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理工系に女子が少ないことの何が問題なのか?

昨年度の6月~3月まで、宮崎大学の工学部にて、学生の女子比率を高めるプロジェクトに参加していました。国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)の女子中高生向け理系進路選択支援プログラムに採択されたため始まったもので、私はそのコーディネーターとして参画していました。そこで考えたこと、感じたことをいくつかの切り口でまとめたいと思います。

このテーマに取り組むにあたり、自分でも考え、多く質問を受けたのが「理工系に女子が少ないことの何が問題なのか?」ということです。私なりには以下の2つの観点から、解決すべき課題である、と捉えています。

観点①ジェンダーバイアスの存在

OECD(経済協力開発機構)の調査によると、日本の工学・製造・建築分野の高等教育機関の入学者に占める女子比率は16%。
これは加盟国最下位で、お隣の韓国で21%、平均が26%、最も高いアイスランドで39%です。多くの国が偏りを抱えており、それぞれに取り組んでいますが、中でも突出して低いのが日本というわけです。(ジェンダーギャップの大きさはこの項目に始まったことではありませんが…)

職業選択の自由の下、それぞれの選択によってこの結果になっているとすれば、問題とは言えないかもしれません。しかし、それにしては比率の偏りが大きすぎます。

この原因についていくつか文献も読みましたが、要因のうちの一つとして挙げられるのがやはり「ジェンダーバイアス」の問題です。
PISA等のテストでも理数系の科目についての性差はほとんどない(あっても数%)と出ているにも関わらず、「理数系は男子が得意」、「工学部は男子が行くところ」という偏見は根強く残ります。

実際にイベントを実施した際の保護者さんのアンケートで「女子で理系といえば看護師しかないと思っていた」というコメントもありました。ある文献では、数学が得意であるにも関わらず、中学生になると同調圧力などから「数学は苦手」などと言うようになり、実際に苦手になっていく、という話もありました。
こういった偏見が女性のキャリアを妨げているとすれば、解決しなければなりません。

観点②製品開発におけるリスク

もう一つ、最近少しずつ話題になっていますが、理工系分野に女性が少ないことによる社会的な弊害です。

例えば以下の記事では、車の設計において男性を基準に設計されているために自動車事故で重傷になるリスクが女性の方が高いことが指摘されています。

NHKでも少し前に、医療において性差が見過ごされていた、という特集が放送されていました。

専門的に学んでいる人が男性が多ければ、開発現場も男性が多くなります。もちろん、男性が開発している=女性のことは考えられていない、というわけではありませんが、当事者がいるといないとで全く差がないとは言い難いでしょう。
そもそも性差によってこのような不利益が生まれていることすら、近年まで気付かれていませんでした。これらを解消にしていくためにも女性の担い手が必要です。

理工系におけるジェンダーギャップの課題はまだまだ知られていない

「理工系に女子が少ないことの何が問題なのか?」はこのテーマに関わる中で何度となく投げかけられた質問です。裏を返せば、それだけ課題として共有されていない、ということになります。
例えば、管理職や政治家に女性が少ないことについて「それの何が問題なの?」と(思考を促す意図を除いて)投げかけられることはほとんどないでしょう。

特に学校においては、女子だけを対象にイベントや情報提供を行うのは、「公平性の観点からちょっと…」と言われることもありました。
しかし、現状としてこれだけの偏りがあるからには、男子だけが得られている機会・情報・促進する何かがある、もしくは女子だけが阻害されている何かがあるとしか思えません。

バイアスを解消するには、まずそのバイアスの存在を知ることから、と言われますが、まさにその「知る」がまだまだ足りないのがこのテーマです。

そして次の記事では、具体的な取り組み事例や私が感じた課題についてまとめたいと思います。


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