僕らの”原風景”と、シェイクスピアの”言葉”とが出会う時を、探してる。
僕は、ずっと探してる。
見つけては、なくして。なくしては、見つけて。
手に入れたと思ったら、ふっと消えて。
消えたと思ったら、ある瞬間に目の前にあって。
生き生きとしたエネルギーに満ちてたかと思うと、それはもうそこにはなくて。
空虚な抜け殻だけが無残にあり、そうかと思うとオギャーと産まれて。
それは、なんだ。
俳優が、シェイクスピアの言葉と出会う、奇跡の瞬間だ。
目の前の空間が紛れもなく、ヴェローナで。
目の前にいるのが紛れもなく、ロミオとジュリエットで。
目の前に、キャピレットが、モンタギューが、神父ロレンスが、マキューシオが、乳母が、ピーターたちが、生息し、血肉を通わせ、彼らの人生が一つひとつ積み重なっていく、そんな瞬間の無限の連続が紛れもなく目の前にある。
そんなもう一つのセカイを僕は探している。
想像してほしい、ロミオとジュリエットが、まさに目の前で、果てしない愛の旅に出る姿を。
僕は、いつまでも探すだろう。
その探しながらの旅の途中。
僕はいつの間にか、”原風景” という言葉を口にしていた。「ブレス」「音のつながり」「発声」「リラックス」とか、「シーンイメージ」「関係性」「ドラマツルギー」「サブテクスト」とか、「韻律の多様性」「リアリティ」「立ち姿」「腰の坐らせ方」「意識の分散」とか、そういう具体的な演技の基本と同時に、実践的に稽古する中で、いつの間にか、「”原風景”でシェイクスピアの詩と出会ってほしいんだ。」と説明するようになった。それも、数学の解を導く論理的計算の帰結として、理知的に。それでいて、ゴッホがうねる空を描くように、叙情的に。そのような言葉を使うようになった。
"原風景" だなんて、個人の最も自由で、最も根源的な部分にまで踏み込むことを、ためらわないわけではない。
でも、俳優一人ひとりの、”原風景”から、激しい「なにか」を希求するイメージが溢れていくときに、TOKYOで呼吸する21世紀の僕たちが、シェイクスピアの言葉と出会って、人間と世界の本質が広がる時空へとダイブできる。そんな可能性を強く感じている。
ふとした瞬間、スマートフォンを使うように、軽々とシェイクスピアの核心へアクセスできることがある。
その時、タップするのは、心の奥深くにある、野性だったり、欲望だったり、孤独だったり、希望だったり、哀しみだったりする。それは、僕たちの "原風景" にある。
演劇は、スリリングで、クールで、エネルギッシュだ。
過去を経由しながら、未来に向かって猛スピードで走っている。
演劇は、最古端で、最先端で、最強に面白い。
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橋本 治さんの本を読んだり、プレゼントしてもらったり、ほぼ日のシェイクスピアの学校で講義や講演を聞いたり。僕は、まだ橋本さんのことをほんのちょっとしか知らないけど、そのちょっとがずっと気になってて、いつかもっと深くへ、と思っている。もっと深くへ。「古典ってめんどくさいもの」とか、蜷川シェイクスピアの話とか、目の前にいる橋本さんから聞いた言葉を反芻しながら、今、電車に揺られてる。
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【2019年1月26日 10:00 チケット発売開始】
カクシンハン・スタジオ 第1期 修了公演
「ロミオとジュリエット」
公演日時:2月23日(土) 18:00、2月24日(日) 13:00
会場:シアター風姿花伝
チケット発売はこちら![Web予約フォーム]
公演詳細はこちら![カクシンハンWebサイト]
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カクシンハン・スタジオ(演劇研修所)
2019.4 第2期スタート!
【第2期生募集】
一次募集期間:1月10日(木) – 1月31日(木) 必着
二次募集期間:2月10日(日) – 3月 4日(月) 必着
カクシンハン主宰・演出家の木村龍之介をはじめ、カクシンハンの俳優および現役で活躍する講師陣が教える、俳優・アーティストのための実践的な育成・研修機関です。
応募についてはこちら![カクシンハンNEWS]