
映画『フレンチ・ディスパッチ』 ② 【ネタバレ感想】 キャスト以上にスタッフを賞賛したい!
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ここでは、ネタバレ感想①に続いて、キャストとスタッフについての感想をつづっていきます。
■ 豪華キャストっぷりがハンパない
キャストの名前が私の頭からは出てきませんでしたが、豪華キャストでしたでしょう。よー知りませんが(いいかげんにしろ)。ウェス・アンダーソンが名実共に認められている証(あかし)と言ってよいでしょう。
ウェス・アンダーソン作品の常連ビル・マーレイ、オーウェン・ウィルソン、ジェイソン・シュワルツマン、エドワード・ノートンや、今を輝くティモシー・シャラメ、フランシス・マクドーマンド、レア・セドゥも参加。
私が鑑賞したシネコンでの上映回では、4割ほどが女性客な印象だったので、さすがオサレ映画のウェス作品だと思いましたが、ティモシー・シャラメのファンだったのかも。
エイドリアン・ブロディ、ティルダ・スウィントン、ウェレム・デフォーもウェス・アンダーソンの過去作に出演しています。信頼関係ができているのでしょう。
近年のハリウッドメジャー作品でも見かけるベニチオ・デル・トロは、ウェス作品には新顔。ウェス・アンダーソンは以前からベニチオ・デル・トロで撮りたいと思っていたとのこと。そんな監督愛しのデル・トロの演技は、物静かな天才画家にして狂犬。容赦なく暴力を振るい殺人を犯す役にハマってたなぁ。
ウェス・アンダーソン作品のキャラクターあるあると言えば
・無表情、無口、感情をあまり表に出さない
・たたずまいだけで存在感をだす
・目の動きだけで演技
・気だるい感じ
・間をとってしゃべる
・早口でしゃべる
・大人になりきれない大人
こんな感じで、キャストは他のハリウッド作品(同じようなキャラクターもいるとは思いますが)とは趣(おもむき)が違う演技を求められるはず。ウェス作品ではやっぱ独特さが目立ちます。
感情を表に出さない静的キャラクターと感情的な動的キャラクターとのかけあいによる緩急。あるいは、ひとりの静的キャラクターが時折秘めた情熱を見せることで緩急をつけて面白くするシーンもあり。
それらが織り成って、あの独特なオフビートな笑いが創り出される。普遍的な感情の流れもあるから、そこはかとなくリアリティも感じられます。
そんなキャラクター演出ついての一部始終が、ファッション系情報サイトELLE(エル)のWEB記事に載ってたティモシー・シャラメのインタビューから垣間見れます。
ウェス・アンダーソン監督の妥協しない映像づくりと、それに応える役者とのセッション。単純な歩きのカットでも、何十回もリテイクするため、やはりハードの様です。脚本も各演者本人が関わる部分しかわたされない模様。
監督のイメージ通りを求めつつ、計算だけの演技をさせないためなのか。それとも、役者にただただイメージ通りに動いてもらうためかもしれない...。
そんな演出をされた人物描写は、どこか漫画やパペットアニメーション的なコミカルさがあったり、割とナレーションで説明されたり。
独特な映像演出に関しては、ウェス・アンダーソンが敬愛している1900年代初頭の映画創成期の作品から、ヌーベル・ヴァーグやジャック・タチなどの影響が大きいのかもしれませんね。
主なキャスト
ビル・マーレイ:アーサー・ハウイッツァー・Jr
編集長
当然なんだけど、もうおじいちゃんだなぁ。何とも言えない静かな演技に匠とユーモアが醸された演技力を感じます。
