ロング・グッドバイ レイモンド・チャンドラー 村上春樹訳~読書記録382~
ロンググッドバイ レイモンド・チャンドラー 村上春樹訳
『ロング・グッドバイ』は別格の存在である。
そこには疑いの余地なく、見事に傑出したものがある。――村上春樹(「訳者あとがき」より)
社会現象となった『長いお別れ』新訳版、文庫に登場。
1958年に清水俊二訳で日本に紹介されたが、2007年に村上春樹訳で新たに創刊された。
1949年の秋。私立探偵フィリップ・マーロウは、片面に傷を持つ男、テリー・レノックスという酔っぱらいと出会う。どこか品性のあるレノックスに惹かれるものを感じて友人となったマーロウは、毎晩バーを共にするようになる。1950年6月の深夜、レノックスはマーロウの自宅を訪れるとメキシコのティフアナに連れて行って欲しいと頼み込む。詳細は聞かず、言われた通りにメキシコに彼を送り届けたマーロウであったが、ロサンゼルスに戻ると待っていたのは、妻殺しの容疑でレノックスを捜している警官であった。マーロウは殺人の共犯者として逮捕され取り調べを受けるが、レノックスを庇って黙秘を通し、反抗的な態度も手伝って警察から手酷い扱いを受ける。しかし3日目、メキシコからレノックスが自殺した旨の情報が届き、マーロウは釈放される。彼が呆然として家に戻ると「ギムレットを飲んだら、僕のことはすべて忘れてくれ」と書かれたレノックスからの手紙が届いていた。
しばらくしてマーロウは、ある出版社から失踪した人気作家ロジャー・ウェイドの捜索を依頼される。依頼を受けるか迷うマーロウであったが、やがてウェイドはレノックスの隣人であったことを知る。さらに彼の妻アイリーンからも頼まれ、渋々引き受けたマーロウは、アルコール中毒のウェイドを発見し、連れ帰る。その後、見張り役としてウェイド邸に留まることとなったマーロウは、アイリーンから誘惑され、彼女が第二次世界大戦で10年前に亡くなった恋人のことを今も深く愛していることを知る。
主人公マーロウの魅力。それに惹きつけられてしまう者は多くいるだろう。アメリカのみならず、日本でも多くのファンがいるわけだ。
やはり、この作品は一人称を用いることに意義があるのだな。マーロウの目を通しての描写。読者はマーロウと一体化してしまう。
フィリップ・マーロウを日本に紹介してくださった翻訳家の清水俊二氏は本当に素晴らしい、と個人的に思うのだ。
村上春樹がマーロウを初めて読んだのは清水俊二氏の訳であり、それからチャンドラーに魅了されていったわけだ。私は、村上春樹は、フィッツジェラルドやチャンドラーなどのアメリカ人作家の影響を村上春樹に感じる。
又、とうに亡くなられたが、仁木悦子氏もマーロウ探偵を愛する1人だった。やはり、清水俊二氏訳だ。
けれども、村上春樹が書いているように、翻訳は年数が経ったら改めるべきなのだろう。それでも、旧い訳がいいという人は個人の自由であるが。
埋もれてしまった旧い作品は言い回しに苦労するのだ。
前に読んだ作品よりも数段上と思ったのは、「え?結局何だったの?」がなかったことだ。どうやって殺したの?密室殺人の謎がわからん、と言うのは少しあったものの。ただミステリーのストーリーを追いたい人には最高だと思う。ああ、やはり、テリー・レノックスは生きていたのか。とか納得がいく結末だった。
解説にはなかったが、北、南と広大なアメリカ大陸について詳しく知っているならもっと楽しめたのかなとも思った。何故なら、私は実はメキシコという国については殆ど無知だ。南アメリカについても違いがわからない。
そんな事もあるが、単純に物語を楽しめた。