マハーバーラタ/1-29.ガトートカチャの誕生

1-29.ガトートカチャの誕生

ビーマと結婚したヒディンビーはサーリヴァーハナという名の湖にパーンダヴァ達を連れて行った。美しいコテージを建て、素晴らしい食事を持ってきた。彼女はクンティーに話しかけた。
「お義母様、あなたがビーマ様をどれほど愛しているかは知っています。私は彼と共に行きますが、毎晩連れて帰りますのでご安心ください」
ビーマがヒディンビーに話した。
「こんなにもお世話をしてくれるので私は幸せ者だ。しばらくはあなたと共に過ごすが、ずっとというわけにはいかない。私達兄弟には使命があるのだ。あの悪意に満ちた従兄弟達を罰しなければならない。それはもう分かっているだろう。子供が生まれるまではあなたと一緒にいます。だがそれまでだ。あなたから離れたいわけではなく、行かなければならないのだ」
ヒディンビーは千通りもの愛の方法で彼を喜ばせた。ある時は森の中の美しい場所へ連れていき、またある時は美しい川、山、谷を見せた。たくさんのリシ達がいるアーシュラマにも連れて行った。皆が愛情を持って彼ら二人を歓迎した。

それから七カ月が経った。
ヴャーサがパーンダヴァ達に会いに来た。義理の娘にあたるクンティーに対してこれまでの苦難を慰める言葉をかけた。そしてヒディンビーについて予言した。
「あなたのこの愛しい義理の娘は、ビーマとの間に、後に勇敢さと大胆さで世界中に知れ渡ることになる息子を産み、カマラマリニーと呼ばれることになるでしょう。その息子が生まれた時があなた達の出発の時です。木の皮ともつれた髪で自身を装い、エーカチャックラと呼ばれる町へ行きなさい。そこに私はいます。
あなたの息子達は世界を統治する為に生まれたのです。やっかいな日々は忘れなさい。それは流れる雲のようなものです。最後にはダルマが勝ちます。正しい道を進みなさい。私達が見守っていますから」
そう言い残してヴャーサは去った。

あっという間に日は流れ、ビーマの息子が生まれた。
その子供はガトートカチャと名付けられ、特にユディシュティラのお気に入りとなった。この子供と毎日何時間も遊んで過ごした。

出発の時が来た。
ビーマは涙を流す妻を慰めた。
「涙を拭きなさい。私達の息子があなたと一緒にいます。しっかり面倒を見てあげてください。あなたが私を求める時、この子を見なさい。この子の中に私が見えるはずです。私があなたを求める時、考えよりも速く私の元へ来てください。
それでは私は行きます」
ヒディンビーは目を覆いつくす涙と共に、彼らに別れを告げた。腕に息子を、胸にビーマとの思い出を抱え、重たい足取りでアーシュラマへ向かった。

パーンダヴァ達はヴャーサの言いつけ通りに木の皮や鹿の皮、もつれた髪で装い、エーカチャックラへ向かった。どんな運命が待っているのか彼らは全く分かっていなかったが、ヴャーサの言葉を信じていた。ユディシュティラは年長者の指示には従うというダルマを若い頃に決めていた。ヴャーサは彼にとって実の祖父であった。
不確実な未来に対する悩みと、奇妙な平和の感覚を持ってパーンダヴァ兄弟と母は見ず知らずのエーカチャックラという町へ向かった。

(次へ)


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