山口直彦 Naohiko Yamaguchi

日本国弁理士、北京天達共和法律事務所顧問。メーカー知財部、中国大手法律事務所知財部勤務を経て現職。北京での生活は10年以上。コロナで日本へ行けず(苦笑)、Note上で中国の気になる知財判例、ニュースなどを綴っています。また、Facebookでは北京の生活の様子を発信しています。

山口直彦 Naohiko Yamaguchi

日本国弁理士、北京天達共和法律事務所顧問。メーカー知財部、中国大手法律事務所知財部勤務を経て現職。北京での生活は10年以上。コロナで日本へ行けず(苦笑)、Note上で中国の気になる知財判例、ニュースなどを綴っています。また、Facebookでは北京の生活の様子を発信しています。

最近の記事

中国知財 発明者の認定における「実質的特徴」の判断

日中の気温が30度前後と、ようやく暑さが落ち着いてきた北京です。 経済の調子について、明るいニュースがないままですが、スシローがようやく北京に出店したとかで、そこは長い行列になっているようです。 8月27日ー29日の3日間でサリバン米大統領補佐官が中国の外相を訪ねて北京に来ていますが、公共の場で武警が立って衆人監視をしていません。外相レベルの要人なので、警備のレベルがそこまで高くないのかもしれません。 こちらでは、外国企業の中国ビジネス展開を歓迎するため、色々通達が出ている

    • 中国知財 2024年知的財産強国建設推進計画

      花粉症の季節が過ぎ去り、隣家のリフォームも落ち着いて、気温的にも非常に過ごしやすい季節を迎えている北京です。梅雨がないのも助かります。 快適な季節になったので、友人達とBBQをする話もちらほら聞こえてきます。 さて、2024年5月27日付で、国家知識産権局、中央宣伝部、最高人民法院、最高人民検察院、公安部、司法部、商務部、税関総署、市場監督管理総局が連名で「知的財産権保護体系建設工程実施法案」を発表しました。この文書は、前言をみると知的財産権強国建設綱要(2021-2035

      • 中国知財 最高人民法院による知的財産案件法律適用問題年度報告(2023)概要

        GWも終わり、米国の要人もとっくに帰ったはずなのに、相変わらず地下鉄駅構内で武警が衆人監視を行っている北京です。 さて、2024年4月25日、最高人民法院が知的財産案件法律適用問題年度報告(2023)なるものを出しています。 最高人民法院は、毎年この時期に知的財産権10大案例などを出しているのですが、それと別にこういったものも出してきたということで、こうやって蓄積しておいて、後で司法解釈にでもまとめるつもりなのかな?などと考えています。 ちょっと時間があったので、ひとまず、全

        • 中国知財 全国初、悪意先取り商標の譲受人が不正競争をしたと認定

          ようやく中国もGWに突入します。中国は、長期休暇を作るために、その前後の週末からお休みを移動させます。 今回のGWの場合、前後の週末から一日ずつ休暇をもってきて5月1日~5日までを連休にしています。実質1日しか祝日がないのですよね。 さて、4月30日付けの現地知財メディアにて、冒頭の「全国初、悪意先取り商標の譲受人が不正競争をしたと認定」という案例が出てきたので簡単に紹介します。 「上诉人西安元贝科技有限公司、西安热爱科技有限公司与被上诉人南京元贝信息技术有限公司不正当竞争

          中国知財 現地で「グローバル初」と報道される生成AI著作権侵害事件

          昨年末から体調を崩して暫く本業をお休みしていましたが、ぼちぼち復帰しています。4月26日の「世界知的財産の日」を前に、最高人民法院から10大案例やら統計データやらが色々と出てくるので、そちらに手をつける前に本事件の内容を簡単にまとめておきます。 現地では、2月26日あたりからメディアで報道され、色々探したところ、判決文をコピペしたような記事を発見しました(それによると、判決日は2月8日)。以下の内容はその内容に基づいています。 日本では産経新聞が4月16日に報道しています。

