マハーバーラタ/5-16.ラーデーヤの出生の秘密
5-16.ラーデーヤの出生の秘密
ウパプラッヴャに帰る直前、クリシュナはラーデーヤを呼び出した。
彼を戦闘馬車に乗せて人目のつかない場所まで連れ出した。
サーテャキを残し、ラーデーヤと二人で歩いた。
「ラーデーヤ、あなたは良い人間です。ヴェーダとヴェーダーンガに精通し、聖典も学び、公正さの本質を理解している人だ。ダルマに沿って生きてきたあなたがなぜドゥルヨーダナを助けるのですか? なぜそんな罪深い行いをするのですか?」
「クリシュナ、あなたの言っていることは正しい。
確かに公正な人間は罪人と一緒にいるべきではない。
だが、ドゥルヨーダナはそうではないんだ。
私は彼を愛している。彼のことを愛しすぎるがあまり、彼のことを判断できなくなっている。
世界は私に対してずっと疑いの目を向けてきた。なぜなら私がクシャットリヤではなく御者の息子スータプットラだからだ。
しかし、ドゥルヨーダナだけは違うんだ。
彼は世界中の誰よりも素晴らしい人物だ。私のことを決してスータプットラとは扱わなかった。
ドローナは私がスータプットラなので教えることを拒んだ。
バールガヴァは私がスータプットラなので呪いをかけた。
対抗試合の時に私はアルジュナに弓の腕前で挑戦したのに、スータプットラなので戦うことすら許されなかった。
クリシュナ、あなたの最愛のパーンダヴァ達が私を侮辱していた時、唯一私の味方となってくれたのは、高貴な考えを持つあのドゥルヨーダナだけだった。彼は私をアンガ国の王にして手を握ってくれた。
その恩返しをさせてくれと言ったら、彼は私の心以外何もいらないと言ってくれた。
私の人生において、私を愛してくれたのはたった二人。
我が母ラーダーとドゥルヨーダナだ。
この二人を喜ばせる為だけに私は生きている。
私が生きている限り、この二人が私の心の居場所であり、私の心はこの二人の為だけにある」
クリシュナはしばらく沈黙した。
「その通りです。恩義とは最も返しがたく、とても大事なものだ。
ところでラーデーヤ、あなたは自分の生まれについて知ってみたいと思いませんか? あなたが何者なのか、あなたの母が誰なのか」
ラーデーヤは笑顔で首を横に振った。
「クリシュナ、それは必要ないんだ。
どこかの高貴な生まれの未婚女性が私を産んだということは分かる。きっと彼女の住処の近くには川が流れていたはずだ。
その女性は生まれたての我が子よりも体裁を大事にした人なんだ。
私を箱に入れ、川に流したのだから。
彼女はきっと私のことなど忘れただろう。きっと他に子供がいるだろう。その子供たちは私よりも運に恵まれていたんだ」
ラーデーヤは話すことをためらい、悲しみ半分、軽蔑半分の笑みを浮かべた。
クリシュナは奇妙な笑みを浮かべて彼を見つめていた。
ラーデーヤは再び話し始めた。
「クリシュナ、本当に全く悔しくはないんだ。私には愛する素晴らしい母ラーダーがいる。彼女は私を誇りに思ってくれている。
それにしても、なぜ私の生まれと母の話なんだ?
そんなとっくの昔に忘れ去られた過去のことではないか。そんな話をして何になる? 今のことを話そうではないか」
クリシュナは微笑み、大きな愛と大きな憐れみをもってラーデーヤを見た。
目に涙を浮かべ、優しい声で話しかけた。
「ラーデーヤ。その通りです。
あなたの母は高貴な生まれの未婚女性、王女でした。
あなたが生まれた時、世界からの非難を恐れてあなたを捨てようと決心したのです。
今、彼女には他の子供がいますが、彼女の心はいつも空っぽです。
昔カヴァチャとクンダラと共に生まれた美しい子供、つまりあなたのことをいつも思って毎日一人で心を痛めています」
「え! ということはやはり私はスータプットラではない!
私はクシャットリヤだった! その話は間違いないのか?
もしかしてあなたは私の母を知っているのか?
彼女は生きているのか? いつか会えるのか?
教えてくれ! 自分が何者なのか知りたいんだ」
クリシュナはラーデーヤの手を取り、座らせた。
「ラーデーヤ、真実を聞く準備をしてください。
・・・その女性は五人の息子の母です。世界中で比類なき五人の英雄です」
よろしければ応援お願いします! いただいたチップはクリエイターとしての活動費に使わせていただきます!