ジェイソン・シュワルツマン:エルメス・ジョーンズ
風刺漫画家
もっと出演シーンがみたかった。
〈1つ目の記事 自転車レポーター〉
オーウェン・ウィルソン:エルブサン・サゼラック
自転車レポーター
もう、おちゃめな役が似合うんだから。
〈2つ目の記事 確固たる(コンクリートの)名作〉
ベニチオ・デル・トロ:モーゼス・ローゼンターラー
殺人で投獄中の芸術家
怖いと言うより、困ったちゃんといった印象。
レア・セドゥ:シモーヌ
看守
個人的には、過去作で無表情っぽいというか困り顔っぽいというか、そんな印象の美人さんなので、今作の寡黙で目で演技するキャラはハマり役に感じました。
エイドリアン・ブロディ:ジュリアン・カダージオ
美術商
早口で頭の良いキャラがお似合い。
ティルダ・スウィントン:J・K・L・ベレンセン
記者
説得力ある演技。
〈3つ目の記事 宣言書の改定〉
フランシス・マクドーマンド:ルシンダ・クレメンツ
ジャーナリスト
無表情なコミカルさもったキャラ。意味深な赤色のコートもばっちり着こなし、ノマドランドの時よりかなり若く見えました。
ティモシー・シャラメ:ゼフィレッリ
学生
シャラメの爆発へアーとヒゲ! 感電前から何かに感電してたんだよきっと。ヒゲだけでもキュンとしたファンもいたんじゃないかな。
リナ・クードリ:ジュリエット
会計士
初めて知る女優さん。かわいらしさあふれる人。
〈4つ目の記事 警察署長の食事室〉
ジェフリー・ライト:ローバック・ライト
祖国を追われた記者
堅物、辛辣な評論家な印象だったが、やさしい、でもクセの強い記者で面白かったです。ジェームズ・ボールドウィン、テネシー・ウィリアムズ、A.J.リーブリングがモデルるらしいです。
マチュー・アマルリック:警察署長
息子を誘拐された警官
ヒゲがコミカル。
スティーヴン・パーク:ネスカフィエ
料理人
ニューヨークのブルックリン生まれの韓国人だそうです。役柄の印象は強くは見えないが、何か力を隠し持っている感じ。丸メガネと前髪ぱっつんが見事にハマって、存在感バツグン。
エドワード・ノートン:運転手ジョー
誘拐犯
個人的には久しぶりに見た気がして、うれしくなりました。
シアーシャ・ローナン:誘拐犯
アジトの踊り子
シアーシャ・ローナンだと気づかなかったです。そのせいもあってか個人的にはちょい役に感じてしまって。それでも物語をひきたてる存在感を感じました。
ウィレム・デフォー:アバカス会計人
囚人
ウィレム・デフォーだと気づかなかった。ほぼ、つかまってるだけなのに、面白い演技をでした。
ワチャ「たくさんの豪華キャストが個性的なキャラを演じみせて、楽しかっただろ?」
ハッセー「そうだな。はっ!? 猿発見!」
ワチャ「エッ?」
ハッセー「この野郎! 人間様を馬鹿にしやがってー!」
ワチャ「あ、捕まえた」
ハッセー「あっ!?、おじいさんだ」
ワチャ「ビル・マーレイだよ! 失礼だろ!」
■ キャスト以上にスタッフを賞賛したい!
ウェス・アンダーソン映像あるある。
・シンメトリー
・特殊な舞台セット
・ナチュラルな色合いから白黒まで取り入れたカラフルさ
・アニメーションを使う
・画角まで変える(前作『犬ヶ島』でも画角を3形式も使っていた)
こんな感じで、1つの映画に様々な映像表現を織り込むなんて、奇をてらった逆にダサい演出になりそうじゃない? へんちくりんなものになりそうじゃない?
ところがどっこいウェスの手にかかると、唯一無二の調和をもった映像に仕上がる。美と創意工夫に満ちた作品に!
