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中国知財 最高人民法院による「不正競争法」の適用の若干問題に関する解釈 (意見募集稿)

2021年8月19日付で中国最高人民法院が公開した「不正競争法」の適用の若干問題に関する解釈 (意見募集稿)(http://www.court.gov.cn/zixun-xiangqing-318221.html)について、ネットで日訳が見つけられなかったので仮訳しました。

所謂伝統的な模倣品関係の条文にはそれほど惹かれないのですが、ソフトウェアを利用した不正競争行為については、色々事件が多いためか、日本より踏み込んだ内容になっていると思います。これと、不競法の典型案例を合わせて読むことで、中国で今、どんな悪質なビジネスが問題になっているのかが理解でき、とても興味深いです(日本でも、グルメサイトなどの評価値を巡って色々紛争が起きており、ネット上での公平なビジネスについて消費者の関心が高いと思います)。

ネットビジネスの発展に伴い、悪質ビジネスもどんどん進化していて、判決文を読みながら「そこまでするのか!」と感心してしまいます。時代を先取りするような悪質ビジネスは、特許よりもスピードが速く、かつ、特許で権利を保護するような真っ当なビジネスではないので、権利保護のためには不競法に頼るしかないように思います。これからも悪質ビジネスと不競法の発展に目が離せませんw

最高人民法院による「不正競争法」の適用の若干問題に関する解釈

前言 不正競争行為により引き起こされる民事紛争案件を正確に処理するため、「中華人民共和国民法典」「中華人民共和国不正競争防止法」「中華人民共和国民事訴訟法」等関係法律規定に基づき、審理実践を組み合わせて、本解釈を策定する。
  第一条 不正競争防止法第二章等関係法律が明確に列挙する行為に対して、当事者が不正競争防止法第二条の適用を主張する場合、人民法院は支持しない。
不正競争防止法第二章等関係法律が明確に列挙していないが、誠実信用の原則とビジネス道徳に違反し、市場競争秩序を乱し、他の事業者又は消費者の合法的な権益に損害を与える行為に対し、人民法院は、不正競争防止法第二条の適用を認定することができる。
  当事者が利益に損害を受けたことのみを理由として、不正競争防止法第二条の適用を主張するが、事業者の利益に損害与える行為が市場競争秩序を乱したことを挙証証明できない場合、人民法院法により、支持しない。
  第二条 事業者と生産経営活動において取引機会を争奪する、競争優位性に損害を与える可能性がある等の関係がある市場主体について、人民法院は、不正競争防止法第二条に規定する「他の事業者」と認定することができる。
  第三条 不正競争防止法第二条に規定する「ビジネス道徳」とは、特定ビジネス分野で普遍的に認められ、守られる行為規範をいう。人民法院は、案件の具体的状況を組み合わせて、業界規則又はビジネス慣例、事業者の主観的な状態、取引相手の選択意思、市場の競争秩序と消費者の知る権利、選択権に対する影響等の要素を総合的に考慮して、法により事業者がビジネス道徳に違反するかどうか判断しなければならない。
  人民法院は、事業者がビジネス道徳に違反するかどうか認定するとき、さらに業界主管部門、業界協会又は自律組織が策定した従業規範、自律公約、技術規範等を参考にすることができる。
  第四条 一定の市場知名度を有し商品出所を区別する顕著な特徴を有する標識について、人民法院は、不正競争防止法第六条に規定する「一定の影響を有する」標識と認定することができる。
  原告はその標識の市場知名度を挙証証明しなければならない。人民法院は、不正競争防止法第六条に規定する標識が一定の市場知名度を有するかどうか認定するとき、中国国内関連公衆の知識レベル、商品販売の時間、地域、金額及び対象、宣伝の持続時間、程度と地域範囲、標識が保護を受けた状況等の要素を総合的に考慮しなければならない。
  第五条 不正競争防止法第六条に規定する標識が以下の状況の一に該当する場合、人民法院は、それが商品出所を区別する顕著な特徴を有しないと認定しなければならない。
  (一)商品の一般名称、図形、型番
  (二)商品の品質、原料、機能、用途、重量、数量及びその他特徴を直接表示するだけの標識
