見出し画像

詩 『古い家 夜明け』

日の出前
の薄暗い台所
の曇り硝子
から橙色の街灯
が反射する雪面
は流し台の脇
にある屑籠の下
の竈馬の沈黙
から吹き込む透間風
が足先に触れ
て床が軋む寒さ
に溜めた桶の中
の熱湯
が立てる湯気
が低い天井
の油まみれ
の換気扇の廻らない羽
の間に作られた雀
の巣の下を鼠
が駆ける音
へ昇っ
て二階の眠り
へ溶け
て仏壇の前
に敷かれた蒲団
から消失するぬくもり
が遺影の前を漂
いストーブの灯油の臭い
と混じ
り煙突へぶつかっ
て赤く燃
え熱をもった白い柵
が温める絨毯
の上の時計
の音とすれ違う玄関
の光へ
――
黎明

いいなと思ったら応援しよう!

かえで
よろしければサポートお願いします!