いやいやまて。そんな高次元な具現化を可能にしているのが、ウェスの優秀なスタッフでしょうが! 時には役者以上に根気よく監督のオーダーに応えていますよ、きっと。
ってことで、ウェス・アンダーソン自身が信頼している主なスタッフ名を記載。
担当された作品名を多めに載せてみました。
撮影監督:ロバート・イェーマン
担当作
『マンマ・ミーア! ヒア・ウィー・ゴー』2018年
『ゴーストバスターズ』2016年
『グランド・ブダペスト・ホテル』2014年
『デンジャラス・バディ』2014年
『ムーンライズ・キングダム』2013年
『ブライズメイズ』2012年
『ローラーガールズ・ダイアリー』2010年
『イエスマン』2009年
『ダージリン急行』2008年
『イカとクジラ』2006年
『ライフ・アクアティック』2005年
『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』2002年
『天才マックスの世界』1998年
『アンソニーのハッピー・モーテル』1996年
『ドラッグストア・カウボーイ 』1990年
キーグリップ/ステディカム:サンジェイ・サミ
この方はパンフレットに名前はあっても経歴は載っていなかったです。ネットでも経歴は見つられていません。
美術:アダム・ストックハウゼン
担当作
『ウエスト・サイド・ストーリー』2022年
『犬ヶ島』2018年
『レディ・プレイヤー1』2018年
『ヤング・アダルト・ニューヨーク』2016年
『ブリッジ・オブ・スパイ』2016年
『グランド・ブダペスト・ホテル』2014 アカデミー賞美術賞
『それでも夜は明ける』2014年
『ムーンライズ・キングダム』2013年
衣装:ミレーナ・カノネロ
担当作
『グランド・ブダペスト・ホテル』2014年 アカデミー賞衣装デザイン賞
『おとなのけんか』2012年
『マリー・アントワネット』2007年 アカデミー賞衣装デザイン賞
『オーシャンズ12』2005年
『ゴッドファーザーPARTIII』1990年
『炎のランナー』1982年 アカデミー賞衣装デザイン賞
『シャイニング』1980年
『時計じかけのオレンジ』1972年
音楽:アレクサンドル・デスプラ
担当作
『ストーリー・オブ・マイライフ わたしの若草物語』2020年
『ペット2』2019年
『シェイプ・オブ・ウォーター』2018年 アカデミー賞作曲賞
『グランド・ブダペスト・ホテル』2014年 アカデミー賞作曲賞
『ヴァレリアン』2018年『ペット』2016年
『リリーのすべて』2016年
『イミテーション・ゲーム』2015年
『GODZILLA ゴジラ』2014年
『ゼロ・ダーク・サーティ』2013年
『アルゴ』2012年
『おとなのけんか』2012年
『ゴーストライター』2011年
『英国王のスピーチ』2011年
『ベンジャミン・バトン』2009年
『スズメバチ』2002年
この優秀なスタッフの力があってこそ、ウェスの独創性が具現化されているのです。
暖かみを感じる色彩とサントラが流れるシーンや、モノクロ映像や緊張感あるサントラが流れるシリアスなシーンがバランス良く織り成され、ビジュアルにもストーリーにもコントラストのあるユーモアが溢れた映画に仕上がっていますね。
今後も彼らの担当作に注目したいです。
ハッセー「猿、どこだー!」
ワチャ「だからいないって言ってんだろ!」
ハッセー「じゃあ、バナナが残る!!」
ワチャ「はぁ?!」
ハッセー「わかったぞ! 罠を作れば良いんだ! バナナをこう左右均等になるように置いて、両側にカゴを置いて……いや、バナナはもっと濃い黄色のにして、カゴはもっと鮮やかな青にして……このヒモを引っ張るアニメーションを作って……俺が横移動して、俺がモノクロになって……」
ワチャ「どんな罠だよ! 捕まえるのにアニメーションとか、お前がモノクロになるとか意味不明!」
ハッセー「いや〜、作るって難しいな〜」
https://note.com/preview/n4258bbb930c3?prev_access_key=11dcf9e04ab3a5791daa2b6be14a74f8
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