「若き」俳優へ
ぼくらのひそやかな楽しみは、言葉とともにポケットの中にある。
どんな言葉をみんなはポケットにしまっているだろうか?
風が吹く、嵐が起こる、雨がザーザーぶりになっても、僕らのポケットの中身はいつだってほんのり温かい。そのポケットの中身を大切にすることもまた、大いなる僕らの仕事だ。
レーザー光線のように走り去る毎日を、颯爽と駆け抜ける毎日。ポケットの中にしのばせた言葉たちが踊っている。
僕は、本が好きだ。言葉は嘘もつくし、ぐさりと突き刺しもするし、勇気づけたり、優しくしてくれたりもする。
本を読め、なんて言わなくたって、ぼくらは勝手に本を手に取るんだ。そこで得た言葉をポケットにしまってさ、ちょっと外を歩いてみよう。
もう、ぼくたちは詩人だ。
そこの詩人さんよ、そのポケットに忍ばせた言葉を、現実という世界に解き放っておくれ。
詩人に行動がともなったら、俳優だ。
シェイクスピアを読んでいると、ポケットの存在を思い出す。そのポケットになにをつめようか。
言葉をちょっと入れてみよう。
俳優のはじまりはそこからだ。
2021.09.06
追伸:カクシンハン・スタジオという俳優養成所をはじめて、4年が経とうとしている。コロナの時代を生きながら、ちょっと思いを込めてリスタートしています。