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未来の記憶

夫と出会ったきっかけ
私が踊り子で彼が客

当時の私は薄着で棒にからまり
逆さになったり、消防団の梯子乗りのごとく
踊る仕事をしていた

地方のクラブ(お姉さんがいる方)から
ショータイムの場の賑やかしを任されていた

踊る前は、軽い接客もした
ホステスさんと同じ、指名料がもらえるから
張り切って酒を注ぐ

初めて夫を見たときは
かっこいいとか、感じがいいとは
思わなかった

席についてからの第一印象を頭で考えて
話しをしてから、客本人と一緒に答え合わせをすると、なぜか喜ばれたので
後に夫となる目の前の客を分析

私よりは10個くらい年を取っていると思ったし
日焼けした顔の表情が固く
手は拳をかたくにぎり膝の上に置かれていた
微動だにしない

もちろん、目も合わない
何かの職人か遠洋漁業で陸に上がってきたのかと
勝手に想像してた

その後何故か食事をすることになり
隣に彼が座った時に、懐かしい香りがした
香水でも、柔軟剤でもなく
おそらく体臭。汗臭いとかじゃなく自然の
その人の匂い

あまりドキドキもせずトキメキもなく
食事を終えて、店に向かう
さっき嗅いだ「懐かしい香り」が
何故か引っかかっていた

彼の席についてから
約1年後、私は超特急で妻になり
お母さんにもなっていた

今思えばあの時に嗅いだ、懐かしい香りの正体は
未来の記憶、予感だったような気がしている

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