去る最後のライブがtetoのワンマン。ロックバンドの素晴らしさを体現したような彼らで最初で最後を飾れるなんて綺麗な流れだろうか。当分はやっぱり、ロックバンドが最高にカッコいいと思い続けるしかない人生だ。
<setlist>
1.暖かい都会から
2.メアリー、無理しないで
3.Pain Pain Pain
-MC-
4.光とロマン
5.夏百物語
6.とめられない
7.蜩
8.溶けた銃口
9.遊泳地
10.9月になること
11.夢見心地で
-MC-
12.燕
13.コーンポタージュ
14.あのトワイライト
15.invisible
16.拝啓
17.LIFE
-encore-
18.光るまち
19.手
20.高層ビルと人工衛星
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