曾良の正体『奥の細道』の真実~読書記録280~
2022年に刊行された、俳人の乾佐知子さんの研究書だ。
諏訪の商家の長男として生まれたにもかかわらず、
次々と養子に出され、久松松平家の家臣となる。
その後、幕府の諜報員として全国を飛び回る。
『奥の細道』の旅も諜報活動の一環だった。
この男はいったい何者なのか――。
曾良の生涯を「家康の六男・松平忠輝の落し子」説に沿って辿ることで、
旅の出立をはじめ、仙台藩での湯ざまし事件、村上に滞在した三日間など、
これまで謎とされてきた旅の真相が解き明かされる。
史実を辿ることによって日本最高の古典の理解が深まる。
曾良は、松尾芭蕉の弟子の1人で、「奥の細道」に同行した。その時に、金銭面他、全てを曾良が工面したというのは有名である。
著者は、「曾良は、戸籍の上では繋がりがないが、家康の息子が、妻以外の女性に産ませた息子」であるという自説を強く持っており、そこからの推測から成り立っている本である。
実際は、どうなのであろうか?昔の事で、本当の事はわからない。
だから、あくまでも、1つの説として読む推理物のような気もする。
奥の細道の旅には、徳川光圀が深く関わっていたという説も面白いと思った。
徳川幕府がこれから、という時期に、諜報部員がいたというのは、あながち真実であると思う。謀反を起こすような地方の大名の動向を探りたいのであるから。
徳川光圀と言えば、昭和生まれの人にはドラマ「水戸黄門」だ。
実際の光圀は、全国各地を廻るなどは出来なかったであろうが、自分が信頼する人間に情報部員として各地の状況調査を託したのかもしれないと思う。
少し難解な書であった。江戸時代に書かれた古文がそのまま、ふりがななしであった為、読みにくい。多分、一般人ではなく、研究者向けに書かれたものなのだろうと思う。