          中国知財 現地で「グローバル初」と報道される生成AI著作権侵害事件

          中国知財 ネットワークシステムの域外適用を認めた特許権侵害訴訟判例日中比較

          コロナの「第三波」がちょっと噂になっている北京です。6月に連日40度超えを経験してから、ほぼほぼマスク姿の方をみかけなくなっていたのですが、確かに最近マスクをしている人が多くなってきたような。。。といっても通勤ラッシュ時の地下鉄で、マスク着用率2割くらい、、、という感触ですが。 さてさて、2023年5月26日、日本では、ドワンゴvsFC2特許権侵害訴訟で域外適用(構成要素の一部、例えばサーバ、が海外にあるとき、所定の要件を満たすことにより、属地主義の例外として特許権の侵害を

          中国知財 ネットワークシステムの域外適用を認めた特許権侵害訴訟判例日中比較

          中国知財 北京インターネット法院審判業務ホワイトペーパー(2018.9-2023.9)が発表されました。

          薄曇りで午前中の気温が22度と、すっかり秋っぽくなってきた北京です。 先週末に勤務先事務所で標題の文書が回ってきたので、チェックしてみました。百度で検索すると2023年9月1日に発表されたようですが、当該法院の公式HPを見に行っても8月31日までの記事しか載っていません(謎)。一応、百度上で、北京インターネット法院のアカウント名で発表されているニュース記事へのリンクを貼っておきます。 https://baijiahao.baidu.com/s?id=177574991945

          中国知財 北京インターネット法院審判業務ホワイトペーパー(2018.9-2023.9)が発表されました。

          中国知財 最高人民法院による2022年中国法院10大知的財産案件のご紹介

          忙しさに追われて気付けば4か月近くも知財についてNoteに投稿しておりませんでした(反省)。北京でも日中の暑さが本格化し、5月9日現在において、地下鉄でもエアコンが入るようになっています。 さて、毎年恒例の最高人民法院による前年度の2022年の10大知的財産案件(https://www.court.gov.cn/zixun/xiangqing/397162.html)について、ようやく目を通せたので、ひとまず発表された案例概要を以下に載せておきます。概要を読むだけでは分かり辛

          中国知財 最高人民法院による2022年中国法院10大知的財産案件のご紹介

          中国知財 国務院新聞弁公室新聞発表会 拾い読み

          中国知財の最近の動向を調べるべく、続いての投稿は、2023年1月16日に国務院新聞弁公室が知識産権局の副局長等を招いて発表した2022年知的財産関連業務状況(http://www.gov.cn/xinwen/2023-01/16/content_5737272.htm)についてです。いくつか気になるところを拾い読みします。 ・2022年 授権特許79.8万件(2021年69万件)、実用新案280.4 万件(2021年287万件)、意匠72.1万件(2021年78万件)。 →

          中国知財 国務院新聞弁公室新聞発表会 拾い読み

          中国知財 改正後専利法施行に関する関連審査業務処理暫定弁法

          週末から始まる春節を控え、北京では、スーツケースを持って移動する人々を多く見かけるようになりました。春節は家族の実家である四川省に帰省することも考えましたが、コロナの地方への感染拡大が心配されるので、今回は帰省しないことにしました。 さて、春節前に最近の中国知財の動きをフォローしておきます。一つ目は、国家知識産権局が1月5日に発表し1月11日から施行された、改正後専利法に関する関連審査業務処理暫定弁法(国家知識産権局公告第510号)です。2021年6月に専利法が施行されるタイ

          中国知財 改正後専利法施行に関する関連審査業務処理暫定弁法

          北京のコロナの話少し、中国知財 現地知財メディアが紹介する2022年の事件

          コロナの感染爆発が少し落ち着いた北京です。現地にいる私の個人的な感覚としては、2022年10月中旬に現政権の3期目が確定したあたりから、コロナ政策は変わらないと人民が失望し、開き直ったためか、はたまた、オミクロンの感染力が強すぎたのか、感染がくすぶり始め、厳重な対応の甲斐なく、11月下旬には実質的に制御不能状態(陽性患者が出た建物を封鎖すると、封鎖する団地やスーパーが多すぎて、最も基本となる食料の流通にすら支障が出る)となり、デモも相まって、政策転換した、、、ように思えます。

