マハーバーラタ/5-18.総司令官ビーシュマ
5-18.総司令官ビーシュマ
一方、ハスティナープラではクリシュナが帰るとすぐにドゥルヨーダナは皆に伝えた。
「クリシュナは目的を達成できずに怒って帰っていった。
きっとユディシュティラが戦うようにそそのかすだろう。
ビーマとアルジュナも一緒にユディシュティラも戦いたがっているだろう。
彼らは戦いに来る。
ドゥッシャーサナ、ラーデーヤ、戦争の準備を急ぐんだ。明日にはここから出発すると軍へ知らせるんだ」
翌朝、クルクシェートラへ向けて進軍の準備が整えられた。
クリパ、ドローナ、ジャヤドラタ、スダクシナ、クリタヴァルマー、アシュヴァッターマー、ラーデーヤ、ブーリシュラヴァス、シャクニ、バールヒーカ、そしてソーマダッタがそれぞれ1アクシャウヒニの軍を率いて整列させた。
ドゥルヨーダナはビーシュマに挨拶し、手を合わせて彼の前に立った。
「祖父よ、見てください。どこまでも続く蟻の行列のようにクルクシェートラに向かって進むこの軍隊を。
この軍には有能な総司令官が必要です。それは私の為に戦うあなた以外に考えられません。
あなたがこの全軍を指揮するべきです。私達がこの戦争を切り抜けられるかどうかはあなたにかかっています。どうかこの役を引き受けてください。
あなたが総司令官になれば何も恐れるものはありません」
「我が孫よ。あなたの願いに応えてその役を引き受けましょう。
ただし、一つ言っておかなければならない。
私にとってはあなたと同じようにパーンダヴァ達も愛しい孫だ。彼らを殺すのは気が進まない。
だが最善を尽くすことを約束する。
私は一日に一万人の敵軍を破壊するだろう。
アルジュナ以外に私に匹敵する者はこの世界にいない。私を超える者は彼だけだ。私を打ち負かすことができるのは彼一人だ。
そして、総司令官を引き受けるには条件がある。
ラーデーヤのことだ。彼とは折り合いが悪い。
共に戦うことはできない。私が戦うか、ラーデーヤが戦うかどちらかを選ばなければならない。
軍の中で不和を起こしてはならないのだ」
ドゥルヨーダナは困ってしまった。
しかし、ラーデーヤが友人に助け船を出した。
彼はドゥルヨーダナに向かって微笑んだ。
「ドゥルヨーダナ、気にしなくていいです。私は怒っていない。ちっともだ。それどころか嬉しいくらいだ。
このビーシュマが戦場に立っている限り、私は戦わないことを約束する。
彼が倒れた時に私は戦場に入ってあなたの為に戦う。
大丈夫です。私にはアルジュナを殺す喜びが残されるのだから。
あなたの祖父はパーンダヴァ達を殺さないどころか、誰一人傷つけないだろう。先ほどの発言は、彼がそう心に決めているという意味なのでしょう?」
ビーシュマは総司令官の戴冠の儀式での沐浴が与えられ、冠を受け取った。
大軍がクルクシェートラに向けて進軍を始めた。
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マハーバーラタ 5.準備の章
マハーバーラタの第5章 約束通り国を返してもらおうとするパーンダヴァ達。 争いを避けようと全力を尽くすが・・・。
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