見出し画像

折坂悠太「さびしさ」について#05

折坂悠太が2018年にリリースしたアルバム『平成』。そこに収録された「さびしさ」という曲について、思いを巡らせ、書き綴っていくシリーズです。

自分があまりにも遅筆で時間が経ち過ぎてしまい、その間に、「 抱擁/櫂」のリリースがあったり、重奏編成での音源公開(しかも動画)やライブ、さらには新曲「朝顔」の月9ドラマタイアップなど、折坂悠太は一気にシフトアップしてトップスピードに達しています。

だから、もう「さびしさ」についてウダウダと書き綴ってる場合ではないと自分でも思うのですが、最後にこの1枚の写真を。

2018年11月22日、折坂悠太 “平成” Release Tourの初日、名古屋Live & Lounge Vioでのワンマンライブ。終演後になんとなくステージを見に行ったところ、マイクスタンドの足元に見つけたものです。セットリストというか、進行カンペですね。

これを見て、あっ!と気づいたことがありました。アンコール後の1曲目、「あけぼの」と書いてありますが、実際に演奏されたのは違う曲。もうその時の記憶もかなりあやしいのですが、アンコールに応えて、折坂悠太はギターを抱え(既に鳴らしながらだったかもしれません)ひとりでステージに戻ってきました。そして歌い出したのは誰もが知っているこの曲、THE BOOMの「風になりたい」だったんです。

大きな帆を立てて あなたの手を引いて
荒れ狂う波にもまれ 今すぐ 風になりたい

天国じゃなくても 楽園じゃなくても
あなたに会えた幸せ 感じて 風になりたい

何ひとついいこと なかったこの町に
沈みゆく太陽 追い越してみたい

「風になりたい」(作詞:宮沢和史)より一部引用

本編の最後に「さびしさ」を歌い、風を呼びに行くかのようにステージから去り、アンコールが湧き上がり、そして戻ってきて今度は自らが「風になりたい」と歌った。ああ、そういうことか、と恥ずかしながら後になって気がつきました。

もう一歩踏み込むと、もしかしたら「さびしさ」は最初から「風になりたい」を意識していたのかもしれません。アンサーソングというと変な感じですが、「さびしさ」が「風になりたい」のエピソードゼロのようにも思えます。

どのタイミングで「あけぼの」から「風になりたい」への変更を決めたのか、もちろんそれは分かりませんが、その夜、その会場で歌われた「さびしさ」を、そこに居合わせたオーディエンスと共有できたという手応えを折坂悠太は感じたのではないでしょうか。「風になりたい」と歌う勇気がまさにそこで生まれたのであって欲しい、とファンとしては願ってしまいます。


折坂悠太「さびしさ」について、5篇+番外1篇をだらだらと書いてみましたが、今回で終わりです。現時点で延べ580のビューがありました。こんな文章をここまで読んでいただいた皆さま、ありがとうございました。

すばらしい曲。ずっと聴いていきたい。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?