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オンラインライブを観た⑥(星野源/Yogee New Waves)
7.12 Gen Hoshino’s 10th Anniversary Concert “Gratitude”(アーカイブ 7/19迄)
『ばかのうた』から10年。まさかこんなにも誰もが知ってるスターになるなんて思いもしなかった、なんてことすら言い飽きるくらいには国民的存在なわけだが、初のオンラインライブは管弦楽団、ダンサーなしの小編成。ちょうど、2014年のホールツアーの雰囲気をおげんさんメンバーでやる、みたいな。ドームツアーのセンターステージでのパフォーマンスをもうちょっと本気でやる、みたいな。とても絶妙なところをついてくるのが彼らしい。
いきなりウイルスの歌から始まるし、さらに「地獄でなぜ悪い」で、<作り物だ世界は>と高らかに歌い上げてしまう。圧倒的にポップで、どこまでもラジカルであるというのを食らわされるオープニングである。MCこそゆるゆると進むが、腹の底にある野心がとんでもない男だとはよく知っている。2011年『エピソード』収録の「湯気」「ステップ」が、このメンバーの織りなすファンク/ソウルなプレイに接続され、一層ダンサブルな仕上がりになっていたのも偶然ではない。このグルーヴに辿り着くためにあった曲なのだ。
「桜の森」「肌」「Ain't Nobody Know」と徐々に甘くまどろんでいくようなシックなブロックを経て初披露となった「折り合い」は、久しぶりの生活感とDIY感が全開な曲だが、ライブではその印象を残しつつもより立体的に。派手にも地味も花を添えれる、凄まじいバンドメンバーだな、と思う。最新曲と並べて弾き語られた「老夫婦」のミニマルなのに掌編小説のような滋味、絶望の淵から眺めるような「未来」の穏やかな切実さが、ひとり→バンドという流れで演奏されたのもとても意義深い。たった1人の部屋で生まれた音楽が、信頼できる仲間と共に、全世界へと届けられていく。素敵か。
コロナ禍を代表する1曲となった「うちで踊ろう」は、パーフェクトエディションとして初披露。めちゃくちゃ聞いた歌だし聴き慣れ過ぎた感もあるけど、こうやってアレンジがしっかり施されるとやはり特別な記銘性のあるメロディだな、と思う。歌詞を足したりせず、ハミングとセッションを中心に再構築されていたのも最高。どこまでも広く開けた曲だな、と思う。すると一転、間奏では内輪トークに花が咲く「プリン」である。曲だけで星野源に親しんでる人からすればかなり謎の時間だろうが、ドラマー・カースケさんがじいじになったというお話は多くの人にほっこりをもたらしたはず。
「Crazy Crazy」ではそんなじーじの爆裂ドラムがエンジンとなっているのだが、今回のアレンジは長岡亮介のギターの鳴りが冴えわたりかなり獰猛な印象だった。よく耳にしたヒット曲ほど、今回の編成との差異が耳に残る。「SUN」は武嶋聡のサックスが混ざり、随分と色っぽい聴き心地。ロックンロール然とした新イントロを携えた「恋」は、武嶋聡のフルートが繰り出すハーモニーで涼風のような聴き心地だ。その先で鳴らされた「Same Thing」が新たなアンセムとして君臨していた。みんなでFuckと歌ってしまえる、なんて爽快!この投げやりで攻撃的で、でも祝祭感もあって、ってバランス!
バンド編成でのラストナンバーは「Hello Song」。時空を超えた音楽の奇跡を信じる歌だが、こんなにも早く、この歌の<笑顔で会いましょう>を切望する日が来るなんて思わなかったよ。「画面越しでもいいじゃんね!」の絶叫は、あきらめじゃなく、今をエンターテインする言葉として受け取っておきたい。最後は星野源1人で「私」。終盤、裸の声で<死ぬのだけではあんまりじゃないか>と放った瞬間、不思議なことに部屋で1人で歌う星野源の姿が見えた気がした。あの頃と、今、奥底にあるその本質は何ら変わっていないと、彼の作品に触れるごとに思うが、このシメは特にそう思ったなぁ。
-setlist-
1. Pop Virus
2. 地獄でなぜ悪い
3. 湯気
4. ステップ
5. 桜の森
6. 肌
7. Ain't Nobody Know
8. 折り合い
9. 老夫婦
10. 未来
11. うちで踊ろう
12. プリン
13. Crazy Crazy
14. SUN
15. 恋
16. Same Thing
17. Hello Song
18. 私
7.12 Yogee New Waves Presents Live Streaming -Naked-(アーカイブ7/18迄)
http://yogeenewwaves.tokyo/live/1758
LIVEWIRE、第3回のアクトはYogee New Waves。角館健吾(Vo/Gt)が渋谷WWWの中と外を往来しながら、3つの編成で見せるというこれまた普段のライブではなかなかお目にかかれないステージである。最初はメンバー4人のみでのセッション。逃避願望と祈りを交差させたような1st『PARAISO』から2曲、果敢に外へと向かおうとする気概に満ちていた2nd『WAVES』から2曲。初期から変わらぬグッドメロディを、熟したグルーヴで聴かせてくれた。
「Ride on Wave」のアウトロが流れ続ける中、角館だけが外に出て、会場の階段で弾き語りステージ。リアルタイムで流す打ち込みの音に合わせ演奏された「to the moon」はチルアウトを誘うベッドルームのような仕上がり、美空ひばり「愛燦燦」のカバーを真っ直ぐ艶やかに届けた後、名曲「Climax Night」へ。まさにNakedなヨギーの音楽の芯が露わになるひとときだった。
遠くから「Summer of Love」のイントロが聴こえてくる。角館が再びスタジオのドアを開けると、メンバー3人に加えて高野勲(Key)、松井泉(Per)を迎えて、「Summer of Love」のあのいくらでも聴いていられるメインフレーズが奏でられていた。角館も合流し、同曲を軽やかに披露。
-setlist-
(4人編成)
1.Understand
2.Megumi no Amen
3.Summer
4.Ride on Wave
(角舘弾き語り)
5.to the moon
6.愛燦燦(美空ひばり)
7.Climax night
(6人編成)
8.Summer of Love
9.White Lily light
10.CAN YOU FEEL IT
11.Bluemin'Days
12.Like sixteen candlles
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