  (三)商品自身の性能のみから生じる形状、技術効果を得るために有する必要がある商品形状及び商品に実質的価値を有させる形状
  (四)その他顕著な特徴を欠く標識
  前項第一、二、四号に規定する標識が使用を経て顕著な特徴を取得し、かつ、一定の市場知名度を有し、当事者が不正競争防止法第六条に規定による保護を請求する場合、人民法院は支持しなければならない。
  第六条 事業者の営業場所の装飾、営業用具の仕様、営業人員の服飾等で構成される独特な風格を有する全体の営業形態については、人民法院は不正競争防止法第六条第一号に規定する「装飾」と認定することができる。
  第七条 不正競争防止法第六条に規定する「一定影響を有する」標識が、本商品の一般名称、図形、型番を含み、又は商品の品質、原料、機能、用途、重量、数量及びその他特徴を直接表示し、又は地名を含み、他人が客観的に商品を描写して正当に使用する場合において、当事者が不正競争防止法第六条に規定する状況に該当すると主張する場合、人民法院は法により支持しない。
  第八条 商品の名称、包装、装飾又はその顕著な識別部分が商標法第十条第一項に規定する商標として使用できない標章に該当し、当事者が不正競争防止法第六条第一号により保護を請求した場合、人民法院は法により支持しない。
  第九条 企業登記主管機関が法により登記登録する企業名称、及び中国国内で商業使用される国外企業名称については、人民法院が不正競争防止法第六条第二号に規定する「企業名称」であると認定することができる。
  一定の影響を有する工商個体の名称(略称、字号等を含む)については、人民法院が不正競争防止法第六条第二号により認定することができる。
  第十条 中国国内で一定の影響を有する標識が商品、商品包装、商品取引文書又は広告宣伝、展覧等その他商業活動に用いられ、商品出所を識別する行為は、人民法院が不正競争防止法第六条に規定する「使用」と認定することができる。
  第十一条 事業者が他人の一定の影響を有する企業名称(略称、字号等を含む)、社会組織名称(略称等を含む)、姓名(筆名、芸名、翻訳名等を含む)、ドメイン名主体部分、サイト名称、ウェブページ等と近似する標識を勝手に使用し、他人の商品である又は他人と特定の関係があると誤認を生じさせ、当事者が不正競争防止法第六条第二号、第三号に規定する状況に該当すると主張する場合、人民法院は法により支持する。
  第十二条 関連公衆に商品の出所について、他人とビジネス提携、許諾使用、ビジネス命名、広告代理宣伝等特定の関係を有すると誤認させることを含むそのような誤認を生じさせるのに足りる場合、人民法院は不正競争防止法第六条に規定する「他人の商品であると誤認を生じる又は他人と特定の関係がある」と認定しなければならない。
  同一の商品上で同一又は視覚上基本的に差のない商品名称、包装、装飾等標識を使用する場合、他人の一定の影響を有する標識と混同するのに足りるとみなさなければならない。
  人民法院による一定の影響を有する標識と同一又は近似するという認定では、商標の同一又は近似の判断原則と方法を参照することができる。
  第十三条 事業者が以下の混同行為の一を実施し、他人の商品である又は他人と特定の関係があると誤認を生じさせるのに足りる場合、人民法院は、不正競争防止法第六条第四号により認定することができる:
  (一)不正競争防止法第六条第一号、第二号、第三号に規定する以外に一定の影響を有する標識を勝手に使用する場合
  (二)他人の登録商標、未登録の馳名商標を企業名称中の字号として、突出せずに使用する場合
  第十四条 故意に他人のために混同行為を実施して保管、運輸、郵送、印刷、隠蔽、経営場所、ネットワーク取引プラットフォーム等便利な条件を提供し、他人を幇助して混同行為を実施し、当事者が民法典第1169条第一項により認定することを請求した場合、人民法院は支持しなければならない。
  第十五条 異なる地域範囲内で同一又は近似する一定の影響を有する商品名称、包装、装飾、企業名称、社会組織名称、姓名等標識を使用し、後発の使用者がその善意の使用を証明できる場合、不正競争防止法第六条第一号、第二号に規定する不正競争行為とならない。
