[補足]バガヴァッドギーター①~アルジュナの悲しみ~
「ドゥリタラーシュトラは言った」という一文から
バガヴァッドギーターが始まります。
しかし、マハーバーラタのお話とスムーズにつなげる為には
「ここからバガヴァッドギーターである」などという違和感のある文を
入れるわけにはいきません。
そこでヴャーサは”ここからが聖典の部分ですよ”と暗に示すために
「dhṛtarāṣṭra uvāca(ドゥリタラーシュトラは言った)」という一文に
吉兆な始まりの言葉を忍び込ませています。
「ドゥリタラーシュトラ」という名は「宇宙を支える者」という吉兆な意味です。
本文はサンスクリット語原典の直訳にかなり寄せています。
なのでクリシュナの呼び名がいっぱい出てきたりしていますがその辺はご容赦を。
このバガヴァッドギーターは全体を通してサンジャヤによるレポートの形式です。彼は戦争の直前に遠くの出来事が見える能力をドゥリタラーシュトラに代わって授かり、戦場での出来事を報告します。
なので「アルジュナが戦場でこう言っているよ」「クリシュナがこんな風に教えたよ」とドゥリタラーシュトラに報告しているのです。
このバガヴァッドギーター1章はまだクリシュナによる教えは始まりません。教えは2章の11番から始まります。
ですが、この1章も重要視されています。
なぜかというと、
アルジュナがクリシュナによる教えにたどり着いた、その経緯を知る必要があるからです。
それは一言で言うと「ダルマの追求の行き詰まり」です。
皆の為に良い国を取り戻したい、みんなが幸せに暮らしてほしい、そんな素晴らしい王子としてのダルマの追求にも限界があるのです。
「良い悪い」を越えた話がクリシュナの教えによって展開されます。
私とは何か、世界とは何か、
その根本の知識を見た時、アルジュナは何をすべきか理解します。
「クリシュナが戦争を称賛している」
そんな風に理解するのはちょっと待ってください。
戦争というのは人間の抱える最も大きな課題なのです。
戦争はない方がいい、平和がいい、そんな単純な話ではありません。
人間の中にある様々なトラブル、その最も解決が困難なトラブルの王様
が「戦争」なのです。
大なり小なり私達はいつも問題を抱えていると言えます。
つまり、戦争という一番の難題を題材にして答えを導き出すことができれば、身の回りのいかなる問題も解決できるのです。
で、本文の方の補足です。
最初はドゥルヨーダナがドローナ先生に話しかける場面です。
総司令官を任せたビーシュマではなく、ドローナ先生です。
それはドゥルヨーダナがドローナ先生を一番疑っていて、
敵に寝返らないように最初に釘を刺しに行ったわけです。
ドローナ先生はアルジュナが大好き。
でも息子がドゥルヨーダナの友達なので息子をかわいがるあまりに
ドゥルヨーダナの側についているだけ。
ドゥルヨーダナの発言、はっきり言って混乱しています。
「私の為に命を捨てた多くの戦士達がいます」って?
命を捨てる覚悟ではなく、すでに捨てた戦士です。
言い間違いに近いでしょうが、言霊ですね。これから真実になるわけです。
あと、
絶対死なない最強の戦士ビーシュマをなぜみんなで守る必要がある?
もうそんなおかしなドゥルヨーダナの言葉をそれ以上聞いていられなくなってビーシュマは雄たけびを上げ、ほら貝を吹いて黙らせます。
さて、後半部分のアルジュナの話。
正論に聞こえますよね?
私もそう思いました。
第二章でいよいよクリシュナが教えを始めます。
ここから先は
マハーバーラタ 6.ビーシュマの章
マハーバーラタの第6章 戦争を前に思いやりの気持ちに圧倒されてしまったアルジュナ。 クリシュナによる教えバガヴァッドギーターによって 知識…
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