『変な家2』 11軒の間取りを巡る謎
前作『変な家』に続いて、さまざまな家の間取り図をもとにその家の抱える問題や家族を襲った事件を追いかけるうちに、11件の案件から次第にある繫がりが見えてくる。
ここ数年の流行である「モキュメンタリー」と呼ばれる手法で書かれた作品。著者が経験したという現実味のある物語が進行していく。映画で言えば『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』から始まったPOV(Point of View)は、一大ブームを巻き起こし、『パラノーマル・アクティビティ』や『REC』のような作品を生み出した。このような作品も「モキュメンタリー」と呼ばれている。「モキュメンタリー」とは「モック」と「ドキュメンタリー」を合わせた造語で、ドキュメンタリーの手法でフィクションを語るものという意味で使われている。
個人的にはめちゃくちゃ好きな分野なのだが、小説はそもそもフィクションをあたかも事実のように書くものとも言えるので、親和性は高い。「モキュメンタリー」かどうかは、その「モック」(フィクション)の部分が「リアリティがあるかどうか」にかかっている。著者もしくは実在の人物(と思わせる架空の人物である可能性もある)が、実際に経験したかのように書かれたものは、その内容がひょっとすると事実かもしれないと思わせる説得力を持つ。
『近畿地方のある場所について』もそうだが、実際にあったかのように書かれたいくつかのテキストが、徐々にひとつの大きな物語に繫がっていく面白さは、ミステリーの根源にある楽しさに共通するものがある。
『変な家』シリーズと『変な絵』では、「栗原」という建築士がミステリーでの探偵役として登場する。洞察力が鋭く、間取り図や絵を見ながら推理を披露するのだが、やや万能すぎるぐらい有能である。広げた風呂敷を畳むスピードがあまりにも速い。著者が間取り図や絵を持っていくと瞬時に悩みを解決してくれるのである。ミステリーだと割と早い段階から探偵が登場したり、なんなら事件発生前から現場に居合わせたりするのだが、栗原氏は順繰りに示される資料が示された後に登場して、さらっと資料を見ただけでスラリと解決してしまうのである。欲を言えばもう少し悩んで欲しいものだが、そこをスッと解決してしまうことでそこに潜む「後味の悪さ」を飲み込みやすくさせているのかもしれない。
この作品(と『変な家』、『変な絵』)は中学2年生の息子が読みたいと言って購入したもの。息子から本を勧められるようになるというのはなかなかに感慨深いものである。