#323 なぜ労働時間は1日8時間、週40時間なのか?
労働基準法では、労働時間は1日8時間、1週間に40時間までと定められている。そもそも労働時間はなぜ1日8時間、週40時間が基準となったのだろうか。
その基準がつくられたのは、産業革命期のイギリスである。
産業革命によって多くの労働者が工場で働くようになったものの、最初は何の制限もなかったので、長時間働かせれば働かせるだけ、工場の生産性が上がると考えられていた。
しかし、長時間労働はかえって生産性を低下させることが分かり、さらに人権上の配慮から、1日8時間労働を求める声が高まっていった。
19世紀のマルクス主義の広まりも相まって、1886年にはシカゴで1日8時間労働を求める大規模なストライキが起こった。
これが「メーデー(労働者の日)」の起源となっている。
さらに、1917年には、ロシアで8時間労働が法制化された。
その後、1919年に国際労働機関(ILO)第1回総会で「1日8時間・週48時間」という国際的な労働基準が確立された。
日本でも、1919年に神戸市の川崎造船所(現・川崎重工業)神戸工場ではじめて8時間労働が導入された。
週40時間労働の先駆けとなったのは、アメリカの大手自動車メーカー「フォード社」。
創設者のヘンリー・フォードは「労働者の余暇時間を増やすことは、消費の拡大と生産の拡大をもたらす」と考え、週休2日制を採用した。
週休2日の起源は宗教にある。
キリスト教では、日曜日は安息日とされている。その教えを厳守するキリスト教徒の運動によって次第に日曜日が休日とされるようになっていった。
しかし、ユダヤ教徒の安息日は土曜日だった。
そこで、20世紀初頭に労働者に配慮して土日を休みにする工場があらわれはじめ、フォード社が週休2日制を採用したことで一般的になっていった。
1935年に労働時間を週40時間以内にする条約がILOで採択され、1957年に発効した。
日本では、1947年に労働基準法が制定され、当初は1日8時間、週48時間が基準となっていた。
1987年に週40時間の基準が目標化され、1993年に週40時間労働制が適用されるようになった。
現在の1日8時間、週40時間が当たり前になったのは30年前。
それでも日本の労働者は働きすぎだと言われている。
労働時間の基準は社会全体の意思の変化を象徴している。
【参考】
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