低血糖と私⑨ 友人宅で低血糖
前回の低血糖症状の報告は約2週間前のことでした。
今日、また低血糖症状を起こして、救急車で運ばれました。
迷惑をかけてしまったみなさん、本当に申し訳ありませんでした。
午後、仕事の打ち合わせを終え、新宿の友人宅を訪ねた。
3年ぶりくらいだっただろうか。友人のお母さまも交えて、3人で話していた。2人は私の糖尿病のことも知っており、食事を摂る前に血糖測定も行った。数値は70だった。
話がはずんでここ2~3年の近況を話した。1時間くらいはいつもと変わらない会話をしていたと思う。
ところが、ある時点で私は低血糖に陥っていた。
意識が朦朧としていた。
異変に気づいた友人とお母さまは救急車を呼んでくれた。しかし、新宿の救急車は出払っていてすぐには駆けつけられないと言われたという。
友人が「血糖値は?」と私に聞き、測定するようにいうのだが、
私は自己測定がちゃんとできなくなっていた。簡単ないつもの測定が、朦朧としてうまくできないのだ。
救急隊がかけつけ、名前などを聞かれたが、朦朧としている。
友人が飴などを食べさせようとしてもうまくいかず、コーラを飲ませたと言っていた。たぶん、それで少しだけ意識的になれたのかもしれない。
運ばれていくとき、自分が救急隊に運ばれていくことを認識することができていた。それはコーラを飲んだからできたことだった。
病院の救急処置室ではずいぶん意識が戻ってきていた。
自分の名前も電話番号も、かかりつけの病院も答えることができた。
食事の前の血糖値が70だったことも医師に伝えることができた。
「70でもインスリンを打ったんですか?」
「そうです。」
医師に叱られたけど、70という数値でインスリンを打つのはリスクがある。少し食べてからインスリンを投与すべきだった。
「インスリンの打ち方を主治医とよく相談してください」と言われ、
主治医宛ての手紙を持たされた。
病院に着いたときの血糖値は38だったそうだ。
ブドウ糖の点滴ですぐに200まで上がった。
その頃には私の意識ははっきりしていて、点滴がブドウ糖であること、その量がまだたくさん残っていて、これ以上からだに入ると高血糖になることもわかった。
「先生、さっき血糖値は200だと言っていたので、もう点滴を止めてもらえませんか」
そう言って、再度血糖測定をし、209であることがわかると医師も私の要望を聞き入れてくれた。
すっかり元気になった私を見て、安心した友人が、
「食事の前に血糖値70は普通だって言ってたよね」
「うん、普通の人は70~140くらいだってこと」
話に夢中になってしまい、食事もゆっくりだったし、炭水化物も少なかったことを説明した。
「インスリンをあとから打つか、量を減らせばよかったんだよね」
「顔色が違っていて、しゃべり方が変で、おかしいと思った。こっちが何言っても対応が変で。まるで別人だったよ。低血糖のことは知ってたけど、いい勉強になったよ」
と友人は言った。
「低血糖になると別人格になっちゃうんだよね」
言い訳にはならないけれど、よみがえった私はいつものように友人と言葉を交わし、帰宅したのだった。