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絵本と国立競技場

きのう、5年ぶりに友達に会った。
わたしは表参道から246を青山一丁目まで歩いた。
待ち合わせ場所に着いたら、足がつりそうになっていた。
まずい! 腰をおろして友達を待った。
久しぶりの対面はお互いに笑顔で、
無事を喜び合う(年配者のあるある)。

友達は昔から翻訳の仕事をしていた。
『クマのプーさん』や『ピーターラビット』の翻訳をされた
児童文学者の石井桃子さんのファンだった。
その友達はいつもわたしの子どもたちに絵本を贈ってくれた。
友達は、「親が選ばないような本を見つける」といって
いつもきかんぼだったり、いたずらずきだったり、
乱暴したりする主人公の絵本を届けてくれた。
どれもみな、おもしろかった。

きのうはいっしょに外苑の並木道や国立競技場の辺りを歩きながら、
昔と変わらないおしゃべりをした。
1943年、国立競技場の前々身の明治神宮外苑競技場で
「学徒出陣」の出陣学徒壮行会が行われたという。
もちろん、ふたりとも生まれてはいない。
その記念碑「出陣学徒壮行碑」は、今も千駄ヶ谷門の近くにあった。

知らないことがたくさんある。
わたしは20歳の頃に、無知の自分をとても恥ずかしいと感じていた。
いまも、世の中は、世界は、知らないことばかり。
ただ、知っていようが知らないままだろうが、
わたしはここにいる。知らないことばかりの中にわたしは立っている。

別れ際に、友達が絵本をくれた。
「うちの ネコが きらいです」ダヴィデ・カリ文 アンナ・ピロッリ絵
ほらね、やっぱり友達はわたしが選びそうにない絵本を贈ってくれた。
いつもわたしの知らないことを分けてくれて
わたしの世界をひろげてくれて、ありがとう。


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