  前項にいう「善意の使用」は、人民法院が案件の具体的状況と結び付けて、先行使用標識の市場知名度、先行使用に対する知得状況、標識使用の地域等の要素を総合的に考慮して法により認定しなければならない。
  後発の経営活動が同一地域範囲に入ることにより、商品出所混同を生じるに足りるようになり、先行使用者が、後発使用者が商品出所を区別するに足りるその他標識を付加することを判決するよう請求した場合、人民法院は支持しなければならない。
  第十六条 事業者が他人の一定の影響を有する商品名称、包装、装飾等と同一又は近似標識を勝手に使用した商品を販売し、他人の商品である又は他人と特定の関係があると誤認を生じ、当事者が不正競争防止法第六条第一号に規定する状況に該当すると主張した場合、人民法院は法により支持する。
  前項に規定する権利侵害商品であることを知らずに、また知るべきでもなく販売し、該商品が自己が合法的に取得したことを挙証証明して提供者を説明することができ、事業者が賠償責任を負わないと主張した場合、人民法院は法により支持する。
  第十七条 事業者が商業宣伝過程において、不真実の商品関連情報を提供し、関連公衆を欺き、誤解を生じさせる場合、人民法院は不正競争防止法第八条第一項に規定する虚偽の商業宣伝と認定しなければならない。
  商業宣伝の内容は真実性を欠くが,関連公衆に誤解を生じさせるには足りず、当事者が不正競争防止法第八条第一項に規定する虚偽の商業宣伝に該当すると主張した場合、人民法院は法により支持しない。
  第十八条 事業者が以下の行為の一を行い、関連公衆に誤解を生じさせるに足りる場合、人民法院は不正競争防止法第八条第一項に規定する「人を誤解させる商業宣伝」と認定することができる。
  (一)商品について一方的な宣伝又は対比
  (二)科学的に定説のない観点、現象等を定説の事実として商品宣伝に用いる
  (三)あいまいな言葉を使用して商業宣伝を行う
  (四)人を誤解させるに足りるその他の商業宣伝行為
  明らかに誇張された方式で商品を宣伝し、関連公衆に誤解を生じさせるには足りない場合、人を誤解させる商業宣伝行為に該当しない。
  人民法院は、日常生活経験、関連公衆の一般注意力、誤解が生じた事実と宣伝された対象の実際の状況等の要素に基づき、人を誤解させる商業宣伝行為について認定しなければならない。
  第十九条 当事者が、他の事業者が不正競争防止法第八条第一項の規定に違反すると主張し損失の賠償を請求する場合、その当事者が虚偽又は人を誤解させる商業宣伝行為により受けた損失を挙証証明しなければならない。
  第二十条 当事者が、他の事業者が不正競争防止法第十一条に規定する商業名誉毀損行為を実施したと主張する場合、その当事者が該商業名誉毀損行為の特定損害対象であることを挙証証明しなければならない。
  第二十一条 事業者が、故意に他人が編造した虚偽情報又は誤解を招く情報を伝播し、競争相手の商標名誉、商品信用に損害を与えた場合、人民法院は不正競争防止法第十一条により認定しなければならない。
  第二十二条 他の事業者とユーザの同意を経ずに直接発生するページ遷移について、人民法院は不正競争防止法第十二条第二項第一号に規定する「強制的にページ遷移を行う」と認定しなければならない。
  リンクの追加のみで、ページ遷移がユーザの自発的なトリガーによる場合、人民法院はリンクの追加の具体的方式、合理的な理由を有するかどうか及びユーザ利益と他の事業者の利益に対する影響等の要素を総合的に考慮して、該行為が不正競争防止法第十二条第二項第一号の規定に違反するかどうか認定しなければならない。
  第二十三条 事業者が事前に明確に提示してユーザの同意を得ることなしに、ユーザを誤解させ、欺き、強迫して修正、クローズ、アンインストール等方式により、悪意で他の事業者が合法的に提供するネットワーク製品又はサービスを妨害又は破壊した場合、人民法院は不正競争防止法第十二条第二項第二号により認定しなければならない。
  第二十四条 事業者が非互換行為を実施し、また以下の条件に該当する場合、人民法院は不正競争防止法第十二条第二項第三号に規定する「悪意の非互換」と認定しなければならない。
  (一)他の特定の事業者に対して非互換を実施する
  (二)他の事業者が合法的に提供するネットワーク製品又はサービスをユーザが正常使用するのを妨害する
