マハーバーラタ/5-22.戦わざる者バララーマとルクミー

5-22.戦わざる者バララーマとルクミー

カウラヴァ軍の総司令官としてビーシュマが戴冠したことがパーンダヴァ達に知らされた。
ユディシュティラは7アクシャウヒニをそれぞれドゥルパダ、ヴィラータ、サーテャキ、ドゥリシュタデュムナ、ドゥリシュタケートゥ、シカンディー、サハデーヴァに指揮させ、全軍の総司令官としてドゥリシュタデュムナを戴冠させた。
アルジュナは戦士達のリーダーとなり、クリシュナはアルジュナの御者となった。

バララーマがヴリシニ一族の仲間達を連れてユディシュティラの元へやってきた。
ユディシュティラは大きな喜びをもって歓迎した。
バララーマの弟子であったビーマは彼の足元にひれ伏して挨拶した。
バララーマはパーンダヴァ達と弟クリシュナに祝福を与えた。
クリシュナよりも力強いと評される偉大なバララーマを見ようと皆が集まってきた。
バララーマは全員に向けて話し始める前に一度クリシュナの方へ視線を向けた。
「この世界の全ての王達が参加する大きな戦争が行われると聞きました。
もう戦争は避けられないのですね。クリシュナからそう聞きました。
あなた方に迫っている危険の海から無事に帰ってくることを期待しています。
私はパーンダヴァ兄弟に対しても、ドゥルヨーダナに対しても同じように親しい間柄です。もちろんクリシュナもそうです。彼にはどちら側にも味方しないようお願いしましたが、彼は拒否しました。
ユディシュティラ、あなた達の為に彼は戦争に参加することを決めたのです。
クリシュナがアルジュナの白馬の手綱を握ったなら勝利は確実です。
ビーマ、あなたの知っている通り、ドゥルヨーダナは私のお気に入りの弟子です。
私の弟がアルジュナを愛するように、
私はドゥルヨーダナを愛しています。
ですが、私は彼の側にはつきません。
私はクリシュナなしで生きることはできないので、弟の敵として参戦することはできません。
親戚の間で行われる戦争で、弟と戦うことなど考えられません。
私は決めたのです。クリシュナの手の内にある戦争と、そして世界の未来から離れます。クル一族が破壊し合う姿を見たくありません。
私はサラスヴァティー川へ向かいます」
偉大なバララーマは目をワインのように赤く染めて、まるでライオンが自分の住処に帰るかのように去っていった。
最後に彼はクリシュナに優しく挨拶をして行った。

もう一人、偉大な戦士がユディシュティラを訪問した。
ボージャカタの王ルクミーが1アクシャウヒニを引き連れてやってきた。
クリシュナの妻ルクミニーの兄である彼はユディシュティラによって歓迎された。
ルクミーが言った。
「おお、アルジュナ! カウラヴァ軍など恐れることはないぞ!
私が援軍として参加してやる。このルクミーほど偉大な戦士はいないんだ。あなたの指示に従って敵を打ち負かしてきてやる。私以外の援軍なんて必要ないからな。私一人でカウラヴァの英雄達を殺すことができるんだ。
全員殺してこの世界をあなたへの贈り物として与えてやろう」
その場にいた全員の方を向いてニヤリと笑った。

アルジュナはユディシュティラの表情を確認し、クリシュナの方を見た。
クリシュナとルクミーは絶対的な敵であった。
そして以前ルクミーがクリシュナに完膚なきまでに敗れたことがあるということを皆が知っていた。
クリシュナは何も言わず、落ち着いていた。

アルジュナは言った。
「ルクミー、聞いてくれ。
この場にいる者は誰もカウラヴァ軍を恐れていない。全員が勇敢な戦士だ。
その私達にそんな見下した言い方をするのは気に入らない。
私達の為に世界を勝ち取って贈り物にする?
何を言っているんだ。
あなたの助けは必要ない。
ここから去ってもよいし、残ってもよい。好きにすればいい」

ルクミーは軍を連れて去っていった。
彼はドゥルヨーダナの所へ行き、同じような言葉を話した。
そしてパーンダヴァ達からどのように扱われたかを伝えた。
ドゥルヨーダナもまた、このプライドの高いルクミーを拒否した。

こうして全世界の王によるクルクシェートラでの大戦争はバララーマとルクミーが参加することなく始まることとなった。

ヒランヴァティー川を挟んで両軍が配置された。

ドゥルヨーダナはシャクニの息子ウルーカを呼んで話した。
「パーンダヴァのキャンプへ伝言を運んでくれ。
ユディシュティラの所へ行き、パーンダヴァ兄弟とクリシュナ、そして援軍として集まっている王達がその場にいることを確認するんだ。
全員の真ん中で私からの伝言を話すんだ。
そして彼らから返事を持って帰ってきてくれ」

ウルーカはユディシュティラの陣へ向かった。

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マハーバーラタの第5章 約束通り国を返してもらおうとするパーンダヴァ達。 争いを避けようと全力を尽くすが・・・。

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