学術大会に参加しよう
積聚会会長(当時) 小林詔司
『積聚会通信』No.32 2002年9月号 掲載
現在私は 4 つの学会に所属している。全日本鍼灸学会、日本伝統鍼灸学会、日本刺絡学会、日本東洋医学会であるが、そろそろ日本代替医療学会にも参加しなければならないかと思い始めている。学会とは主に鍼灸の理論的なことを追及している者の情報交換の場であるが、それ以外に身分法に基づく業に関係した団体として日本鍼灸師会、全日本鍼灸マッサージ師会があり、それらにも属している。さらには積聚会などの任意の研究会にも属している。
日頃の学会活動は、全日本鍼灸学会の千葉地方会、日本伝統鍼灸学会であり、学術大会にはこの2学会の他に日本刺絡学会のものにも顔を出す。全日本鍼灸学会には関東甲信越支部の大会もあり、学術大会と称する集まりは、少なくとも年 4 回ある。会費等の年間の経費はいわずもがな、参加費なども含めると出費は冗談事ではない。
さてどうしてこういう事態になったかと、ときどき思うことがあるが、今日ある私はこれらの学会のお蔭であることから逆算すると、何か自分の知らないことが一言でも発言されるのではないかという好奇心のなせる技といわざるを得ない印象がある。
余り付きあいの良くない私でも色々な人との交わりがだんだんと多くなり、それだけ色々な意見を拝聴する機会も増え、自分の考えていることやしていること、あるいはやろうとしていることの価値評価をある程度客観視することができる。
特に学術大会の場は、すくなくとも数百人、多ければ数千人の人でにぎわうが、そこで発表される内容は、どんなに陳腐と思われてもかなり時間をかけて準備されたものであり、同じことは他の誰にも出来ないことである。時には陳腐であると認識できること自体が価値あることでもある。
これからは情報の時代といわれる。これは間違いないが、いくら IT が発達するといっても数千人の持つ情報を1人で集めることは不可能である。また情報は一旦人の脳に入るとそこには想像できないような付加価値が付きその人の口から発信される。これはじかに生で聞かないと理解できないことである。
最近の患者さんの情報の豊かさにも驚かされる。初対面でも、難しい病症を抱えている患者さんほど自分の病についての医学的な知識は多く、彼らから教えられることもしばしばである。
しかし確かに情報は新しいほど価値が高いが、真の価値はその応用性にある。その応用力を養うには、常に同じ問題を考えている鍼灸人という同輩と交わることが必要なのである。
さて今年私は、日本伝統鍼灸学会の第 30 回、30 周年記念大会の実行委員長を仰せつかっている。
積聚会のみなさんもこの学術大会参加を契機にして、是非学会活動に目を向けていただき、積聚治療をさらに深めると同時に日本の伝統鍼灸を一層追及してもらいたいと願っている。