  (三)他の事業者が、第三者と協力する等方式によって非互換行為により生じる影響を削除することができない
  (四)合理的な理由を欠く
  第二十五条 事業者がネットワークを利用して生産経営活動に従事し、また以下の条件に該当する場合、人民法院は不正競争防止法第十二条第二項第四号により認定することができる。
  (一)ネットワーク技術手段を利用して実施する
  (二)他の事業者の意思に反してその合法的に提供するネットワーク製品又はサービスを正常に運用できなくなる
  (三)誠実信用の原則とビジネス道徳に反する
  (四)市場競争秩序を乱し消費者の合法的な権益に損害を与える
  (五)合理的な理由を欠く
  第二十六条 事業者が誠実信用の原則とビジネス道徳に違反し、他の事業者が取得したユーザの同意を勝手に使用し、法により商業価値のデータを収集保持し、他の事業者が提供する関連製品又はサービスを実質的に置き換えるのに足り、公平競争の市場秩序に損害を与える場合、人民法院は不正競争防止法第十二条第二項第四号により認定することができる。
  事業者がユーザの同意を取得し、他の事業者が制御するデータを合法、適度に使用し、かつ、使用行為が公平競争の市場秩序と消費者の合法的な権益に損害を与えるかもしれないことを証明する証拠がなく、該データを制御する事業者が不正競争防止法第十二条第二項第四号に規定する行為に該当すると主張する場合、人民法院は一般に支持しない。
  第二十七条 不正競争防止法第二条、第八条、第十一条、第十二条に規定する不正競争行為について、権利侵害により受けた実際の損失、権利侵害者が権利侵害により得た利益が確定し難い場合、人民法院は不正競争防止法第十七条第四項を参照適用して賠償金額を確定することができる。
  第二十八条 同一権利侵害者が同一主体に対し同一時間及び地域範囲で実施した侵害行為について、人民法院が既に著作権、専利権又は登録商標専用権の侵害を認定して被告が経済損失を賠償することを命じ、当事者が、再度該行為が不正競争となることを理由に同一権利侵害者が損失を賠償する民事責任を負うことを請求する場合、人民法院は法により支持しない。
  第二十九条 不正競争防止法第六条の規定により、被告がその企業名称を使用するのを停止又は变更することを命じる訴訟請求を法により支持しなければならないと当事者が主張する場合、人民法院は該企業名称の使用を停止することを命じなければならない。
  第三十条 原告が権益が損害を受けたこと及び権利侵害者を知った又は知るべき日から三年を超え、提訴時に被疑不正競争行為が依然として継続し、被告が訴訟時効の抗弁を提出した場合、損害賠償金額は、原告が人民法院へ提訴した日から過去に向かって三年推定して計算しなければならない。
  第三十一条 不正競争行為により提起された民事訴訟は、不正競争防止法第二条、第六条から第十二条までに規定する侵害行為地又は被告住所地の人民法院が管轄する。
  侵害行為地は、侵害行為実施地、権利侵害結果発生地を含む。当事者が、ネットの購買者が任意に選択したネットの貨物受取地を権利侵害結果発生地とすることができると主張した場合、人民法院は支持しない。
  第三十二条 不正競争防止法第二条、第六条、第八条、第九条、第十一条、第十二条に規定する不正競争民事第一審案件は、一般に中級人民法院が管轄する。各高級人民法院は本管轄区の実際の状況に基づき、最高人民法院の承認を経て、若干の基層人民法院が不正競争民事第一審案件を受理することを確定できる。他の司法解釈に別途規定がある場合、その規定に従う。
  第三十三条 不正競争防止法改正施行決定後に人民法院が受理した不正競争民事案件は、施行決定前に発生した行為に係る場合、改正前の不正競争防止法を適用する。施行決定前に発生し、施行決定後まで継続される行為に関する場合、改正後の不正競争防止法を適用する。
  第三十四条 本解釈は 年月日から施行する。「最高人民法院による不正競争の民事案件の審理における法律適用の若干問題に関する解釈」(法释[2007]2号)は同時に廃止する。
  本解釈施行後終審していない案件は、本解釈を適用する。施行前に終審した案件は、本解釈を適用して再審しない。

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