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殺さずの少年

自分に向けるもっとも攻撃的な行為は唇を噛むことである。
無意識でも意識的にでもこれはストレスの極地に達していると言えるだろう。
無論、自分に向ける最大の攻撃は自殺であるが、
(マンウォッチング 人間の行動学より)

少年は自らの頭蓋にピストルを当てる。
今まさに引金を引こうとしている。
たった今 白い部屋の中で1人の少年がピストル自殺をしようとしている。
今、この少年にはそれが最善策、否 それしか方法が考えつかないのである。
他に考えつく事と言えば、2つ。
その1 先に己の手のひらを撃ち抜き、その痛みのうちに頭をぶち抜くこと。
その2 ピストルを直接頭に付けていると恐怖でとても引き金を引く気になれない。
いや、待て。ピストルは銃火器だ、飛び道具だ。頭から数十センチ離したところで死ねる事には変わらないんだ。頭から離すことで(精神的に)もっと楽に死ねると少年は考えた。いずれにしてもその少年のゴールは死ぬことだった。

いやまて!少年は手を止めた。
ふぅ、良かったと思うのもつかの間、
少年はいつの日かテレビで観た東洋のとある戦士たちの名誉ある死に方を思い出していた。
ーー切腹だ。

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