          北京のコロナの話少し、中国知財 現地知財メディアが紹介する2022年の事件

          中国知財 「知的財産保護の強化に関する意見」推進計画を発表

          11月15日を待たずに、住んでいる公寓(アパートメント)や職場で集中暖房が点いたので、家の中が快適になった北京です。ただかなり乾燥するので静電気には要注意です。 さて、2022年10月31日付けで、国家知識産権局が専利審査指南の再度の意見募集稿を公開していましたが、その同日に「知的財産保護の強化に関する意見」推進計画が発表されていたので、Note記事に少しだけまとめます。 本推進計画では114項目に亘って、知的財産に関してどんなことを行うのかが記載されています。興味深いのは

          中国知財 「知的財産保護の強化に関する意見」推進計画を発表

          中国専利審査指南の改正草案(再度意見募集)が発表されました。その2

          前回記事では、2022年10月末に発表された審査指南の改正意見募集稿について、同日に発表された「改正の説明」に基づいて、48項目の改正点を列挙しつつ、ある程度改正内容を日本語訳して説明しました。 一方、いくつかの新制度に関しては、改正の修正履歴が一章まるごとに及ぶなど、他の細かい修正とひとまとめにして紹介するのが難しかったため、今回は、「その2」としてこの修正履歴が長い箇所についてまとめます。 先に結論を書くと、読み込みには相当時間を使った割には、、、読み手として「これは!」

          中国専利審査指南の改正草案(再度意見募集)が発表されました。その2

          中国専利審査指南の改正草案(再度意見募集)が発表されました。

          朝の冷え込みが最早冬を感じさせるようになり、家の中の寒さも結構厳しくなってきました。中国の暖房は中央管理になっていて、北京では一般に11月15日にならないと暖房が点かないので、後10日間、我慢して寒さを凌がないといけません。 さて、2022年10月31日付けで、国家知識産権局から審査指南の再度意見募集稿が発表されました。 https://www.cnipa.gov.cn/art/2022/10/31/art_75_180016.html そもそも改正専利法が2021年6月1

          中国専利審査指南の改正草案(再度意見募集)が発表されました。

          中国知財 中国で最も知名度のある「三体」SF小説著作権侵害案 判例解説

          第20回共産党大会も過ぎ、すっかり秋も終わりに近づいた2022年11月間近の北京です。ようやく公共の場のあちこちに立っていた、大衆を監視する方々もいなくなり、いつもの街の風景に戻っています。 さて、最近現地で注目を集めた著作権侵害事件を一つを紹介します。注目を集めたのは、侵害対象が中国で一世を風靡した国産SF作品「三体」に関する著作権侵害事件だったからで、一審、二審法院は、被告プラットフォーム業者(ネットワークサービス提供者)荔枝公司が、原告警告後も持続してプラットフォーム

          中国知財 中国で最も知名度のある「三体」SF小説著作権侵害案 判例解説

          中国知財 様々な文書の中で出てくる「高価値発明専利」とは?

          これも内容としてはかなり時間が経っているものですが、何度か政策文書で関連する表現を目にしたこと、また、これまで、国家知識産権局内で指標として用いられるものと思っていたのに、北京市高級人民法院の懲罰的賠償に関する文書中でも「高価値発明専利」の語が出現したことから、この機会にメモ代わりに少しまとめてみることにしました。(随時更新予定) 1.「高価値発明専利」の表現が出てくる文書 知的財産高品質発展推進年度業務ガイドライン(2019)において、「高価値専利審査周期を2018年の

          中国知財 様々な文書の中で出てくる「高価値発明専利」とは?